学習のイメージ①:教科書と授業の中で学ぶ
では、実際の学習活動はどのように行われるのでしょうか。いくつかの事例からイメージをふくらませてみましょう。まずは、従来からの授業と絡めて学ぶ例を紹介します。
【3~6年生音楽】リズムパターンを組み合わせて音楽を作る
プログラミング言語や創作用ソフトなどを使って、作曲をする授業です。さまざまなリズムパターンを組み合わせて、自分の意図するオリジナル楽曲を作ります。
<プログラミング活用の面白さ>
・楽器演奏スキルや読譜などの力に左右されないので、無理なく楽しく音楽づくりの学習に取り組める ・リズムパターンや音楽構造が視覚的に表示されるので、組み合わせの面白さや音楽の仕組みが目で分かる |
【4年生社会】特徴から47都道府県を見つけるプログラム
地理的環境や自然条件、面積、人口や特産物など特色を組み合わせて、47都道府県のうちのどの都道府県なのかを特定するプログラムを活用。都道府県の名前と位置を勉強します。
<プログラミング活用の面白さ>
・特徴に当てはまる都道府県が複数ある場合、プログラムが正常に機能しない(都道府県の特定という結果が出力されない)ことがポイント ・示される都道府県が1つに絞られるように、特徴の組み合わせ(プログラムに与える条件)を探して見つける過程がエキサイティング |
【5年生算数】プログラミングで正多角形を書く
正多角形を構成する要素「辺の長さが全て等しく、角の大きさが全て等しい」に着目し、プログラムを使って実際に書いてみます。
<プログラミング活用の面白さ>
・どんな命令をどんな順序で組み合わせれば作図できるのか考える ・繰り返しの命令を使うとプログラムが簡潔に記述できることを発見できる ・今まで書いたことのない角の多い正多角形でも書ける ・手で正多角形を書くのは難しくても、コンピューターを使えば簡単に書けることが分かる |
【6年生家庭科】自動炊飯器のプログラムを解明する
水加減や浸水時間、加熱の仕方、蒸らしなど、炊飯に関する一連の手順をプログラミングし、ご飯をおいしく炊くための仕組みを理解します。
<プログラミング活用の面白さ>
・おいしい炊飯の条件や手順について理解が深まる ・自動炊飯器では、それをプログラムが制御していることが分かる ・炊飯器以外にも、身近な家電製品などにコンピュータ(プログラム)が活用されていると気づく |
【総合的な学習】身の回りの情報技術を確認する
身の回りにあるさまざまな製品やシステム、工業生産などに、情報技術が活用されていることを理解する学習です。
例1:ジュースの自動販売機のプログラム作成
投入された硬貨の合計額を出す、その額で買える商品だけボタンが押せるようにする、ボタンが押された商品を外に出すなど、自動販売機の動きを再現するプログラムを作成します。
<プログラミング活用の面白さ>
・機械的な仕組みでは難しい複雑な動作も、プログラム制御ならできることが分かる ・電気・水道・公共交通機関など、ライフラインを維持管理するためにもプログラムが働いていることに気づく ・生活を快適に効率的にするために、人工知能(AI)やビッグデータ、ロボットなどが活用されていることに気づく |
例2:まちの魅力を発信するタッチパネル式案内表示の作成
自分が考える「まちの魅力」を発信するタッチパネル式の案内表示を、プログラミングで試作します。
<プログラミング活用の面白さ>
・外国人や高齢者、子供など対象によって情報発信方法を変えるため、プロブラムの命令を分岐させることも検討 ・「どのような情報が利用者にとってニーズがあるのか」「伝えたい情報をもっと効果的に伝えていくためにはどのようなことが必要か」など、効果や課題を検証する ・まちの一員として、自分もまちづくりに関われることに気づく |
例3:自分が作ってみたい自動車の制御システムをプログラミング
自動車製造工場の現地学習などの知見を踏まえ、「自分が作ってみたい自動車」を実際にプログラミングします。
<プログラミング活用の面白さ>
・「衝突を予測して回避」など、自分の考える制御機能を実現するプログラム手順を考えてみる ・プログラムを駆使したものづくり、製造の本質に触れる ・製造工業に携わる人たちの創意工夫、仕事の魅力や苦労などを知る |
参考
文部科学省(平成30年11月)『小学校プログラミング教育の手引(第二版)』
学習のイメージ②:学校独自のカリキュラムの中で学ぶ
次に、個々の学校が工夫して取り組んでいるプログラミング教育の実践例を、先進事例から紹介します。
デジタル教材を活用して図工作品を作る
三鷹市立第一小学校の図工専科、﨑村紅葉教諭は、5、6年生の図画工作にプログラミングの要素を取り入れています。﨑村教諭は、「デジタル教材を取り入れることでより多様な作品が作れる」「子供たちの表現の幅が広がる」と語ります。
授業タイトル | 使用ツール | 内容 |
ビー玉の冒険
(5年生) |
MESH | タブレットを使ってプログラミング。LEDや明るさセンサー、人感センサーなどを活用し、ビー玉を転がして音を鳴らすコースターを作る。 |
未来の遊園地
(6年生) |
littleBits | マグネット式のモジュールで電子回路を繋ぐlittleBitsを使い、自分の考える「未来の遊園地」を制作。巻き取り式のジェットコースターやUFOキャッチャー、ファンで作ったシャボン玉製造機などが誕生。 |
The Moving Pictures!!
(6年生) |
Viscuit | ピアニストに実際に曲を演奏してもらい、その音楽をViscuitで動く絵に表現。できあがった作品を、コンサートでの演奏時に会場壁面に投影して発表。 |
(現場の先生の本音が飛び出したシンポジウム「プログラミング教育で何をどう教えるか」|EdTechZine より筆者作成)
短冊の活用で考え方を学びプログラム教材で実践する
江戸川区立東小松川小学校の鈴木康晴教諭は、アンプラグドからプログラミングの実践まで繋げた指導を実践。アンプラグドの授業では、好奇心旺盛な女の子ルビィの物語を通じてコンピューターとテクノロジー、プログラミングについて語る絵本、『ルビィのぼうけん』を薦めています。
「条件分岐、順次処理、デバッグといったことも学べるキットもそろっている。こうしたアクティビティは、プログラミング教育の導入として使いやすい」
(引用元:現場の先生の本音が飛び出したシンポジウム「プログラミング教育で何をどう教えるか」|EdTechZine)
また国語と生活の授業では、短冊を使って思考順序を学ぶ学習を実践しました。
「短冊や付せんを使った学習は、プログラミング教育に関係なく、これまでやったことがある先生も多い。これを『プログラミングに関係がある』と思って実践するかしないかでは、まったく異なってくる」
(引用元:現場の先生の本音が飛び出したシンポジウム「プログラミング教育で何をどう教えるか」|EdTechZine)
木製プログラミングツール「キュベット」で課題解決
東京都府中市立府中第三小学校、図工専科の山内佑輔氏は、PCやタブレットを使わない木製のプログラミング教材「キュベット」を活用しています。「キュベットの大冒険!」というテーマで、数人からなる1組のグループがマップ上でキュベットを動かしていくミッションに挑戦するもの。命令ブロックを並べて道順を作り、課題解決しながら進みます。
「失敗してもいい、間違えたら戻ればいいだけ。たくさんできるほうが、頭を使うことになる」
(引用元:現場の先生の本音が飛び出したシンポジウム「プログラミング教育で何をどう教えるか」|EdTechZine)
参考
「プログラミング教育で何をどう教えるか」シンポジウム開催|次世代幼児教育研究プロジェクト