教育困難校の問題とは
教育困難校の日常を見てみると、いわゆる「学級崩壊」に近いという印象を受けるでしょう。なぜ教育困難校という別の名称を付けられているのでしょうか。高校が最終学歴になる子供たちならではの問題があるようです。
中退率が高い
学校生活に興味関心が持てなくなり、去る者も少なくない。こうした退学者の人数は、このような教育困難校の一つの目安となる。退学者数を減らし、生徒を一人でも多く卒業に導くことが教員にとっての願いである。
教育困難校であるかどうかを見極める目安として中退率を使うのは効果的ではないか、という指摘です。上記では「学校生活に興味関心が持てない」ことが退学の理由として挙げられていますが、経済的な事情や妊娠などによって退学を余儀なくされる子供も少なくありません。
問題は、このような子供が一度退学をしてしまうと再出発が難しいということです。その場合、高校中退、すなわち中卒として生活していくことになり、職業選択の幅や生涯賃金に大きな差が出てしまいます。
就職・進学が不利
たとえ無事に卒業できたとしても、その後の進路で不利であるのは変わりません。高卒と4大卒の給与の差を考えると分かりやすいでしょう。また、工業や商業などの専門科で資格を取得して就職する子供と比較すると、同じ高卒であっても選べる進路や待遇などに差が出てしまいます。出身校に対するネガティブな印象が地域に広まっていれば、就職活動時も就職後もそのイメージによって不利益を被る可能性すらあり得ます。
また、進学を希望する子供にとっても教育困難校の環境は不利です。大学への指定校推薦枠がほとんどどない、もしくは持っていない高校も多く、自力で一般入試を目指すには学力が足りないといったジレンマがあります。特に授業が成立していないような状態では、教科書の範囲を終わらせることすら困難なこともあります。
教育困難校が生まれる背景
このような教育困難校はどうして生まれてしまうのでしょうか。いくつかの可能性が考えられています。
高校が多い都市部で学力による序列化が行われるため
1つは高校の数が多い都市部に生まれやすいという説です。高校の数が多い地域では、偏差値や内申点、入試の最低得点などで高校の序列化が行われます。「この高校は地域で○位」という評価が当然のように塾や中学校で行われるような地域もあります。
このような環境下では、学力下位とみなされた高校には毎年勉強が苦手な子供だけが進学していくことになります。全体としてはどうしても勉強に対する意欲が持ちづらく、それが生活態度に現れてしまうという考え方です。
家庭環境などの理由で落ちこぼれたまま進学してしまうため
どうして勉強ができないのか、勉強に対しての意欲が持てないのかという疑問に関しては、以下のような考察があります。
教育困難校に入学してくる生徒たちは、それまでの人生で何らかの事情(家庭内葛藤、経済的困窮、発達に関する課題など)を抱え、学習に集中できず、基礎学力の獲得が困難な状況あった可能性が高い
(引用元:教育困難校における卒業者と中途退学者の比較研究 : Q-Uから見えた傾向 | 茨城大学機関リポジトリ 300ページ)
つまり、本人の資質ややる気の問題だけでなく、環境によって勉強することが妨げられていた子供たちが多いという意見です。このような子供たちは勉強するということに対して動機付けやサポートを必要としています。しかし、進学先の高校が他の高校と同じように授業を進めていくのであれば、子供たちはサポートが得られずにさらに勉強に対する意欲を失っていってしまうことになります。