高等教育とは?教育機関の種類や役割、今後の課題について解説します - cocoiro(ココイロ) - Page 2

日本の高等教育が抱える課題

ここまで、日本の高等教育に関する基本情報を紹介してきました。ここからは日本の高等教育が抱えている課題について考察します。

18歳人口の急激な減少

日本の高等教育が抱える課題に、18歳人口の減少が挙げられます。

18歳人口の増加のピークは1992年の205万人。その後減少を続け、2018年は118万人でした。2040年には88万人まで減少すると予測されています。大学進学者数も、2017年の63万人をピークに減少に転じることが予想されています。

一方、高等教育機関全体の学校数は減少傾向にありますが、大学に関してはここ15年ほどで 100校近く増加しています。

今後は18歳人口の減少とそれに伴う大学進学者数の減少とともに、各大学を適正な規模に縮小することや、複数の大学を統合することなどが検討されています。

参考

2040年を見据えた高等教育の課題と方向性について|文部科学省

グローバルな競争力の低下

グローバル化の進展に伴い、高等教育機関には世界を視野に入れた戦略が求められるようになりました。特に大学では、各国の優秀な学生の奪い合いが起こっています。

そんな中、日本の大学の研究力は、質・量ともに競争力が低下していると指摘されています。最近では中国や韓国、シンガポールなど、アジア諸国の大学の研究・教育レベルの向上が顕著で、日本の大学のアジアにおける優位性も失われつつあります。ここ数年の主要な世界大学ランキングでも日本の大学はアジア各国の大学に遅れを取りつつあります。

多くの優秀な留学生の受け入れに継続的に成功すれば、彼彼女らが日本の企業に就職するなどしてそのままとどまり、日本社会に大きな恩恵をもたらしてくれることは間違いありません。逆に、人口減少が加速していく中で、海外からの質の高い学生の確保に失敗すれば、社会的にも経済的にも減速していくことでしょう。

根強く残る男女格差

高等教育を受ける女性の割合は長期的に見ると上昇傾向にあります。しかしながら、大学における男女比率は依然として女性が男性を下回っており、男女格差がなくなったわけではありません。

2016年度の大学(学部)・大学院(修士課程)・大学院(博士課程)の女子学生の割合は下記の通りです。

大学・大学院における女子学生の割合

大学(学部) 44.5%
大学院(修士課程) 30.8%
大学院(博士課程) 33.0%

男女共同参画白書(概要版) 平成29年版|内閣府男女共同参画局 より筆者作成)

大学、大学院ともに女子学生が男子学生よりも少ないことが分かります。さらに、上で参照した男女共同参画白書 平成29年版によると、大学等の高等教育機関の研究者に占める女性の割合はわずか15.3%と、他国に比べて極めて低い数字となっています。

2018年には、女子受験生が不当に点数を低くされるという医学部不正入試問題が注目を集めました。構造的な女性差別が根強く残っていることが明るみになったのです。高等教育における男女格差の解消のために解決すべき課題はいまだに多く存在します。

また、子供の教育に対する親の意識が高等教育における男女格差の背景にあるとの指摘もあります。NHK放送文化研究所は、2013年に実施した「日本人の意識調査」の中で、中学生以上の男女の子供がいた場合、「どの教育段階まで進ませるか」について質問しています。その結果、子供が男の子の場合、大学、大学院まで行かせたいと答えた人が全体の77.0%であったのに対して女の子の場合は60.4%と、16ポイント以上の差がつきました。当然ながら、性別の違いによって教育を受ける機会が奪われることがあってはいけませんから、男女格差を温存する構造の解消とは別に、保護者または社会全体におけるジェンダー意識の啓発が今後も必要だと言えるでしょう。

参考

第9回「日本人の意識」調査(2013) 結果の概要|NHK

女子の高等教育を比較 期待の低さ、理由は親にも?|日経DUAL

高等教育の費用負担と機会の均等

高等教育は、国際人権規約において次のように規定されています。

高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。

(引用元:経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)第十三条|外務省

このように、高等教育における機会の均等は、万人が持っている普遍的な権利とされています。つまり、経済的な事情で高等教育が受けられないというのは、この理念に背くこととなるわけです。大学などへの進学に必要とされる費用の大きさを考えれば、日本において高等教育の機会の均等が十分に実現されていると言うことはできないでしょう。

2020年度からは高等教育の無償化が実施されますが、所得制限があるなど、完全な無償化ではありません。高等教育における機会の均等という理念の実現にはまだ時間がかかりそうです。