不登校中学生の進路
内申点が低かったり、欠席日数が出願資格に足りない場合は、公立高校や私立高校の推薦枠の受験は難しくなります。しかし、ほかにも受験する高校はあります。ここでいう「高校」とは卒業時に高卒資格を取得できる学校をいい、サポート校や高卒認定予備校とは異なります。
不登校生徒でも受験できる高校には、通信制高校・定時制高校・全日制高校があります。これらの学校に通うことを選択しているのは不登校生徒だけではなく
- 社会人として働いている人
- 高校を中退した人
- 学業不振で現在の高校では卒業が困難な人
- 発達障害などにより通常の学習が難しい人
- 芸能活動やアスリート活動をしている人
など、さまざまな事情のある人が高校卒業認定資格の取得を目標として通っています。
では、一般的な通信制高校・定時制高校・全日制高校の学校の仕組みをご紹介します。詳細は学校ごとに異なります。タイプ別に高校を検索できるよう参考を記してありますので、ご覧になって希望する学校があるか調べてみましょう。
通信制高校
主に自宅や学校が設置する学習センターなどで勉強し、毎日決められた時間に通学する必要はありません。単位制を採用し、試験に合格すれば単位を取得でき、卒業要件を満たせば高校卒業資格を得られます。
全て自宅学習で完結するわけではなく、定期的に学校へ行き、先生から直接指導を受けます。登校の頻度はコースによって異なり、毎日通学、週に2~3回通学、月に1~2回通学などから選択できます。
通学日以外は自分の好きな時間に学習すればよいので、通学への心配がある子供でも始めやすいのが特徴です。その一方で、卒業できるかどうかは自らの意思と学習計画によるので、全日制高校・定時制高校に比べ卒業率が低いのも事実です。
【一般的な通信制高校の概要】
入学時期 | (新入)3・4月/8・9月
(転入・編入)新入学時期もしくは随時募集 |
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入学試験 | 書類選考・作文・面接 |
授業・単位取得 | 単位制
面接指導(スクーリング)という登校日に授業をうける。 課題の添削(レポート)の提出。(1授業50分) 試験(テスト)を受ける。 |
在籍期間 | 3年以上 |
登校頻度 | 年間20~25日程度。
月2回程度が主流。 週何回通うかを自分で選択できる、年1回5日程度の合宿に参加するなど、学校によって異なる。 |
卒業条件 |
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(通信制高校とは?|通信制高校ナビ、通信制高校・全日制高校・定時制高校のしくみ比較表|通信制高校ナビ、第1章 総則 第8款 通信制の課程における教育課程の特例:文部科学省より筆者作成)
通信制高校の魅力は、登校や学習スタイルを自由に選べることです。しかし校則や時間の縛りがないため、卒業までは自己管理が必要となります。友達を作る機会が少ないのも通信制高校の特徴です。
通信制高校についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
定時制高校
昼・夜の2部制、または朝・昼・夜の3部制で授業を行っています。1日4時間の授業で卒業に4年間かかるコースや、1日6時間の授業で3年間で卒業できるコースなどがあります。全日制高校に比べ時間の融通が利くのが特徴ですが、毎日学校へ通わなくてはならない点は、全日制高校と同じです。
【一般的な定時制高校の概要】
入学時期 | (新入)4月
(転入・編入)学期末、年度末など決まった時期 |
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入学試験 | 試験・面接 |
授業・単位取得 |
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在籍期間 | 基本的に4年以上。3年の場合もある。 |
登校頻度 |
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卒業条件 |
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(通信制高校とは?|通信制高校ナビ、定時制高校とは|おおぞら高等学院、通信制高校・全日制高校・定時制高校のしくみ比較表|通信制高校ナビより筆者作成)
授業内容が易しく勉強が苦手でもついていけるのが魅力である反面、大学に進学するには学習内容が不足しています。しかし、仕事と両立できて高校卒業認定資格も得られます。
全日制高校
