小学校のプログラミング教育ではどんなことをするの?先進実践例を紹介 - cocoiro(ココイロ)

2020年、小学校でプログラミング教育が始まります。学校でコンピューターやプログラミングの授業を受けたのは大学に入ってから、と考える保護者世代の人も少なくないのではないでしょうか。この記事では文部科学省の提示するモデルケースや先進事例を中心に、小学校プログラミング教育における取り組みを具体的に紹介します。子供の学校でどんな授業が行われるのか、イメージをふくらませてみましょう!

小学校プログラミング教育は何のために行うの?

なぜ始まるの?

グローバル化と多様化、情報化が進む今は、求められる学力や教育の姿が変化しています。知識を教授し習得させるための教育から、知識を応用し考え、判断して問題に対処する力、情報を収集し活用する力を育てる教育が、重要視されるようになりました。プログラミング教育の導入は、こういった世界的な教育の変化の流れの中にあるものです。

諸外国においては日本に先駆けて、初等教育の段階からプログラミング教育を導入する動きが見られます。日本においてもすでに、いくつかの小学校で意欲的な取り組みがなされていましたが、2020年度から全ての小学校でプログラミング教育が全面実施されることとなりました。

どんなことを目指すの?

プログラミング教育で目指すのは、単にコンピューターやインターネットの使い方に慣れることや、プログラミングの技能を育てることではありません。新しい学習指導要領において、学習の基盤となる資質・能力として位置づけられているのが「情報活用能力」です。情報活用能力とは、情報を収集・整理・比較検討したり他者に発信・伝達したりするための総合的な力のこと。プログラミング教育は、情報活用能力を育てる教育の一端を担います。

プログラミング教育が目的としていることのひとつは「プログラミング的思考」を身につけることです。「プログラミング的思考」とは、2016年に開催された「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」において提唱された概念で、自分の意図を実現するために、どのようなアクションをどのような順番で組み合わせるかを、論理的に考える力です。

そのほか小学校プログラミング教育では、プログラミングの働きや、現代の情報社会が情報技術によって支えられていることに気づくこと、さらに情報技術を問題解決に生かし、よりよい社会を築こうとする態度を育むことを目的としています。

参考

文部科学省(平成30年11月)『小学校プログラミング教育の手引(第二版)』

小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議(平成28年6月16日)『小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)』

小学校プログラミング教育では何をするの?

どんな授業が始まるの?

「プログラミング教育の必修化」と聞くと、「プログラミング」という新しい授業が始まるようなイメージを思い浮かべるかもしれませんが、そうではありません。教科の勉強や課外活動などと組み合わせた、幅広く総合的な学習を行います。

文部科学省の小学校プログラミング教育の手引(第二版)では、プログラミング教育の実施の仕方を、次のように分類しています。

A.学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの 算数や社会など、各教科での学習をより確実な効果的なものとするために、プログラミングを取り入れる
B.学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの
C.教育課程内で各教科等とは別に実施するもの A、Bとは別に学校ごとの創意工夫で、プログラミングの基礎や実際を学んだり、具体的な課題解決に取り組んだりする
D.クラブ活動など、特定の児童を対象として、教育課程内で実施するもの 学校での課外活動としてプログラミングに取り組む
E.学校を会場とするが、教育課程外のもの 地域や企業・団体等が開催する学習機会を紹介するなど、相互に連携・協力してプログラミング教育を行う
F.学校外でのプログラミングの学習機会

文部科学省(平成30年11月)『小学校プログラミング教育の手引(第二版)』 より筆者作成)

何を使って勉強するの?

プログラミング教育には、パソコンやタブレットなどICT機器を使わずにコンピューターサイエンスの考え方を学ぶ「コンピュータサイエンスアンプラグド」という方法と、実際にICT機器を使ってプログラミングを体験する取り組みとがあります。

日本の小学校などでは「アンプラグド」の学習として、紙にフローチャートを書いたり黒板に短冊を貼ったりして教えることがよくあります。プログラムを実行させる順序を学び、プロセスを客観的に検討することで、論理的な思考力を習得します。

しかし、「アンプラグド」で終わってしまっては、プログラミング教育の豊かな魅力を味わうのには足りません。トライアンドエラーを通じた意図の実現、スピード感とアイデアの豊富さ、結果を他者と共有することなどは、コンピューターの持つ従来的なツールにはない特性です。

こういったコンピューターの特性は、思考法のレベルから子供たちを大きく変えてくれるとともに、能動的で自発的な学習を実現させてくれます。そして何よりも、実際にプログラミングしてみることは、楽しくて面白い体験です。

成績はどうつけられるの?

プログラミング教育は情報を活用する総合的な力を育てるものであり、「プログラミング」という独立した授業があるわけではありません。ですから、プログラミングの理解そのものに成績がつけられることもありません。

各教科の授業の中でプログラミング教育が実施される場合、すなわち、上で紹介した分類AとBでは、あくまでその教科の評価基準を基に成績がつけられます。「手引」はその上で、各学校がプログラミング教育で育てる力を明確にすること、それぞれの子供の資質や能力の伸びを受け止め、成長が目覚ましい子供には適切に評価し、それを伝えるのが望ましいとしています。各教科とは別に実施する分類C~Fについては、成績をつけるようなことはありませんが、子供の伸びを受け止めポジティブに評価することについては、同様に推奨しています。

小学校プログラミング教育の概要や理念、意義などについては、こちらも参考にしてください。

小学校プログラミング教育とは?その内容と意義、学びの未来を探る

参考

文部科学省(平成30年11月)『小学校プログラミング教育の手引(第二版)』

小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議(平成28年6月16日)『小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)』

アンプラグド「だけ」ではプログラミング教育をやったことにならない-授業はどう進めるべきか?【平井聡一郎氏インタビュー】|EdTechZine

スクラッチを通じたプログラミングで学ぶ目的は論理的思考力ではない〜MIT Media Lab村井裕実子さん、青山学院大学阿部和広先生インタビュー|一般社団法人こたえのない学校