ネグレクトの事例
ここからは具体的なネグレクトの事例についてご紹介します。
身体的ネグレクト:食事を与えない
子供の発育に大きな影響がある食事をきちんと与えないという「ネグレクト」が存在します。これは「罰として食事を抜く」というようなことだけでなく、栄養の管理などをしないことも含まれます。
夫に借金があるのがわかり、息子が6ヶ月になった頃から、泣き声が耳につき、だんだんうるさくなりました。息子はいい子なのに、私はミルクをあげるのがおっくうで、お腹がすいて泣くのを放っておくのです。息子は泣き疲れ、指をしゃぶりながら眠ってしまいます。申し訳なさに涙が出るのですが、また、同じ事をしてしまう二重人格の私がいました。
(引用元:子ども虐待とは 子ども虐待について|オレンジリボン運動 – 子ども虐待防止)
上記の例のように小さな子供だけでなく、ある程度成長した子供に対してもネグレクトをする親が存在します。例えば毎食、食べるためのお金を子供に与えるだけという家庭があるとしましょう。十分な金額を与えていても、子供だけはカップラーメンやお菓子など、自分で用意できるものしか食べることができません。その結果栄養が偏って発育に影響が出ることが考えられます。
参考
虐待を受けた子どもが回復するとき~食事~|こころとくらしの心理学研究所
母のネグレクトと兄からの性的虐待…「愛着障害」になった女の一生(石井 光太)|現代ビジネス|講談社(1/4)
身体的ネグレクト:不潔な環境を改善しない
片付けの得意、不得意には個人差がありますが、「ゴミが散らばっていて足の踏み場がない」「生ゴミが長期間放置されている」「虫が発生している」などの不潔な環境に子供を置くこともネグレクトです。
母親は発達障害だったのか、鬱だったのかはわからないが、ゴミ屋敷のせいで、ゴキブリが常に出た。母親はゴキブリが出ても退治しない。洗濯物がたまっていたが、つねに洗濯物の山だった。
(引用元:ゴミ屋敷で育ち、母親によるネグレクトを受ける。心中相手を探しているころ夫と知り合い結婚するが、ただ、優しい人たちを独占したいと浮気を続ける〜朋子の場合【生きづらさを感じる人々23】|BLOGOS)
生活環境以外で言えば、洋服を洗わない、着替えをさせないこともネグレクトに含まれます。極端に汚れるまで室内を片付けられない場合は、親にも何らかの精神的な不調がある可能性が考えられます。
参考
片付けられないのはなぜ…セルフネグレクトを防ぐ 医療・健康Tips|毎日新聞「医療プレミア」
医療的ネグレクト:病院に連れて行かない
「風邪かもしれないので様子を見よう」などと、一般的な様子見をして病院に行かないのではなく、明らかに高熱があったり、身体症状が出ていたりするのに受診させないことをネグレクトと考えます。厚生労働省は、以下の5つを満たしたときに「医療ネグレクト」の状態にあると定義しています。
- 子どもが医療行為を必要等する状態にある
- その医療行為をしない場合、子どもの生命・身体・精神に重大な被害が生じる可能性が高い(重大な被害とは、死亡、身体的後遺症、自傷、他害を意味する)
- その医療行為の有効性と成功率の高さがその時点の医療水準で認められている
- (該当する場合)子どもの状態に対して、保護者が要望する治療方法・対処方法の有効性が保障されていない
- 通常であれば理解できる方法と内容で子どもの状態と医療行為について保護者に説明がされている。
(引用元:医療ネグレクトの定義|厚生労働省)
虫歯の治療をしないのもネグレクトの特徴です。治療されないままで、虫歯のある子供は、ネグレクトされている可能性が高いと考えられています。
また、上記の④に該当する事例として以下が報告されています。
2010年アトピー性疾患が重症化した7か月の乳児が感染症で死亡するケースがありました。この事例では、両親は子どもを医療機関にはつれていかず、ある宗教団体に連れて行き「手かざし」や「浄霊」を続けていたといいます。
(引用元:ネグレクト(こどもに適切な医療を与えない)について2(児童虐待防止連絡会)|社会福祉法人 千代田町社会福祉協議会)
標準医療や、代替医療に対する考え方は各家庭でさまざまですが、子供が苦しんでいるのにもかかわらず、医師などの専門家の意見に従わない場合、最悪の結果をもたらしてしまうこともあります。
参考
ネグレクト(不適切な養育)について(児童虐待防止連絡会)|社会福祉法人 千代田町社会福祉協議会