「グレーゾーン」の子供たち
「グレーゾーン」とは?
発達障害や学習障害の子どもたちをサポートするLITALICOジュニアのホームページに、グレーゾーンの子供についての説明があります。
グレーゾーンとは発達障害の特性があるが、診断基準は満たさない状態を指す通称です。発達障害かどうかは数値のような明確な基準がないので、はっきりと見極めづらい状態にある人もいるのです。
(引用元:発達障害とは 発達障害のグレーゾーン|LITALICOジュニア)
このように発達障害の基準を満たしていないため、周囲との明らかな差が見られない子供がいます。グレーゾーンの子供たちの具体例として、以下のような場合があります。
例えば、頭はよいのに空気を読むのが苦手、アイディアやひらめきは豊かなのに整理整頓が苦手、文字や数字は得意なのに運動が極端に苦手などです。なかでも「その時、その場、その状況に合わせていく力=適応力」につまずきある子が多いです。
(引用元:【発達障害】グレーゾーンの子供について作業療法士が解説。診断のエリア分け、特徴や相談先まで|はぐくむ)
はっきりとした数値で発達障害の診断を得られないグレーゾーンの子供は、どのようにして社会で過ごすのでしょうか。
「グレーゾーン」の子供の生きづらさ
明らかな知的遅れがないため、周囲の理解を得ることができません。しかし、適応力につまづきがあるため、周囲から「不器用」「空気を読めない」「問題児」というレッテルを貼られてしまうことが多いと言われます。そのためグレーゾーンの子供は、自分のどこが問題なのかに気づくことができず、常に苦手意識を抱えて苦労しています。
グレーゾーンの子供だけでなく、その保護者にも困難が付きまといます。発達障害ではないのにトラブルを起こす子供の親として、周囲から「親のしつけ方(育て方)が悪い」「親の愛情不足」と評価され、苦境に立たされ孤立してしまいます。
そのため、親子ともども悩みを共有できる相手を得ることが難しく、徐々に世間に馴染めずに精神的に追い込まれてしまいます。
「グレーゾーン」の子供への接し方
では、そんなグレーゾーンの子供に、親としてどのように接したらいいのでしょうか。
3人の発達障害とグレーゾーンのお子さんを育て、『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法』(ポプラ社)の著者である大場美鈴さんのお話を抜粋しました。
「話を聞かない」と思われがちな視覚優位タイプの子は、「見えるように」するだけで、注意を向けることができるし、指示なども受け入れやすくなります。100回言っても聞かないことも、1回絵を描くだけで伝わることもあります。
(引用元:「グレーゾーンの子」は接し方でこうも変わる(3/5) 「発達障害かも?」と悩む親たちに伝えたい|東洋経済ONLINE)
ただ、紙に書くだけではなく、子供を傷つけない文章の書き方については以下のポイントに配慮することが必要だと言います。
【子どもに伝わる文章術のコツ】
・「◯◯すれば、□□できる」という形の、肯定的な表現で具体的に書く
・合理的で納得のいく説明や、メリット・デメリットを明確にする
・穏やかで優しく、身近なわかりやすい言葉を使う
・イラストや図、ユーモアのある表現を入れる
・抽象的な表現ではなく、具体的な「行動」や「台詞」で例を示す
・相手の目線から見て、共感的な立場に立つ
(引用元:「グレーゾーンの子」は接し方でこうも変わる(4/5) 「発達障害かも?」と悩む親たちに伝えたい|東洋経済ONLINE)
また、頑張ってもできない場合の対策としては「試行錯誤方式」を提案しています。
「頑張っているのにできない」姿を見ると、親としてはなんとかしてあげたいという気持ちになります。そんなときには、「ものの工夫」をして、その子に合った道具を選んだり、改造して使いやすくすれば、苦手な作業を補って取り組めたり、最後まで集中しやすくなります。
(引用元:「グレーゾーンの子」は接し方でこうも変わる(5/5) 「発達障害かも?」と悩む親たちに伝えたい|東洋経済ONLINE)
グレーゾーンの子供たちは、困難のストレスを分かりやすくすることで、落ち着いて問題解決をすることができるようになります。
ご紹介した付き合い方は、あくまでも大場美鈴さんの例です。グレーゾーンの子供に一様にこの方法が当てはまるというわけではなく、子供それぞれに合った方法があります。大場美鈴さんの姿勢として見習いたいのは、試行錯誤をして寄り添っていく姿ではないでしょうか。
まとめ/知ることで受け入れることができる
発達障害児を持つ親は「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」という過程を経て、子供が普通ではないという現実を受け入れていくと、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)の著者である松永正訓医師は言います。その後、発達障害児に対して「受容」「容認」「新しい価値観の構築」「承認」「障害を生きる」という過程を経て、本格的に障害児を育てることを受け入れることができると松永医師は考えます。
発達障害の子供にとって大切なことは、常に脅えていなければならない苦手意識から解放されて適切な教育を受けることではないでしょうか。そのためには、まず親が、子供が発達障害であるのかどうかを「調べて知る」ことが大前提になります。
済生会守山市民病院の小児科医長である上羽 智子さんは、発達障害児の親が1人で抱え込まないことの大切さを話しており、相談することで救われた親の意見を次のように挙げています。
医療機関で発達障害だと診断され、自分の育て方の問題ではなかったのだと、逆にほっとしたという親御さんもいます。発達障害の子どもが通える療育教室で同じ境遇の母親と話せ、元気づけられたという方もいました。
(引用元:発達障害の子ども「発達でこぼこ」との接し方|社会福祉法人恩賜財団済生会)
ひょっとしてうちの子は発達障害かもしれないという不安がある場合は、家庭、教育現場、医療、行政のさまざまな機関に相談してみましょう。
参考
発達障害とは|LITALICOジュニア
発達性協調運動障害とは?|LITALICO発達ナビ
「手先が不器用」実は発達障害 認知度低くいじめ原因にも|京都新聞
発達障害とは 発達障害かなと思ったら?相談・診断・検査の方法は?|LITALICOジュニア
発達障害の子ども「発達でこぼこ」との接し方|社会福祉法人恩賜財団済生会
発達障害とは 発達障害のグレーゾーン|LITALICOジュニア
【発達障害】グレーゾーンの子供について作業療法士が解説。診断のエリア分け、特徴や相談先まで|はぐくむ
「グレーゾーンの子」は接し方でこうも変わる 「発達障害かも?」と悩む親たちに伝えたい|東洋経済ONLINE
“期待した子の死”に悩む障害児の親の半生|PRESIDENT Online
発達障害とは|発達協会