小学校のプログラミング教育ではどんなことをするの?先進実践例を紹介 - cocoiro(ココイロ) - Page 3

学習のイメージ③:クラブ活動や学校外の人と共に学ぶ

最後に、授業以外の課外活動や学校の外で学ぶ事例について、紹介します。

パソコンクラブでプログラミングに取り組む

こちらの例は、学校のパソコンクラブでプログラミングに取り組んでいる例です。子供たちは1年の活動を通して「楽しかった」「協力して作品を作ることができた」「プログラミングやスクラッチが去年よりもできるようになった」などと振り返っています。

実施校 江戸川区立東小松川小学校
対象学年 4年生~6年生
使用ツール micro:bit、Scratch、Viscuit、embot

主に学校所有のパソコンを1人1台利用(embotのみタブレットを使用)

活動内容 ・プログラミングツールを活用して協力してプログラムを作成する
・クラブ発表に向けて、活動内容を紹介する動画を作成する
・クラブ見学やクラブ発表会に向けて、体験してもらうためのゲームをプログラミングツールを活用して協力して作成する
・小学生が参加できるプログラミング・コンテストなどに挑戦する(希望者)

パソコンクラブでのプログラミング体験 | 小学校を中心としたプログラミング教育ポータル より筆者作成)

大学生が先生になるロボットプログラミング教室

こちらは学校外のベンチャー企業が取り組むプログラミング教室の例。特筆すべきは、メインメンターとなって教えるのが工業大学の学生たちであり、教職員や保護者などの大人たちはサブメンターとして、子供たちの精神面のサポートを担当している点です。

実施校 島原市立第五小学校、大分市立明野北小学校
主催 株式会社ロジコモン、九州工業大学
対象学年 4年生~6年生
使用ツール ArtecRobo、Scratch
活動内容 ロボットカーを使用して全4回の講座を実施
・第1回:アンプラグド型でプログラミング的な思考を学ぶ
・第2回:正方形・正三角形の図形をトレースするロボカー制御
・第3回:マス目状の迷路をロボカーで攻略
・第4回:子供たちで迷路を考案し、出題して攻略し合う

学生ベンチャー企業が大学と連携して九州広域で実施するブロックロボットプログラミング教室 | 小学校を中心としたプログラミング教育ポータル より筆者作成)

「マインクラフト」でまちの復興を描くワークショップ

「マインクラフト」は、立方体のブロックを組み合わせ、建物や街並みなど3D空間の世界を自由に創造できるゲームで、2019年5月には世界最高の販売本数を記録。ビジュアルプログラミング機能を追加した「教育版マインクラフト」は、世界の教育現場で活用されています。

2019年には、地理的環境的なハンディキャップなく子供たちがプログラミング体験に接する機会の創出を目的に、「マインクラフトカップ2019全国大会」を開催。7月には東日本大震災の被災地・岩手県釜石市でワークショップが行われました。ワークショップで取り組んだ作品の出来栄えは、講師を務めた公式プロマインクラフターのタツナミシュウイチさんが「小学生レベルとは思えない完成度」と感嘆するほどだったと言います。

主催 NPO法人@リアスNPOサポートセンター

マイクロソフト復興支援チーム

大会テーマ スポーツ施設のある僕・私の街

〜ワクワクする「まち」をデザインしよう〜

プログラミング作品(ワールド)のテーマ スタジアムや運動場、体育館などのスポーツ施設とこれと連携して利用される施設のある町に住んだり訪れたりすることで、暮らす全ての人々が充実した暮らしをすることができるワールドを開発する
釜石ワークショップのテーマ 「ラグビーワールドカップ2019日本大会」のために釜石に新しく作られた「釜石鵜住居復興スタジアム」をマインクラフト上に建設する
ワークショップの内容 <前半>
・「釜石鵜住居復興スタジアム」の現地取材
・ラグビーをプレイするフィールド製作を行うグループ、会場の座席を作るグループ、競技場の外観を作成するグループの3グループに分かれ、自分が担当する部分を観察する<後半>
・釜石中心部にある市民参加型シアター「釜石PIT」にて、マインクラフトでのスタジアム再現

「世界で最も売れているゲーム」マインクラフトは、被災地の子どもたちに翼を与えるか。岩手・釜石からの最新報告 | BUSINESS INSIDER JAPAN,Minecraftカップ2019 全国大会| Minecraftcup より筆者作成)

まとめ

前出、釜石ワークショップに登壇した野田武則釜石市長は、BUSINESS INSIDER JAPANの取材に次のように語っています。

いま私たちがやるべきは、ラグビーで活躍して「故郷に錦を飾る」子どもになるのを願ったり、プログラミング教育で子どもたちが将来稼げる大人になって世界に羽ばたき、いつか釜石に帰ってきてくれる日を願ったりと、大それた期待を寄せることではない。

ラグビーもスタジアムも、プログラミング教育も、自分で考え、自分から動いて生きていくための健康な身体や論理的な思考力を身につけてもらうために、私たち釜石の大人が子どもたちに与えられる最大限のことなのであって、それ以上でも以下でもない。

(中略)私たちの街には、あげられるものがそうたくさんあるわけではないから ——。

(引用元:「世界で最も売れているゲーム」マインクラフトは、被災地の子どもたちに翼を与えるか。岩手・釜石からの最新報告 | BUSINESS INSIDER JAPAN

保護者であったり地域の大人であったりする私たちは、新しい教育の取り組みに気をもんだり不安になったり、子供たちがどんなことを学び、どんな成果を持ち帰るのだろうと推し量ったりしてしまいます。しかし教育とは、野田市長が言うように「生きるために大人が子供たちにできる最大限の贈り物」にすぎないのかもしれません。

参考

小学校を中心としたプログラミング教育ポータル|未来の学びコンソーシアム

イベントレポート(プログラミング教育)|EdTechZine

この記事をかいた人

菊池とおこ

北海道大学文学部行動科学科卒。行政系広告代理店、医薬系広告代理店、地方自治体の結婚支援事業担当などを経て独立、ライターに。女性のライフイベントと生き方、働き方、ジェンダー教育などが主な関心分野。大学院進学を視野に入れて地元大学のゼミ(ジェンダー・スタディ)に参加中。趣味は音楽、中学より本格的に合唱を始め、現在も合唱団に所属。ネコのおかあさん。子供と接する時は、自由人の叔父ポジション。