エリクソンの発達段階・発達課題について
発達段階 | 発達課題 (危機) |
活力 (特) |
---|---|---|
乳児期 (0歳〜1歳6ヶ月) |
「基本的信頼」 対 「不信」 |
希望 |
幼児前期 (1歳6ヶ月頃〜3・4歳) |
「自律性」 対 「恥・疑惑」 |
意志 |
幼児後期 (3・4歳〜6歳) |
「自発性」 対 「罪悪感」 |
決意 |
学童期 (6~12歳) |
「勤勉性」 対 「劣等感」 |
有能感 |
青年期 (12歳~) |
「同一性」 対 「同一性の拡散」 |
忠誠 |
成人期 (就職して結婚するまで) |
「親密性」 対 「孤独」 |
愛 |
壮年期 (子供を産み育てる時期) |
「世代性」 対 「停滞」 |
世話 |
老年期 (子育て終了後) |
「自己統合」 対 「絶望」 |
叡智 |
エリクソンはライフサイクル理論に基づき、自我が常に発達していることを説いています。自我は人間が成長する上で大切なもので、家族や学校、会社などの現実生活に適応していく上で大きな意味を持っています。自我(アイデンティティ)は、あらかじめ年齢などの発達段階に対応し、課題が浮かび上がってくると考えたエリクソンは、その段階をそれぞれ区別し、理論づけています。そして、エリクソンによると、人間の発達段階は8つに区切られると言います。
さらに、エリクソンが唱えた発達段階では、成長や発展などの発達課題と衰退などの危機が「対」となって存在している特徴があります。その両方の関係性こそが人の発達に大きく影響すると仮定され、プラスの力がマイナスの力より強くなるような経験を積み重ねていくことが大切だと、エリクソンは唱えています。
乳児期(0歳〜1歳6ヶ月)の発達課題
まず最初の発達段階が、生後1歳6ヶ月ごろまでの乳児期です。エリクソンの発達理論において、この時期には以下のテーマがあると言われています。
この乳児期は「基本的信頼感」と「基本的不信感」というポジティブな力とネガティブな力の拮抗がテーマとなります。 具体的には、赤ちゃんがいつも自分の欲求がすぐに満たされない状態において「不信感」を持ちつつも、そこに関与し、世話をする母親の存在によって「他人や社会を信じても大丈夫」といった「信頼感」も持つことがテーマです。
(引用元:ライフサイクル|武蔵浦和メンタルクリニック )
乳児期は子供がミルクをもらったりおむつを交換してもらったりするなど、たくさん世話をしてもらうことにより、基本的信頼感を育むことができます。人が成長する過程において、他人と深い人間関係を築くための基礎になります。一方でなかなか世話をしてもらえないと不信感が生まれますが、その反面、誰かに世話をしてもらったときの安堵感は大きくなります。
幼児前期(1歳6ヶ月頃〜3・4歳)の発達課題
幼児前期は全身の筋肉や運動機能が発達するため、子供が自分の意思で行動できるようになる時期です。遊ぶことに熱中したり、言葉を喋ったりなど、両親からしつけを受けることもあるかもしれません。
保育園や幼稚園に通うようになると子供は不安を感じることが多くなり、「知りたい」「やってみたい」という欲求と「怒られるかも」といった感情が交錯する多感な時期となります。
そのため、この時期におけるテーマは「自律性」「恥・疑惑」です。子供本人は「やりたい」と思ってもなかなか上手にできず、失敗したり周りから怒られることもあるでしょう。恥や疑惑を持ちながらも自律性を持てるようになることがこの時期の1つの課題と言えます。
幼児後期(3・4歳〜6歳)の発達課題
幼児前期に自律性が育まれることで、自分で考えて行動する「積極性」が生まれます。言葉も体の動きも発達してくるため、大人と会話をしたり、大人の真似をしながら自分で考えた遊びをするようになるかもしれません。しかし、自らの意思で行動するには善悪の判断や社会ルールなどができる状態でないと難しいのが現状です。
同年代の子供とケンカをしたり、親から怒られることで不安や「罪悪感」が芽生えます。そのため、この時期のテーマは「積極性」と「罪悪感」となり、積極性が罪悪感に勝る経験をどれだけ積むかや、積極的な行動によって思いどおりになる体験をいかにして積むかがポイントとなります。
学童期(6~12歳)の発達課題
6歳を過ぎると子供は小学校に入るため、さまざまな知識や技術を学んだり、集団生活に適応していく時期となります。そのため、児童期・学齢期における発達課題は「勤勉性」と「劣等感」です。周りの環境に自発的に加わろうとしたり、宿題やテストなどで周囲から評価を受けることが勤勉性へとつながり、一方で何をやってもうまくいかない経験が積み重なると、自信をなくして劣等感を募らせることにつながります。
劣等感が強くなってしまうと、友人関係や学力などに影響を及ぼし、自分に対する自信を失うことにつながってしまいます。そのため、周りが褒めてあげるなど、いかにして自己効力感を養うかがポイントとなります。