児童虐待はなぜ減らない?虐待が起きる原因と理由の実態とは? ( 4 )

虐待を受けた子供に残る心の傷…トラウマの影響とは

身体的な児童虐待は、子供の体を傷つけてしまいます。しかし、傷が残るのは体だけではありません。虐待が子供に与えてしまう心の傷はどのような影響をもたらしてしまうのでしょうか。今回は児童虐待によるトラウマが子供に与える影響を3つご紹介します。

感情が上手にコントロールできない

虐待によりトラウマを抱くようになってしまった子供の中には、自分の感情のコントロールが上手にできなくなってしまう子供がいます。

国立生育医療研究センターによる「子どものトラウマ診療ガイドライン」には、以下のような記述があります。

子どもの安全感を著しく損ない、想像以上に子どもに強い恐怖の感情や不安を引き起こします。トラウマ体験は、不当で理不尽なできごとでもあります。このため子どもは、周囲の人たちや世の中全体に対する信頼感を失い、怒りや抑うつなどの感情をもつようになります。

(引用元:子どものトラウマ診療ガイドライン|国立生育医療研究センター

虐待によって植えつけられたトラウマは、子供に強い恐怖心や不安を与えてしまいます。そのため精神状態が不安定になってしまったり、周りの人々のことも信用できなくなったりしてしまう恐れがあるのです。

感情面の変化は、周りの人からは見えづらい変化でもあります。また子供がどのような不安を感じているのかは、本人にしか理解することができないでしょう。そのため周囲の人々も子供の不安な気持ちに気がつきづらかったり、理解を示してあげることが難しくなってしまったりする可能性があるでしょう。

子供の成長過程においても感情のコントロールにおいて重要な役割を果たしている扁桃体(へんとうたい)という部位があります。扁桃体についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

扁桃体って何?子供への影響と、過活動を抑制する子供への関わり方

「悪いのは自分」と思い込んでしまう

虐待によって子供に植えつけられるトラウマの中には、子供に自責の念を抱かせてしまうようなものもあります。

前掲の国立生育医療研究センターによるガイドラインでは、以下のような記述があります。

 子どもは、不当で理不尽なできごとがなぜ起こったのかという理由を捜そうとします。しかし、当然のことながら、正当な理由は見つかりません。このような場合、「自分が悪かったからだ」「自分が恥ずかしい存在だからだ」というような非機能的な信念は、トラウマを体験した子どもたちに最もよく認められるものです。

(引用元:子どものトラウマ診療ガイドライン|国立生育医療研究センター

幼い子供でも、虐待を受けている状態は異常であることは分かるでしょう。しかしどうして異常な事態が起こってしまったのか、その理由を上手に把握することができません。虐待の理由が不明確であることが、「悪いのは自分なのではないか」という気持ちを引き起こしてしまうのです。

中には「自分が良い子になれば、お父さんやお母さんは優しくなるのではないか」と思い、両親の言うことをより忠実に聞こうとする姿勢を見せる子供もいるでしょう。子供はただ、両親から愛されたいのです。

どれだけひどい目に遭っていても、相手が保護者であれば子供は愛情を受けたいと思うでしょう。その気持ちが子供に虐待を受け止めさせてしまい、時にはひどく傷ついてしまうのです。

攻撃的な行動や、自傷行為をする

虐待によって子供が抱えるトラウマの中には、子供が自傷行為に及んでしまうというものもあります。

子供による自傷行為について、前掲の国立生育医療研究センターによるガイドラインでは、以下のような記述がされています。

抑うつは子どもの自己評価を低下させ、友人関係や異性関係における不適切な選択を助長してしまうことがあります。さらには、トラウマを体験した子どもを、自傷行為や自殺企図、物質乱用、危険な性的行動などに駆り立ててしまうこともあります。

(引用元:子どものトラウマ診療ガイドライン|国立生育医療研究センター

トラウマを抱えた子供は精神状態が不安定になってしまいます。その結果、危険な行動を起こしやすくなってしまうのです。

また、自傷行為以外にも突然暴力的になったり、注意が散漫になりやすかったりなど異常な行動を起こしやすくなってしまいます。虐待のトラウマによって生まれる心の不安定さは、精神だけでなく身体的にも子供をむしばんでしまうのです。

虐待の現状を知ることで、自分の行動を振り返ろう

おそらく多くの人が、「児童虐待はいけないこと」という認識を持っているでしょう。しかし、それでも児童虐待の件数は残念ながら増えてしまっています。

また増え続けるDVなどによって、子供以外にも傷つく人が増えているのが現状です。虐待が影響を与えるのは、子供だけではなく家族全体なのです。

まずは自分の言動が虐待行為に当てはまっていないか、振り返ってみましょう。また、自分自身がほかの誰かに傷つけられているとしたら、その姿を見た子供も心理的に傷ついているかもしれません。「我が家は大丈夫」ではなく、家族1人1人が健やかに生きていけるよう、それぞれの言動を振り返る時間をとってみましょう。

参考
児童虐待の定義と現状|厚生労働省
平成30年上半期における少年非行児童虐待及び子供の性被害の状況|警視庁
日本から「児童虐待」が絶対なくならない理由といま必要な10の対策|現代ビジネス
結愛ちゃん虐待死「ひどい親」と批判しても事件は減らない 「評価」に追い詰められる親たち|AERA dot.
児童虐待の「その後」 は? 虐待経験者の「大人たち」が抱える貧困リスク|Yahoo!ニュース
子どものトラウマ診療ガイドライン|国立生育医療研究センター
専門家が警告!他人事じゃない!!虐待された子どものその後とは?|暮らしニスタ
※有料記事※児童虐待の通告、過去最多3万7千人 今年上半期|朝日新聞DIGITAL
虐待されて育った方、今、幸せですか?|発言小町 読売ONLINE

この記事をかいた人

mio_yamamoto

立教大学観光学部卒。豊かな教育は豊かな街を作ることに繋がると考え、教育業界にて6年間講師職に従事。現在は働く人を支えるべく、社会保険労務士の勉強中。趣味はアンテナショップ巡りとプログラミング、iPadで写真に手書き加工をすること。食べることが大好きで全体的に太ってきてしまったので、暇さえあればストレッチや筋トレに励む毎日です。