発達段階から見えてくる子供の発達課題と対策
これまで8つの発達段階についてみてきましたが、乳児期から青年期においてはエリクソンの発達段階を踏まえた教育アプローチをすることができます。それぞれ具体的に見ていきましょう。
乳児期:嫌な経験をさせると信頼が増す?
「基本的信頼感」と「基本的不信感」という発達課題がある乳児期では、あえて赤ちゃんが自分の欲求がすぐに満たされない状態を作ることも1つの方法です。不信感や嫌なことと、それを補ってくれる母親の双方を認識することによって「他者を信じる心」が芽生え、信頼感の獲得につながります。
子育てにおいては完璧さを求めず、多少の不信感を経験させることもこの時期においては必要と言えます。悪い人まで善人だと信じてしまわないよう、信頼感と不信感の両方のバランスについて意識してみましょう。
幼児期:自分をコントロールすることを学ぶ
幼児期では幼児前期の発達課題「自律性」と「恥・疑惑」の基盤に、幼児後期のテーマである「積極性」と「罪悪感」に取り組む教育アプローチをすることが良いでしょう。例えば、トイレトレーニングは、最初は上手くいかないこともあるかもしれません。しかし、恥ずかしさを経験しながらも自分でコントロールできるようになることで自律性が養われます。
子供が失敗した時には注意も必要ですが、逆に注意ばかりされてしまうと「自分でやってみたい」という思いが萎縮してしまいます。一方で、何をしてもうまくいくばかりでは失敗に気づきにくくなってしまったり、わがままになる可能性もあります。失敗する体験を経て、徐々に自分自信をコントロールする経験をたくさんさせてみましょう。
学童期:社会の中の自分と向き合う
学童期では小学校に入学するなど、子供の生活環境が大きく変化します。発達課題である「勤勉性」と「劣等感」はこの時期に苦労をしながらも乗り越える体験をすることで人格形成へとつながっていきます。
小学校といえば、子供は家で宿題をするようになります。勉強に取り組むことで頑張っている自分を肯定し、同時に「なかなか努力が認められない」と周囲と自分との関係を意識するようになります。小学校という環境の中で、周囲の子供や先生とふれあうことで、子供は「社会の中での自分の立場」について考えるようになります。
青年期:自我に目覚める
青年期では「同一性(アイデンティティ)」と「同一性の拡散」という発達課題があり、この2つは大変な労力を要すると言われています。まずは自分自身の存在や価値を認め、属している社会で自分の居場所を確保しながら、「周りは自分のことをどう思っているのだろう」といった孤独感や葛藤と向き合うことになります。
非行、うつ病、引きこもり、性同一性障害といった病気も、この時期に出やすい症状と言われています。子供が青年期を過ごすにあたり、ありのままの自分を受け入れることを家族や周囲の人たちがサポートすることで自己の確立へとつながっていきます。
エリクソンの発達段階においては、プラスとマイナスのバランスがポイント
エリクソンの心理社会的発達理論では、それぞれの年齢に2つの異なる発達課題があることが分かります。子供が成長していく上では、良い面と悪い面の両方が必要であり、そのバランスが生涯における自己の発達につながると言えます。子供の教育法として、発達課題のテーマを取り入れることで、子供の自我確立の助けとなるかもしれません。
参考
ライフサイクル|武蔵浦和メンタルクリニック
エリクソンの発達段階・発達課題、発達理論(ライフサイクル)の特徴は?|知育ノート
エリク・h・エリクソン|心理学,精神分析学,アイデンティティ|Hitopedia