具体的にどう変わった?ゆとり教育の内容
「ゆとり教育」は具体的にどのような点がそれまでの教育と異なるのでしょうか? 今回はゆとり教育の主な内容について3つご紹介します。
科目ごとの授業数が変化!理数科目は減少へ
「ゆとり教育」は個人の力を高め、「生きる力」を育むことを目的に実施された教育です。勉強だけではなく、家庭や生活のなかでも子供の力を伸ばすことを目指していました。
勉強以外のことに充てる時間を増やすために、授業数が減らされました。前掲の文部科学省の学習指導要領の改定の経過についての資料には、以下のような記述があります。
従前より各学年とも年間70単位時間(第1学年にあっては68単位時間),週当たりに換算して2単位時間削減すること
(引用元:学習指導要領等の改訂の経過|文部科学省)
ゆとり教育が始まる前の年よりも、各学年で約70時間の授業が減らされたのです。週当たりでは2時間の削減ですが、義務教育全体を通すと大幅な授業時間が削減されたことになります。
なかでも理数科目や社会は、国語に比べてもともとの授業数が多くありませんでした。限られた時間の中で教えていた内容を、さらに絞った授業が展開されるようになったのです。
一方で小学3年生以上には「総合的な学習の時間」という科目が追加されました。勉学の時間を減らして「ゆとり」を生み出し、個性を伸ばす時間をとることを目的としていました。
土曜日が休みに!完全週休2日制の導入
2002年から始まった「ゆとり教育」の内容の1つには、完全週休2日制の導入も含まれます。1990年代から学校の土曜休みは徐々に制度化され、2002年からは平日週5日間を登校日とする「完全学校週5日制」の体制が築かれました。
土曜の学校を休みとすることについて、文部科学省に設置された中央教育審議会では以下のように述べています。
今日の子供たちの生活の在り方を省みると、子供たちは全体として[ゆとり]のない忙しい生活を送っており、様々な体験活動の機会も不足し、主体的に活動したり、自分を見つめ、思索するといった時間も少なくなっているというのが現状である。
(引用元:第5章 完全学校週5日制の実施について|中央教育審議会)
子供たちの日常生活には「ゆとり」がなく、個々の力を伸ばすことが困難になっていると考えられました。したがって土曜を休みとし子供に時間を確保してあげることは、大人の務めであるとされたのです。
また土曜が休みとなったことは、授業時間数の減少にも影響しています。文部科学省は勉学の時間を削ることで、放課後や土日の時間を子供が自分の時間とすることを願ったのです。
評価方法も変化!相対評価から絶対評価へ
個人の力を認めるという点においては、成績の評価方法も変化しました。2002年ごろより「絶対評価」で成績が評価されるようになったのです。絶対評価とは目標への達成度に準拠した評価方法です。例えばテストで90点以上をとった生徒は全員評価が「5」となるなど、評価の基準がある程度明確になっています。
絶対評価を導入した理由について、文部科学省は5つの理由を挙げています。そのうちの1つには以下のような解説が述べられています。
児童生徒一人一人の進歩の状況や教科の目標の実現状況を的確に把握し、学習指導の改善に生かすことが重要であるが、そのためには、目標に準拠した評価が適当であること。
(引用元:学習指導要領について|文部科学省)
「ゆとり教育」は個人の力を伸ばすことをねらいとしています。個々の状況を正確に把握することが、子供の能力を引き出すためには必要だと考えられたことから絶対評価制度が導入されたのです。