日本の性教育の歴史
日本の性教育は、現在世界に遅れを取っているとされていますが、そこに至るまでにも変化がありました。
1972年に日本性教育協会が設立され、性行為に関する諸問題を科学的に解明しようとする学問である性科学を主軸とした性教育が始まります。1981年にはアメリカではじめてのエイズの症例が報告され、1980年代はエイズ・パニックと言われる現象が起きます。これを機に、若者に正しい知識を伝えることを目的として、性教育が盛んになりました。
1992年は学習指導要領が改定された年でもあり、小学校段階から性教育を行うようになり、「性教育元年」とも呼ばれました。しかし、2000年代に「性教育バッシング」が起こり、性教育は一気に下火になります。
きっかけとなったのは、都立七生養護学校で行われた性教育の授業を、2003年に都議がいきすぎた性教育だとして指摘したことです。その結果、関係教育者や教師は処分を受けます。しかし、2013年に元校長が処分の不当性を主張して起こした裁判で最終的な勝訴が決まり、東京都と都議3名に対して賠償責任を言い渡しています。
2004年には、東京都教育委員会が「性教育の手引き」を改訂。そこには、「コンドームの付け方」や「コンドームの正しい使い方」という具体的な方法には触れられず、「性交」という言葉の記載もありません。しかし、2019年に「性教育の手引き」が改訂され、性情報の氾濫や性感染症への対応、性同一性障害等に関する正しい理解等が盛り込まれた内容となりました。
参考
東京都教委の性教育指導 「バッシング」はもうご免だ|毎日新聞
教育委員会が医師会と連携したモデル授業
「性教育の手引き」改定前に行われた、東京都教育委員会と医師会が連携したモデル授業をご紹介します。
2019年の1月に都立中高一貫校で中学3年生に向けて行われた授業で、産婦人科医の長岡美樹さんが講師として生徒たちの前に立ちました。授業の内容は、どうして赤ちゃんが生まれるかや子孫を残す仕組みについて話をします。「セックスは怖い」「セックスをするな」という一方的な教育ではなく、セックスをする仕組みや意味をきちんと理解できるように伝えています。
また、避妊方法や性感染症についても触れられています。具体的には、梅毒やクラミジア、淋菌などの感染症の説明や、男子がコンドームをつけることは最低限のマナーという話、女性向けの避妊方法としてピルがあることなどを説明しました。
参考
“性教育のタブー“に踏み込んだ都立中学のモデル授業 15歳までに知りたい性のこと|HUFFPOST