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教育困難校の現場での取り組み
根本的な解決が難しい教育困難校の問題ですが、今困っている子供たちをサポートするための取り組みが少しずつ広まっています。報告されている事例からご紹介します。
授業を改善する
教育困難校の現状を見ると、「授業以前の問題なのではないか」と感じてしまう人もいるでしょう。しかし、どうして教育困難校が生まれるのかということをていねいに見ていくと、「子供に対して適切な学習サポートがされていなかったから」という可能性が見えてきます。そのため、授業を子供に合わせた形で改善していくことは非常に重要だと考えられています。
教育困難校では、生徒の実態にあわせて教師が教材の自主編成をすることが、生徒を授業に参加させるのに必要な方法であるといえる(授業参加スキルC:生徒の主体性喚起—項目22)。その際、生徒の身近にあるものにこだわり、現実生活と切り結ぶような教材、話題のニュースなどを提示することが求められることがわかった。
(引用元:授業参加をつくり出すための教授スキルの研究 | 学校教育研究 pp.158-159)
教科書をそのまま教えるのではなく、教科書に沿った教材を教師が工夫して用意することが求められています。身近な話題を使うことにより、学校の勉強は自分にも関係のあることなのだと考えてもらう必要があるからです。
教育困難校の生徒は、基礎的な知識・理解が欠落しているため、思考が深まらない。そこで、教材の導入段階では、一定の知識を定着させる必要がある。
(引用元:授業参加をつくり出すための教授スキルの研究 | 学校教育研究 159ページ)
近年盛んなアクティブ・ラーニングなどでよく取り組まれている「自分で考えてみよう」という教え方にも注意が必要です。自分で考えるためには知識がある程度必要ですが、これまで学習サポートが不足していた子供にはそのような知識がないことがあるからです。どのような前提知識を持って授業に参加してもらう必要があるのか、教師は授業準備の段階で考えておく必要があります。
生徒を守るための生徒指導を行う
学校は授業をするだけでなく、生徒指導を行って子供の生活態度にも関わります。教育困難校の子供は、一見すると「だらしない」生活態度であることが少なくありません。身だしなみについても校則を守らない、髪の毛の色が派手、アクセサリーをたくさんつけるなど、問題視しようとすれば、できるところはたくさんあります。
しかし、これらのことについて子供ばかりを責めても何も解決しないという意見があります。
家に居場所がなくて、小中でも阻害されてきた子を、高校で厳しい頭髪指導をして、最終的に学校という場所から追い出すって?
じゃあ、彼らはどうなるの?
彼らは何も持っていないんだよ。
身一つで裸のまま、社会に放り出して、それでわれわれ教員はお役目を果たしましたって?
その子は生まれてきてよかったとか、オレの人生もなかなかだなーって一度も思えないまま、一生を終えるかもしれないんだよ。
(引用元:底辺校とは言わせない!子供の貧困に向き合う「槙尾高校」校長の叫び(黒川 祥子) 現代新書 | 講談社(3/5))
これは首都圏にある槙尾高校(仮名)の生徒指導原則です。教育底辺校に進学する子供は、それまでにしっかりと面倒を見てくれる大人を身近に持っていなかったのだという前提のもと生徒指導を行っています。ある種の親代わりとして生徒の話を聞いたり、たしなめたりしながら、「子供を社会から守る」という原則で教育を行っています。
まとめ
教育困難校という言葉からは、問題のある子供たちがいるというような印象を受けがちです。しかし、子供たちは子供たちで大人のサポートが不十分、またはないような環境で育つことを余儀なくされていることもしばしばです。社会制度の歪みの被害者であるとも言えます。大人として現状を知り、どのような対策ができるかを考えていくことが重要と言えるでしょう。
参考
モンキー高校と侮蔑される教育困難校の実態 学校・受験 | 東洋経済オンライン 経済ニュースの新基準
「教育困難校」が話題だったので、偏差値38の我が母校を振り返ってみた。 | オワコン
「教育困難校」におけるキャリア支援の現状と課題 | 教育社会学研究
CiNii Articles – 日本の論文をさがす | 国立情報学研究所
授業参加をつくり出すための教授スキルの研究 | 学校教育研究
底辺校とは言わせない!子供の貧困に向き合う「槙尾高校」校長の叫び(黒川 祥子) 現代新書 | 講談社(1/5)