数は限られますが、中学での内申点や出席日数を選考基準とせず、試験の結果や面接だけで入学できる高校があります。ただし、全日制高校では学年ごとに決まったカリキュラムに沿って授業が進められるため、集団行動についていけずに不登校になった子供の場合、負担に感じる可能性があります。
【一般的な全日制高校の概要】
入学時期 | (新入)4月
(転入・編入)学期末、年度末など決まった時期 |
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入学試験 | 試験 |
授業・単位取得 |
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在籍期間 | 3年 |
登校頻度 |
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卒業条件 |
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(通信制高校とは?|通信制高校ナビ、通信制高校・全日制高校・定時制高校のしくみ比較表|通信制高校ナビ、高等学校の教育課程について|文部科学省より筆者作成)
学校の数が多く選択肢は豊富です。学校行事や部活動も盛んで、友達を作りやすい環境にあります。しかし、その学校に見合う学力がなければ入学できず、成績低迷や出席日数不足で留年する可能性もあります。
全日制高校には国立・公立・私立があります。公立高校は内申点を合否判定の資料として使う学校が多く、国私立高校は難関校と呼ばれる学校ほど、原則として入学試験の得点のみで選抜する傾向が強いといえます。
国私立高校
学習塾の市進受験情報ナビに、2014年高校入試において、長期欠席者を受け入れる国私立高校の一覧が記されています。受験情報が更新されている可能性もあるので、志望してみたい高校があれば最新の出願資格条件を確認してください。
参考
2014年春入試用 長期欠席者を受け入れる国私立高校|市進受験情報ナビ
積極的に受け入れをしている公立高校も
中学生の不登校が増え続ける現代において、文部科学省も不登校生徒の現状や不登校になった原因を探り、さまざまな対策を講じています。
参考
不登校|文部科学省
各都道府県においても不登校生徒への対応として、公立高校も積極的に不登校の中学生を受け入れるようになってきています。
不登校生徒のサポート体制の整った公立高校の呼び名は、都道府県によって次のように異なります。具体例として関東の4県に注目してみましょう。
- 東京都:チャレンジスクール、エンカレッジスクール
- 神奈川県:クリエイティブスクール
- 千葉県:地域連携アクティブスクール
- 埼玉県:パレットスクール
お住まいの都道府県にある不登校生徒支援のための公立高校を確認されることをおすすめします。
高専(高等専門学校)
主に工学・技術系の実践的な教育を行っている5年制の学校です。卒業生は非常に高い技術力を身につけていると定評があり、就職率ほぼ100%とも言われます。高専卒業後、大学3年生として他大学に編入することもできます。
高専についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
フリースクール
フリースクールは主に不登校の子供を受け入れている団体・施設です。勉強主体のところ、野外活動主体のところ、自分のしたいことをするところ、または何もしなくてもいいところなど、フリースクールの在り方はさまざまです。
正式な教育機関ではないため、フリースクールに通うだけでは高校の卒業資格は得られません。ただし、高卒認定試験合格を目指すスクールや、通信教育で高卒資格取得のサポートをするスクールなどもあります。
フリースクールについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
海外留学
「日本の学校にはなじめない」と思い切って海外の高校へ進学する子供もいます。日本の常識が通用しない海外へ出て初めて、今まで自分を縛っていた思い込みが取り払われ、物事をポジティブに考えられるようになる人もいます。外国語を習得でき、帰国後の進学や就職に活かすこともできます。
就職
やりたい仕事がはっきりしている場合、高校へ行かずに就職するという道もあります。2014年の文部科学省の調査でも、中学3年次に不登校だった子供1,604人のうち6%が、高校へ進学せず就職しています。
しかし、高校進学率が98%の現在、高校卒業資格がないと転職等に不利になりがちです。中学卒業後すぐでなくても、通信教育や定時制高校、または高卒認定試験などで高校卒業資格を取得する機会があることを覚えておいてください。