建築士が行う仕事の内容
建築士は施主の注文にそって設計図を描くだけでなく、建築中の工事監理、役所の検査立ち合いなどさまざまな仕事をさばかなければなりません。規模の大きい設計事務所に勤めている場合は1人で複数の建築物の監理を任させることもあり、設計から施工、引き渡しまで責任をもって仕事をすることになります。
建築や土木についての知識や設計図を描く能力だけでなく、予算に合わせて構造を考えるなどさまざまな配慮も必要となります。また、施主や関係各所との打ち合わせや手続きなども建築士が行わなければならないため、コミュニケーション能力に長けていることも求められます。表面では見えにくい業務も含めて建築士が行う仕事の内容について説明しましょう。
さまざまな構造物・建築物の設計
建築士というと事務所で図面を引いている姿をイメージすることも多いものです。建築法に基づいて一般住宅や集合住宅、商業ビルやホールなど、さまざまな構造物や建築物の設計に携わることが建築士の第一の仕事となります。建築士は豊富な知識や経験から自分なりのアイデアやプランを数多く持っていますが、顧客のニーズに応えることが最優先されるため、何度も打ち合わせを重ねて施主の意見をどのように反映させるかが大切なポイントとなります。
特に一般住宅の設計では、建築物の構造や素材などについてほとんど知識がない一般の人から「北欧風のイメージ」、「光と開放感にあふれるイメージ」などの抽象的なオーダーを受けることになります。明確ではない施主のイメージをいかに具体的な物に変換して予算内で実現させるかも建築士の腕にかかっています。
工事の監理
建築士が描いた設計図に基づいて実際の工事が進められます。建築士は設計図を描いて終わりではなく、建築現場で指揮・監督などの監理作業にあたらなければなりません。建築現場には、大工や左官、配管工など、それぞれの道のプロが揃っていますが、設計図通りに工事が進んでいるかどうかを見極め、指示するのは建築士の仕事となります。
設計図通りに工事を進めていても問題が発生して修正しなくてはならないことも少なくなく、現場に足繁く通いながら設計を手直しして修正案を提示することもあります。最新の建築基準法では耐震補強も建築の要となっています。目に見えない構造設計のほか、電機や空調の設備設計についても建築士が責任を負うこととなります。
関係各所への手続き業務
建築士は施主からオーダーを受けさまざまな意見を反映しながら用途やイメージ通りの建築物をつくるために設計図を描きます。また、設計図通りに現場で工事が適切に行われているかどうかを確認するのも工事管理という建築士の仕事になります。さらに、建造物を建築する際には正式な契約を結ぶことが必要であり、施主に対して書面で重要事項の説明を行う義務も生じます。
建造物の建築には各種手続きが必要であり、本来であれば施主が行わなければならないものです。しかし、ほとんどの場合は建築士が施主の代行として手続きを行います。建築に関する法令や条例に基づく手続きにはさまざまなものがあり、役所への計画初等の届け出も必要となります。事務方が行うような諸手続き業務も建築士が行う仕事となるため、本業以外のことに労力や時間を割かねばなりません。