体罰とは?しつけの境目は?体罰の実例や親の体罰禁止法制化について ( 3 )

学校での体罰禁止が先行

一方、日本でも学校での体罰禁止は早くに法制化されています。1947年に制定された学校教育法第11条で、教員は「学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。但(ただ)し、体罰を加えることはできない」と定められいます。しかし、実際には、日本では精神論・根性論が根強く、学校内でも体罰が許容されてきました。

学校での体罰禁止が周知されるようになるには、前述の大阪市桜宮高校の体罰事件まで待たねばなりませんでした。2013年に政府が体罰の禁止徹底の通知を出した際には、体罰を禁止した学校教育法の制定からすでに60年以上が経過していました。

参考

学校教育法|文部科学省

体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)|文部科学省

改正児童虐待防止法で家庭の体罰禁止を法制化

日本政府は、国連子どもの権利委員会より、軽度のものを含むあらゆる状況での体罰の全面禁止を法律で明記するよう何度も勧告を受けていました。しかし、軽度の体罰をしつけの一環とする世論と、家庭内の問題を法律で制限することへの抵抗感が根強く、家庭での体罰禁止法制化はなかなか進みませんでした。

流れを一気に変えたのが、冒頭の心愛ちゃんの痛ましい事件です。家庭での体罰禁止法制化を求める声が強まり、世間でもその必要性が広く認識されるようになりました。それにより、2019年6月、親による体罰禁止を盛り込んだ改正児童虐待防止法と改正児童福祉法がようやく成立しました。

一方、民法で認められている子供の懲戒権に関しては結論が先延ばしされました。懲戒権は「子供を罰する権利」ともいえ、暴言や脅しといった体罰によらない懲罰は許容される余地が残されています。

まとめ

近年、「しつけ」と称した体罰や虐待で、命を落とす子供のニュースをしばしば目にします。その裏には、何百倍もの紙面をにぎわすには至らない体罰・虐待事件があることでしょう。体罰禁止が法制化された現在、ようやく私たちは体罰根絶へのスタートラインに立ったと言えます。「体罰はしつけではない」と広く認識され、理不尽な体罰や虐待で命を落とす子供を再び出さない社会にしていきましょう。

 参考

学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例|文部科学省
子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書|セーブ・ザ・チルドレン
子どもすこやかサポートネット トップページ|子どもすこやかサポートネット
すべての子どものすこやかな成長のために|子どもすこやかサポートネット
大阪の市立高男子生徒が自殺 部活顧問、体罰か|日本経済新聞
受験控えた小6長男刺殺、父に懲役13年「独善的行為」|朝日新聞
中学受験、激しくなった父の暴力 長男を包丁で刺すまで|朝日新聞
体罰、育たぬ共感性 自律妨げ「キレやすくなることも」|朝日新聞
Physical Punishment and Mental Disorders: Results From a Nationally Representative US Sample | AAP News & Journals Gateway
「体罰で子供しつける」が許されない納得の理由|東洋経済
体罰の5つの副作用: 体罰の定義「体罰の心理学」反対するなら根拠を持とう|Yahooニュース

この記事をかいた人

Sachiko

海外在住20余年、子育て・教育ライター。明治大学政治経済学部卒業。中国へ2年間留学。中国北京の日系広告会社で営業マネージャー。 結婚・出産後、北京で専業主婦。夫の転勤に同伴したフィジーで、アジアの女性のためのソーシャルグループ代表を務め、文化交流イベントを企画運営。2018年より、インド・デリー在住。ライターとして活動を始める。中国語HSK6級。TOEIC945点。中国生まれ、フィジー育ち、デリーで思春期を迎えた1人息子の母。 中国時代から共に過ごす老犬の介護中。