教育基本法の中身を解説。法律の趣旨・旧法との比較と具体的な内容について - cocoiro(ココイロ) - Page 2

教育基本法を読んでみよう

教育基本法は18条に附則のある、比較的短い法律です。ここでは条文を読みつつ内容をご紹介します。

第1章 教育基本法の目的及び理念

第1条 教育の目的

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

日本の教育行政は民主国家の構成員として国民を育成するためにあることが明記されています。「人格の完成」「心身ともに健康」といった内容から、学業の成績だけでなく全人的な教育が行われる必要があることが分かります。

第2条 教育の目標

教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。

二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。

五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

学問の自由がここに明記されています。また、旧法にはなかった「道徳心」という概念が現行法には盛り込まれました。

第3条 生涯学習の理念

旧法制定時にはまだ一般的でなかった「生涯学習」の概念が盛り込まれました。教育とは学校教育だけではなく、生涯にわたって教育を受けられる環境を提供することが行政の責務とされています。

国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

第4条 教育の機会均等

教育の場において差別が行われないことを規定しています。自治体などが家庭の経済状況に応じて給食費や学用品を補助するのはこちらが法的な根拠となっています。

すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

第2章 教育の実施に関する基本

第5条 義務教育

教育基本法では義務教育について定めていますが、その年限は指定していません。年限は「学校教育法」により、現在は9年間と定められています。また、現在では憲法における無償の義務教育とは、この中の「授業料を徴収しない」ということだとされています。

国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。

2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。

3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

第6条 学校教育

教育の目的を達成するために、学校を設置できる主体が制限されています。法人や学校の種類など、具体的な取り決めについては「学校教育法」がその役割を担っています。

法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

第7条 大学

ここからの条文は学校教育について個別に定められています。大学についてはその専門性や自主性が尊重されるべきことが規定されています。

大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

第8条 私立学校

私立学校は行政によって設置された学校ではありませんが、その公的な役割が認められています。

私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

第9条 教員

教員については、教育に携わる主体としての自覚や責務が規定されています。一方、待遇の適正化などは行政側に求められているものです。

法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

第10条 家庭教育

改正後の法律では、教育の主体として家庭が明記されました。「国が家庭内のことに口を出すべきではないのではないか」という疑問もある一方で、家庭と教育行政の連携を重視するために必要だというのが国としての姿勢となっています。

父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

(引用元:教育基本法|電子政府の総合窓口e-Gov

参考

「教育基本法」改正で家庭には何が求められるの? 文部科学省に聞く【3】|ベネッセ教育情報サイト