業績好調な大企業でもリストラはある!安定した生活を守る3つの方法 - cocoiro career (ココイロ・キャリア)

2012年11月を底に景気の回復基調が続いていますが、近年1,000人以上の大規模なリストラを実施する企業が増えています。中には業績が好調な大企業がリストラを実施していることもあり、景気回復の実感を得られない人も多く、社会不安を招く結果となっています。一体なぜこのようなリストラが行われるのでしょうか。当記事では、企業がリストラを行う理由を6つ説明し、このリストラ時代を生き抜くのに必要なことを3つご紹介します。

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終身雇用の崩壊?安定した生活を脅かす「リストラ」

そもそもリストラとは単なる人員削減の方法を言うのでしょうか。リストラの本来の意義を確認し、どのような企業でどれくらいの規模のリストラが行われているのかをご紹介します。

リストラとは?

リストラとは、リストラクチュアリング(restructuring)の略語で、企業の事業規模や事業内容を再構築することを言います。例えば、不採算部門を切り捨てて将来性のある部門へ進出したり、将来的な業務内容・社内制度改革のための従業員削減などがリストラの具体的事例としてあります。そのため、リストラとは単に「組織の再構築」というプラスイメージよりも、「就業規模縮小や従業員解雇」といったマイナスイメージが強い企業経営行動と言えるでしょう。

業績好調な大企業に就職したらリストラはない?

2019年5月13日の日本自動車工業会会長会見で、トヨタ自動車の豊田章男社長は「終身雇用の終焉」を示唆しました。そして、2019年12月23日には一般社団法人日本経済団体連合会の中西弘明会長が2020年春季労使交渉の経営側の指針として、「年功型賃金や終身雇用の見直し」を重点課題に掲げました。

参考

「年功・終身」見直し重点に 経団連が春季交渉指針(2019.12.23)|日本経済新聞

日本型雇用は“幻想”に過ぎない トヨタ・経団連トップの「終身雇用難しい」発言で露呈  (1/3)(2019.5.22)|#SHIFT

これらの経済界の重鎮の意見は、現実の経済界で起きているリストラを反映したものとも言えます。2019年末以前に1,000人以上の大規模リストラ実施を発表した企業の一部をまとめたのが次の表です。

【2019年以前にリストラを実施を公表した企業とリストラの内容一覧(一部)】

会社名 リストラの内容
みずほ証券株式会社 50歳から63歳の約1,100人
株式会社朝日新聞社 45歳以上の早期退職募集
三井E&Sグループ 1,000人の人員削減・配置転換
株式会社セブン&アイ・ホールディングス 3,000人の人員削減
キリンホールディングス株式会社 45歳以上の早期退職募集、5,000人規模の人員再配置
日産自動車株式会社 全世界で12,500の人員削減
株式会社損害保険ジャパン 4,000人の人員削減
富士通株式会社 2,850人の人員削減
株式会社三菱UFJ銀行 店舗数を35%削減
パイオニア株式会社 3,000人の人員削減
株式会社東芝 7,000人の人員削減
日本電気株式会社(NEC) 間接部門かハードウェア事業領域の特定部門に在籍している45歳以上かつ勤続5年以上の人から希望退職者を募集。3,000人の人員削減

参考

【随時更新】令和突入後の大企業のリストラ・人員整理の一覧(2019.12.14)|仕事の悩みに、仕事カフェ

大企業のリストラ事例をまとめてみた。富士通にみる「終身雇用で安定・安心」の終焉と末路、今後の日本の未来は?(2019.6.25)|Master Career

特に注目したいのが、キリンホールディングス株式会社(以下、キリン)のリストラです。キリンは2018年度決算で過去最高益を出し、業績好調な時期でのリストラでした。

参考

キリンが5000人規模の人員再配置、ビバレッジとメルシャンでも大なた【スクープ】(2019.10.11)|DIAMOND online

リストラを行う背景には企業によってさまざまな理由があります。業績の悪さからリストラが行われるのは一般的ですが、業績が好調であるがゆえに希望退職者に割増退職金を渡すことができるため、リストラを実施するという企業もあるのです。

