ライフサイクルとは、発達心理学者のエリクソンが発表した概念です。言葉は聞いたことがあるけれど、実際にどのような内容が唱えられているのかはよく知らないという人も多いでしょう。エリクソンの発達段階の乳児期とは、いったいどのような時期なのでしょうか? 当記事では、乳児期の子供の特徴とクリアすべき課題についてご紹介します。
もくじ
発達段階の「乳児期」はどんな時期?
ドイツ生まれの発達心理学者であるエリクソンは、人間の発達は8つの段階に区切られ生涯に渡って続いていくということを「心理社会的発達理論」で唱えました。乳児期は、その中でも最初の時期であり、0歳から1歳6ヶ月の時期を指します。
この乳児期の子供には、どのような特徴があるのでしょうか? 今回は、押さえておくべき2つの特徴をご紹介します。なお、エリクソンの発達段階についてはこちらの記事でもご紹介しておりますのでご覧ください。
喃語・歩行を開始する時期
乳児期の子供は、まだ生まれたばかりです。正確に言葉を発したり、自分で何かをしたりすることはほとんどできません。しかし、この時期にも乳児は大きな成長を遂げます。喃語を発するようになり、歩くことができるようになっていきます。
喃語とは、「あー」や「うー」などのまだ言葉にならないような声のことです。言葉にこそならないものの、喃語を使うということは、子供が何かを表現しようとしていることを表します。また、歩行を開始することで行動範囲を広げていくのがこの乳児期の特徴です。
「希望」を獲得する時期
エリクソンの発達段階では、それぞれの時期に獲得できる活力が決められています。乳児期は、「希望」という力を得る時期とされています。
喃語を使ったり、少しずつ歩行ができるようになったりと成長していく乳児期。とはいえ、まだまだ1人では何もできません。だからこそ親や周りの人々がたっぷりと愛情を注ぎ、懸命にお世話をします。すると、子供の中に「周りの人たちが自分のことを助けてくれる」という感覚が芽生えてくるようになります。周囲の愛情をたっぷりと感じた結果、乳児は「希望」を獲得することができるのです。
エリクソンの考える乳児期段階の「発達課題」
エリクソンの発達段階では、それぞれの時期に応じて対応すべき発達課題があると唱えられています。各段階には、対となる肯定的な発達課題と否定的な発達課題が1つずつあります。どちらも成長していくためには必要な課題であるとされ、両方得てこそ希望などの活力を手に入れることができるとされています。
それでは、乳児期に希望を獲得するためにはどのような発達課題をクリアしなければいけないのでしょうか? 肯定的、否定的の順に2つの課題をご紹介します。
【肯定的】基本的信頼感
乳児期の肯定的な発達課題は「基本的信頼感」です。1人では無力な状態の赤ちゃんのお世話をし、欲求を満たしていってあげることで信頼感を育むことができます。
お腹が空いたりオムツが蒸れて不快だったりしても、乳児はそのことをうまく伝えることができません。そんなときに自分の不快感を取り除いてくれる保護者の存在を感じることで、基本的信頼感は大きくなっていくのです。
【否定的】基本的不信感
信頼感を感じるようになる一方で、乳児期の否定的な発達課題には「基本的不信感」があります。欲求が満たされていないときは、乳児は世界に対して不信を抱いています。その状況を伝えるために、泣いたり喃語を発したりして自己表現をするのです。
一見するとこの否定的な課題は経験しなくてもいいのでは? と思われるかもしれません。しかし不信感を感じることがなければ、すべての人に対して信頼を寄せてしまう可能性があるのです。それはつまり、悪いことをする人まで疑いなく信頼してしまう可能性があるということです。そのため、多少の不信感を感じることも、立派に成長していくために大切であるとされています。