100年時代の学び方「リカレント教育」とは?理念と日本の可能性 - cocoiro(ココイロ) - Page 2

リカレント教育で学び直しをするにはどんな方法がある?

産業構造の変化やグローバル化、国際競争の激化などを背景に、高度な職業スキル習得の場として、制度整備が進められている日本のリカレント教育。私たちが学び直しを考える場合、どんな方法が取れるのでしょうか。現行制度をまとめます。

大学に入る:「社会人入学」

大学や大学院に学生として入学する「社会人入学」が、代表的な方法です。通常の大学・大学院のほか、以下で触れる専門職大学院、職業実践力育成プログラム、専門職大学・短大などで学ぶことができます。大学や大学院では社会人受け入れのために、次のような制度が整えられています。

  • 社会人特別入学者選抜:社会人の入学者を小論文や面接などによって別途選抜する
  • 科目等履修生制度:授業科目を選んで履修し、単位を修得する
  • 長期履修学生制度:決められた年限を越えて計画的に履修し、学位を取得する
  • 通信制:放送大学など通信教育課程に在籍し、通信教育で学位等を習得する
  • 大学院の短期・長期在学コース:大学院の年限を短期または長期に弾力化したコース
  • サテライト教室:大都市のオフィス街など通学の便のよい場所に教育施設を設置する

より高度な専門スキルを身につける:「専門職大学院」

専門職大学院は2003年に制度化された修士課程の大学院で、専門大学院の主旨を引き継ぎ、産業界で活躍する専門人材を育成するために設けられました。専攻分野としては、法務・教職・ビジネス・技術経営・会計・公共政策・臨床心理など社会科学系を中心に、多岐に渡ります。

当初の主旨から専門職大学は、学士課程からの直接の進学とともに、社会人の進学が想定されていました。しかし導入から数年で、社会人入学よりも直接の進学が増加。入学定員の不足や教育内容の質など、課題も指摘されています。

ニーズに合わせて学ぶ:「職業実践力育成プログラム」

職業実践力育成プログラムは、職業に必要な能力や知識を高めるために、社会人や企業のニーズに応じた実践的・専門的なプログラムとして、大学などに認定されたものです。文部科学省は次の4分野について、特に設置を奨励しました。

  • 女性活躍:育児などで離職していた女性の再就職支援、女性起業家育成など
  • 非正規労働者のキャリアアップ:業界団体やNPOなどと連携したキャリアアップ支援
  • 中小企業活性化:中小企業の中核人材育成、製品の開発支援など
  • 地方創生:地域産業活性化、地域リーダーの育成、地方公共団体職員の能力向上など

プログラムの例として、先進的な農業経営体の育成を目指す「いわてアグリフロンティアスクール」(岩手大学)、情報セキュリティの高度な技術者を養成する「国際化サイバーセキュリティ学特別コース」(東京電機大学)などがあります。

職業に直結した新しい高等教育機関:「専門職大学・短大」

専門職大学・専門職短期大学は、2019年度にスタートした新しい制度です。学術研究を教育の基礎とする従来的な大学・短大に対し、実践的な職業教育を行う新しいタイプの大学・短大として作られました。

リカレント教育の課題として、大学等のカリキュラムが必ずしも社会人の求める職業教育に直結しないという点が挙げられますが、専門職大学・短大はその要請に応える教育機関であると言えます。実務経験を持つ社会人が入学する場合、その能力を勘案した単位認定や実務経験の修業年限への通算など、社会人が学びやすい仕組みも設けています。

その他の学習方法

教育機関に入学して学生となる以外に、地域住民などに対して大学が提供する公開講座で学ぶこともできます。

また社会人の学びの費用補助として、教育訓練給付金の制度もあります。厚生労働大臣指定の職業に関する教育訓練講座を受講して修了すると、その費用の一部を教育訓練給付金として支給するものです。指定講座には次のようなものがあります。

  • 業務独占・名称独占資格(看護師など)の養成講座
  • 専門学校の職業実践専門課程
  • 専門職大学院
  • 職業実践力育成プログラム

など

参考
戸澤幾子(2008年)『社会人の学び直しの動向-社会人大学院を中心にして-』国立国会図書館レファレンス 平成20年12月号
塚原修一ら(2017年)『社会人の学び直しからみた大学教育』日本労働研究雑誌No.687
専門職大学院|文部科学省
職業実践力育成プログラム(BP)認定制度について|文部科学省
専門職大学・専門職短期大学|文部科学省
教育訓練給付制度|厚生労働省