大企業に就職すれば必ず高い給料をもらえるわけではない
ご紹介した厚生労働省と東洋経済オンラインのデータを見て、大企業はやはり給与が高いと考えるのは性急です。注意していただきたいのは、どちらのデータも「平均」という概念で集計している点です。
以下の、東京商工リサーチが発表した2019年3月期決算「役員報酬1億円以上開示企業」の調査結果をご覧ください。
参考
2019年3月期決算「役員報酬1億円以上開示企業」調査|東京商工リサーチ
「平均」は、全社員の給与を従業員数で割って計算するのが一般的であるため、経営トップが高い給料をもらっていても若い従業員層の給与はそれほど高くないケースが見受けられます。
さまざまな給与ランキングの上位を誇る大企業であっても、確実に他企業より給与が高いとは言えないようです。
大企業に勤めるメリットが薄れる現代
良い大学に入って大企業に就職すれば将来は安泰。一昔前まで言われていた「人生の成功ルート」は、現代では通用しなくなっています。現代の就職事情を考えてみましょう。
大企業では業務が細分化しており自活スキルが身につかない
前述の国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査」の結果に、会社に勤続する平均年数は12.2年とあるように、現在新卒から退職まで一つの会社で働く人は少なくなりました。
転職が当たり前の時代、中途採用市場も盛んで、転職支援活動を行う会社も増えています。中途採用市場で求められるのは採用後に即戦力として企業貢献できる、社会経験が豊富で専門的スキルを持っている人材です。つまり、個々の学歴・職歴のみではなく、ほかの求職者にはない独自のキャリアアピールが必要となるのです。
大企業に勤めていた人が転職を考えたときに課題になるのが、このキャリアアピールです。業務内容が広範囲で従業員数も多い大企業に勤めていた人の場合、業務は細分化されており、専門的な経験やスキルをアピールできるほどのキャリアを積めていないことが多いのです。
また、従業員数が多いがゆえに「誰かがやるだろう」と他力本願な職務姿勢を身につけてしまっている危険性もあります。
そのため、大企業に勤めているとうまくキャリア設計ができず、転職したくても踏み出せない人もいます。
大企業ほどプレッシャーが強く精神病にかかりやすい
大企業は経済的に安定していても、精神的な安定を得られないという意見もあります。「大企業病」と言われるように、業績が安定している大企業ほど非効率的な企業体質や社員の思い込み行動が起きやすく、企業風土に合わない従業員は精神疾患を患うケースが増えているのです。
大企業病の特徴や原因についての詳細は、下記参考をご覧ください。
いまや終身雇用は終焉が近づき、退職まで大企業にいられるか不明
トヨタ自動車の豊田章男社長や日本経済団体連合会の中西弘明会長という、経済界の重鎮が2019年に終身雇用の終焉を示唆しました。バブルがはじけて以降、多くの大企業で大規模なリストラによる経営再構築が実施されてきました。しかし、景気が回復した近年でも、業績好調な大企業でリストラ政策が行われています。
リストラを行う理由は企業ごとに異なりますが、この問題が終身雇用の終焉を示唆する原因の一つになっています。今や、大企業に勤めているからといって一生安定した生活が送れるという保証はないのです。
業績好調な大企業がリストラを行う理由については、下記参考をご覧ください。
まとめ
大企業の一定年齢以上の平均収入は、中小企業と比べると高いことが分かりました。そういう意味では、人気の大企業は給与が高いというイメージは間違いではないようです。
しかし、転職やリストラが当然の現代において、大企業に勤めていることが人生の幸せにつながるかというと疑問が残ります。経済的安定を求めて仕事をするのではなく、幸せに生きるために仕事をするという価値観を持っている人が近年増えていると言えるでしょう。
自分にとって幸せとは何か。
幸せに生きるためにどのように仕事と向き合うのか。
就職活動を機に考えてみてはいかがでしょうか。
参考
“日本 大企業 一覧”に関する就活準備・インターンシップ情報|リクナビ2021
【大企業の一覧表を大公開】業界の情報収集で就活の幅を広げよう|就活の未来
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