「子どもの権利条約」とは?基本概念や主な取り組みについて紹介 - cocoiro(ココイロ)

子供の権利条約とは?基本概念や主な取り組みについて紹介

「子どもの権利条約」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。世界には厳しい状況で暮らす子供たちがたくさんいますが、日本でも子どもの権利条約に関するさまざまな取り組みが行われています。当記事では、そんな子どもの権利条約の基本理念や課題、実際の取り組み例などについて紹介します。

子どもの権利条約とは

子どもの権利条約とは、世界中のすべての子供たちが持つ権利について定めた条約で、子供の権利を守るために、国連が1990年に制定し、日本でも1994年に同意されました。外務省が発表している「児童の権利に関する条約」の序文には、以下のような記述があります。

児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認め、児童が、社会において個人として生活するため十分な準備が整えられるべきであり、かつ、国際連合憲章において宣明された理想の精神並びに特に平和、尊厳、寛容、自由、平等及び連帯の精神に従って育てられるべきであることを考慮し、児童に対して特別な保護を与えることの必要性が、1924年の児童の権利に関するジュネーヴ宣言及び1959年11月20日に国際連合総会で採択された児童の権利に関する宣言において述べられている(省略)

(引用元:「児童の権利に関する条約」全文|外務省

世界には紛争地域で生活に苦しむ子供がいるほか、先進国においても家庭の事情によって十分な教育を与えられずに育った子供がいるなど、子供の持つ権利については、世界中でたびたび議論の的となっています。

子どもの権利条約ができるまでの歴史

子どもの権利条約ができるまでの歴史は、主に次のような流れとなっています。

1948年 「世界人権宣言」 すべての人は平等であり、それぞれが同じ権利をもつとした宣言
1959年 「児童の権利宣言」  子どもは子どもとしての権利をそれぞれもつとした宣言
このときから、宣言だけでなく実際に効力のあるものができないかと考えられはじめた
1978年 「子どもの権利条約」の草案(はじめの具体的な案)がポーランド政府から提出される
1979年 「国際児童年」「児童の権利宣言」20周年。世界中の人が子どもの権利について考える機会になった。
国連人権委員会の中に「子どもの権利条約」の作業部会が設置された
1989年 「子どもの権利条約」国連で採択 ユニセフや多くの国の10年にわたる努力がみのる
1990年 「子どもの権利条約」が国際条約として発効

(引用元:子どもと先生の広場|日本ユニセフ協会

1948年の世界人権宣言から42年後の1990年に、子どもの権利条約が第三回国連総会にて、国際条約として制定されました。第二次世界大戦において人権問題が問われたことなども、条約制定の背景の理由としてあったと言います。

子どもの権利条約で定められている4つの大切な権利

子どもの権利条約では、主に以下の4つの権利が定められています。それぞれ詳しく解説します。

生きる権利

第6条
1 締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。
2 締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。

(引用元:「児童の権利に関する条約」全文|外務省

条約の第6条では、子供の「生きる権利」についての記述があります。予防接種をしたり、栄養のある食事を摂るなどして、防ぐことができる病気で子供が命を奪われないようにすることや、病気やけがをしたときはすぐに医療機関で治療を受けるなど、子供が生きるために必要な措置が取られることを保証する内容となっています。

紛争地域などではワクチンを接種できずに死亡する子供がいることから、子供の生きる権利を主張する動きが広がり、子供が生きるために必要なことが配慮されるよう、条約として定められるようになりました。

育つ権利

子供が学校で学力の基礎を学び、必要な教育を受けながら、健やかに成長していく「育つ権利」も条約で定められています。生きる権利と同様に、子供には育つ権利があり、結果として大人になったときに社会で認められる人間へと育つことにつながります。

第5条には以下のような記述があり、子供が育つためには、親や国が協力していくことの大切さを提唱しています。

第5条
締約国は、児童がこの条約において認められる権利を行使するに当たり、父母若しくは場合により地方の慣習により定められている大家族若しくは共同体の構成員、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者がその児童の発達しつつある能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任、権利及び義務を尊重する。

(引用元:「児童の権利に関する条約」全文|外務省

守られる権利

子供に対する虐待のニュースなどが、たびたびテレビなどで報じられていますが、そういったあらゆる種類の虐待や搾取から子供を守ることも、子供の権利条約では定められています。障害のある子供でも、少数民族の子供でも、平等に保護され、守られる権利を子供たちは持っています。

第2条
1 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。

2 締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

(引用元:「児童の権利に関する条約」全文|外務省

子供が脅威から保護され、安心した環境で成長していくことは、子供の豊かな人格形成につながると言えます。なかなかなくならない虐待や差別の問題は、子どもの権利条約が抱える課題の1つとも言えるでしょう。

参加する権利

子供の「参加する権利」とは、例えば子供が自由に意見を表明したり、自由な活動を行えることなどを言います。第13条では、以下のような記述があります。

第13条
児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。

1の権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。

(a)他の者の権利又は信用の尊重
(b)国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

(引用元:「児童の権利に関する条約」全文|外務省

子供の自己肯定のためにも、「参加する権利」は大切な権利と言えるでしょう。表現の自由を保証することで、子供が自ら積極的に発言し、子供の自立や自発性を養うことにもつながります。