チャータースクールとは?アメリカの状況と日本の取り組みを紹介 - cocoiro(ココイロ) - Page 2

チャータースクール誕生と現在

危機的状況にあった教育格差

日本の学校はすべて、教育基本法に基づき文部科学省の管轄下にあります。それに対しアメリカでは、公教育は、市などの行政機関から独立した「学校区」の責任とされています。したがって、義務教育の年限やカリキュラム、学校の運営に関する規定は、学区ごとに異なります。

学校の運営は、伝統的に「ローカル・コントロール」の理念に基づき、学校区が予算を作成し学区内の地方税を財源としています。それにより、経済的に豊かな人が多い一部の地域のみに教育資金が集中し、その他の地域では教育の質を保つのに必要な資金が慢性的に不足する事態が発生していました。

チャータースクールの誕生

1983年に『危機に立つ国家(A Nation at Risk)』と題した連邦報告書が発表されました。アメリカの教育レベルの低下が危機的な状況にあることが明らかになり、アメリカ中が衝撃を受けました。連邦報告書を機に、アメリカ全土で教育改革運動が起こりました。連邦政府は地方教育機関に改革を迫り、関与を深めていきました。

1990年代には、市場原理を教育の現場にも活かす「学校選択」の機運が高まりました。保護者が「消費者」の視点で、多様な教育サービスの中から子供に最適な教育を選択する需要が盛り上がり、チャータースクールが誕生しました。

論文『アメリカの教育改革とガバナンス』小池治|横浜国際社会科学研究 16巻 1号2011/07

 

チャータースクールの現状

チャータースクールの学校数およびチャータースクールへ通う生徒数は、年々増え続けています。2015~2016年時点で、チャータースクールは6,855校あり、全米の公立学校数の7%を占めます。チャータースクールへ通う生徒数は280万人以上で、全米の公立学校生徒数の6%にあたります。

特に、オバマ政権下での伸びは大きく、オバマ氏が大統領に就任した2009~2010年と退任間近の2015~16年を比較すると、チャータースクールへ通う生徒数は1.8倍に増えています。

◆全米のチャータースクール数(2000~2016年、単位:校数)

◆全米のチャータースクールへ通う児童数(2000~2016年、単位:千人)

(参照元:http://www.in-perspective.org/pages/introduction#sub1)Key Facts about Charter Schools | Charter Schools in Perspective

チャータースクールの評価

チャータースクールは保護者を中心に支持を集め、生徒数はその創設以来一貫して増え続けています。しかし、チャータースクールを警戒する声はいまだに根強く、一部の州ではチャータースクールの設立が認められていません。

肯定的評価

• さまざまなカリキュラムの学校が供給されることによって、保護者の選択の範囲が広がり、多様な教育ニーズにきめ細かく応えることができます。
• 伝統的な公立学校とチャータースクールの間に競争が起きるため、双方において教育内容の向上が図られます。

批判や問題点

• チャータースクールの審査・評価が徹底されていないため、学力向上への寄与が明確ではない点を指摘されています。
• チャータースクールが目標達成できずに廃校となった場合、その学校へ通う子供の教育が中断を余儀なくされます。
• チャータースクールの設置により生徒が分散すると、公教育システムが崩壊し、学区内の教育の質が全体的に下がる可能性を懸念されています。