体罰とは?しつけの境目は?体罰の実例や親の体罰禁止法制化について ( 2 )

体罰が子供に与える影響

身体的ダメージを受ける

2019年7月、小学6年生の長男を刺殺した罪で、名古屋市の父親が懲役13年の刑を言い渡されました。父親は自らも通った県内有数の名門私立中学校に息子を合格させるべく、受験勉強の指導をしていました。本来父親が望んでいたのは、子供の安定した生活と幸せな将来だったはずです。しかし、父親の指導は次第にエスカレートしました。息子が反抗的な態度を見せると、最初は怒鳴ったり叩いたりしていました。ある日、カッターナイフをちらつかせると息子が素直に言うことを聞いたため、それ以来たびたびカッターナイフを持ち出すようになり、ペティナイフ、包丁へとエスカレートしました。

この事件は特殊なケースではなく、体罰の特性をよく表しています。体罰は即効性があるため、いったん体罰を始めると、親は子供に言うことを聞かせる手段として体罰に頼るようになります。最初は軽度の体罰を用いますが、軽度の体罰の効果が薄れてくると次第により「効果的」な体罰へとエスカレートしていきます。その結果、「子供のため」だったはずの体罰が、取り返しのつかない結果を生むことになります。

自主性を喪失する

体罰を用いると、子供が素直に言うことを聞くのはなぜでしょうか? 当然、痛い思い、怖い思いをしたくないからです。脳が危険を察知し、条件反射的に回避行動をとっているにすぎません。いわば、動物的な本能に基づいた行動で、そこには人間らしい思考や意思は存在しません。

子供にとってみれば、親に言われたことだけをしていれば体罰からは逃れられます。子供は我が身を守るため、自分の気持ちを押し殺し、思考を停止させ、親の言いなりになります。したがって、体罰による子育てでは、子供の自立に欠かせない自主性や積極性を育てることはできません。

問題解決の手段として暴力を振るうようになる

子供の手本となる大人が体罰を行うと、大人の思いとは裏腹に、問題解決の手段として暴力を正当化することになります。前述のセーブ・ザ・チルドレンの調査では、「必要に応じて」「他に手段がないと思った時」体罰をすべきと答えた回答者が多くいました。親や先生のそのような態度から、子供は「必要に応じて」「他に手段がないと思った時」自分自身も暴力をふるっても構わないと学習します。

精神疾患にかかりやすくなる

体罰は身体のみならず心も傷つけます。子供は親に本能的に愛着を感じ、全幅の信頼を寄せます。親に対する安心感が、社会で人間関係を築く上での基礎となります。しかし、体罰が繰り返され親に対する信頼感が醸成されないと、人間不信になってしまい、健全な対人関係が築けません。また、恐怖心で押さえつけられた感情が時に暴発し、コントロールがきかなくなります。

体罰の影響は、成人してからも続きます。アメリカの研究によると、子供のころに体罰を受けて育った人は、受けなかった人に比べ、成人してからうつ病や不安障害、アルコール・薬物依存、パーソナリティ障害にかかる人の割合が高いことが分かっています。

体罰禁止法制化までの道のり

体罰の法的禁止が体罰減少に有効

子供への体罰を全面的に禁止する法律を設けている国は、全世界で54ヶ国に上ります。世界に先んじて体罰禁止の法制化に踏み切った北欧の例から、体罰の法的禁止と啓発活動が、体罰減少に非常に有効であることが分かっています。

スウェーデンでは、1958年に学校での体罰禁止、1979年に家庭での体罰禁止を法制化し、大々的な啓発キャンペーンを行いました。1960年代にはほとんどの子供が体罰を受けていましたが、体罰禁止法制化40年後の現在は1割に減りました。体罰に対する肯定的な態度も、1960年代は日本と同様高い水準にありましたが、現在は1割以下まで減っています。

(参照元:子どもに対する暴力のない社会をめざして 体罰を廃止したスウェーデン35年のあゆみ|セーブ・ザ・チルドレン、P17)

参考

「日本では親の7割が体罰」…禁止を法制化したスウェーデンに学ぶ|東京新聞

子どもに対する暴力のない社会をめざして 体罰を廃止したスウェーデン35年のあゆみ|セーブ・ザ・チルドレン