公募新人賞
純文学を対象とした新人賞
純文学は、芸術性を目的に作られる作品です。その反対は大衆文学(エンターテインメント)。娯楽性があり、ミステリー、ファンタジー、SFなど分野にとらわれず読者を楽しませるための作品です。ここでは、純文学を対象としたいくつかの新人賞について紹介していきます。
すばる文学賞
すばる文学賞は、集英社が主催の純文学の新人文学賞です。受賞作は集英社発行の文芸誌『すばる』に掲載されます。応募枚数は、400字×100〜300枚まで。正賞は記念品で、副賞は100万円です。
集英社主催の新人文学賞では、大衆文学を対象とした小説すばる文学賞もあります。2016年には、当時高校2年生の青羽悠が受賞して話題になりました。
文學界新人賞
文藝春秋が主催する新人文学賞です。伝統のある文学賞で、2018年で124回目の開催となりました。受賞作は、文芸雑誌『文學界』に掲載されます。応募枚数は、400字×70~150枚以下。賞金は50万円および記念品(万年筆)。
新潮新人賞
新潮社が主催の新人文学賞。受賞作品と各選考委員の選評を新潮社刊行の文芸誌『新潮』に掲載しています。応募枚数は、400字×250枚以内。賞金は50万円と特製記念ブロンズ楯です。
『新潮』は100年以上の歴史がある文芸誌で、新潮新人賞は2018年がちょうど50回目の開催でした。2017年に新潮新人賞を受賞した石井遊佳の『百年泥』(新潮社)は、芥川賞も受賞しています。
大衆文学・推理小説の新人賞
前述の純文学に対して、大衆文学の分野には、どのような賞があるのでしょうか。また、大衆文学の中でもジャンルを絞った賞もあります。
小説現代長編新人賞
講談社が主催する公募の新人文学賞です。講談社発行の小説誌『小説現代』において募集、発表されます。応募枚数は、400字×250~500枚以内。受賞作には賞金300万円と賞状が贈られます。
本誌主催の新人賞は直木賞作家等を多数輩出した伝統あるコンテストで、近年においても朝井まかて氏、塩田武士氏などのベストセラー作家が出ています。
(引用元:小説現代とは|小説現代)
このように、小説現代長編新人賞は多くの著名な作家を輩出している、登竜門とも呼べる賞です。
松本清張賞
幅広いジャンルの小説で活躍した松本清張の業績を記念して制定された公募の長編小説賞です。対象は、ジャンルを問わない良質の長編エンターテインメント小説です。受賞作は文藝春秋から単行本として刊行されます。応募枚数は、400字詰め原稿用紙300~600枚。賞金は500万円と時計です。
江戸川乱歩賞
一般社団法人日本推理作家協会が主催する推理小説を対象とした新人文学賞です。1954年に江戸川乱歩の寄付を基金として設立されました。受賞作は講談社より刊行され、フジテレビによって映像化されることが約束されています。推理作家への登竜門として有名な賞です。
新人文学賞としては非常にレベルが高いと言われており、東野圭吾や高野和明など多くの人気作家を輩出しています。応募枚数は、400字×350~550枚。正賞は江戸川乱歩像、副賞は1,000万円。
「このミステリーがすごい!」大賞
2002年に宝島社、NEC、メモリーテックの3社が創設した文学賞です。応募対象は、エンターテインメントを第一義の目的とした広義のミステリーであり、例えば時代小説でも、ミステリーや冒険的な要素を多く含んだ作品であれば、その設定は問わないとされています。受賞作品は書籍として刊行されます。賞金額は文学賞の中で最高額です。
応募枚数は、40字×40行で100~163枚。賞金は、大賞作品が1,200万円、優秀賞作品は200万円。
本大賞創設の意図は、面白い作品・新しい才能を発掘・育成する新しいシステムを構築することにあります。ミステリー&エンターテインメントの分野で渾身の一作を世に問いたいという人や、自分の作品に関して書評家からアドバイスを受けてみたいという人を、インターネットを通して読者・書評家・編集者と結びつけるのが、この賞です。
(引用元:『このミス』大賞とは|「このミステリーがすごい!」大賞)
太宰治賞
太宰治賞は、出版社の筑摩書房と三鷹市が主催する公募型の新人文学賞です。作品は未発表である必要がありますが商業出版でない形で発表されたものは未発表と見なされます。また、1人2作品まで応募できるのも大きな特徴です。正賞は記念品、副賞として現金100万円を受け取ることができます。
すでに発表された小説を対象とした文学賞
芥川龍之介賞
芥川龍之介賞(通称、芥川賞)は、純文学の新人に与えられる文学賞です。文藝春秋社内の公益財団法人日本文学振興会によって選考されます。受賞は年2回で、受賞作は『文藝春秋』に掲載されます。
文藝春秋の創業者である菊池寛が、友人の芥川龍之介の業績を記念して制定されました。正賞は懐中時計、副賞は100万円です。
直木三十五賞
直木三十五賞(通称、直木賞)は、新進・中堅作家を対象に、大衆文学作品の単行本(長編小説もしくは短編集)の中から、最も優秀な作品に贈られる賞です。
文藝春秋創業者の菊池寛が友人の直木三十五の業績を記念して、芥川賞と同時に昭和10年に制定しました。年2回発表され、受賞作は『オール讀物』に一部掲載されます。受賞者には、正賞として懐中時計、副賞として100万円が贈られます。
吉川英治文学賞
公益財団法人吉川英治国民文化振興会が主催する文学賞です。大衆文学で人気作家となり、「国民文学作家」とも言われた吉川英治の名にちなんで制定されました。講談社が後援し、年1回発表されています。対象は大衆文学。
受賞者には正賞として賞牌、副賞として300万円が贈られます。
読売文学賞
読売文学賞は読売新聞が主催する文学賞です。戦後の文芸復興の一助として、1949年度に創設されました。年1回の発表で、過去1年間に発表された作品が対象です。正賞は硯、副賞は200万円。
「小説」、「戯曲・シナリオ」、「評論・伝記」、「詩歌俳句」、「研究・翻訳」、「随筆・紀行」の全6部門で前年の最も優れた作品を選んでおり、国内唯一の総合文学賞として定着しています。
(引用元:読売文学賞|読売新聞)
大藪春彦賞
大藪春彦賞は1997年に創設された文学賞です。毎年10月1日から翌年9月末日までに発表された小説作品が選考対象です。受賞者には賞状と、顕彰碑、そして副賞として300万円が授与されます。
山本周五郎賞
山本周五郎賞は、1988年に設立された文学賞です。「山周賞」「山本賞」と略されることもあり、新潮文芸振興会が主催し、新潮社が後援しています。選考は年1回で5月に行われ、毎年4月1日から翌年3月1日に刊行された小説の中から4~6の候補作を選びます。