そのため、業績好調な大企業に就職できたからといって、法定定年年齢の60歳まで安定した生活を送れる時代ではなくなったと言えるでしょう。

企業がリストラを実施する6つの理由

企業がリストラを実施する主な理由は、企業組織を再構築する目的のものから、時代背景を反映したものまで6つあります。

業績が悪化しているため経費を削減する

最も一般的な理由が業績悪化です。企業は対外的経済活動によって利益を出すことを目的とした組織です。そのため売り上げが減少した場合は、不採算部門の経費や人件費を削減して費用を減少させることで、利益を守るという経営行動を行います。

若手が少なく年配社員が多い年齢構成を解消する

バブル期(おおむね1986~1991年)は業績好調の企業が多かったために採用する人員数が多い時代でした。そのため、バブルがはじけて業績悪化に転じた多くの企業は、利益を守るために人件費を削る、つまり採用人員数を減らして苦境を乗り越えていたのです。そうした企業の社員構成は「50代が多く、40代以下の若手が少ない」状態になっています。

この社員構成の問題は、将来の経営を担う後任人材が確保できていないという点にあります。そこで、企業内の年齢構成の適正化を目的としてリストラを実施します。

新規事業への進出で活躍できない人材の放出する

新規事業に進出する場合、能力的についていけない社員や、仕事選びの軸が企業方針と合わない社員が出てきます。こうした今後社内で活躍の場がなくなる社員は、昇格や昇進の可能性も失われるため、本人も社内での居場所を失ってしまいます。

そのため、業績好調な時に割増退職金を支払うことを条件に、社外に活躍の場を求めるよう早期退職を促し、リストラを行います。

年功的人事・賃金制度への社員の反発を防止する

従来の年功型の人事制度では、昇給・昇進は勤続年数によって決まっていました。しかし、これではいくら優秀な人材であっても若手には昇給・昇進のチャンスがないことになり、社員の職務遂行へのモチベーションが上がりません。そのため、職務・職責重視の職務給制度を導入することで、優秀な人材を適正に評価できるよう人事・賃金制度を改革することがあります。

しかし、この人事・賃金制度改革は、年功型人事で管理職になった年配社員は、今後昇格や昇進の機会がなくなるばかりか、管理職を外されることも考えられるため当然反発が起きます。

こうした将来的に企業の制度改革を受け入れられない人材は、放置しておくと他の社員のモチベーションを下げる要因となってしまうため、リストラによって社外に活躍の場を求めるよう促します。

高齢法改正を見据えて活かせる人材を評価する

2019年5月15日に、政府は希望する高齢者は70歳まで働けるよう企業に対応を求める高年齢者雇用安定法改正案の骨格を発表しました。これにより、政府は法定定年年齢の60歳以降の就業率が上がるため経済効果が上がると見越していますが、企業側にとっては雇用の負担が重くのしかかることになります。

高年齢者雇用安定法では現行、60~65歳は「雇用義務」があるためリストラを行う対象にすることが難しいと言われています。そのため、60歳を迎えるまでに「企業内で70歳まで活躍できる人材か」を判断し、将来的な事業拡大や社内制度改革に沿わないと考えられる人材は、リストラによって長期的に働ける活躍の場を社外で見つけるよう促します。

参考

70歳雇用へ企業に努力義務 政府、起業支援など7項目(2019.5.15)|日本経済新聞

AI時代到来に備える

野村総合研究所は2015年12月2日に、2025~2035年頃には日本の労働人口の約49%が担う職業がAIで代替できるようになるという調査結果を発表しました。

【AIが代替できる職業とできない職業の特徴比較】

AIが代替できない職業 AIが代替できる職業
  • 芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業
  • 他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業
  • 必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業
  • データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業

(注)代替可能性が高い職業の具体例は下記参考をご覧ください。

参考

日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に(2015年12月2日)|野村総合研究所

人工知能に仕事を奪われる職業100選〜働く必要がなくなる日も近い?〜|新会社設立.jp

現在、企業は業務へのAI導入を順次進めており、これによって業務内容の削減や変更を余儀なくされている社員も出始めています。この技術革新の流れは加速すると予想されているので、今後AIでは代替できないと考えられる創造性や協調性が必要な業務や、非定型な業務を遂行できない社員は、将来的に企業に利益をもたらすことができないため、リストラの対象となります。