ギフテッド教育の意義
ギフテッドが抱える問題
生まれつき賢ければ何の苦労もないと思われがちのギフテッドですが、その特別な能力や感覚のために生じる問題もあります。
過度激動(OE)による影響
ギフテッドの示す能力は、ギフテッドの高度に発達した感覚神経がもたらすものだと考えられています。神経が極度に鋭敏なため、刺激に対して並みならぬ反応を示すことがあります。この反応は、過度激動(Overexcitabilities、またはOE)と呼ばれます。過度激動には5タイプあります。
- 精神運動性OE:興奮しやすく落ち着きがない。寝られない。早口。
- 感覚性OE:視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感が過敏で神経質。
- 知性OE:思考にふけり、疑問に対する答えを探求する。
- 想像性OE:最悪の事態を想像して必要以上に怖がったり、現実の友達ではなく想像上の友達と遊んだりする。
- 感情性OE:感情の種類と幅が大きく、大げさな反応を示す。
参考
(参照元:Dabrowski’s Overexcitabilities in Gifted Children | Verywell Family)
孤立やうつ
ギフテッドの子供は、普通の子供とは違う過激な反応により、周囲からは「少し変な子」と見られる傾向があります。他人に理解してもらえないため孤立感を感じやすく、早期に手を打たなければうつ状態になることがあります。
高知能なのに成績は振るわない
ギフテッドの子供は、知能が高いにも関わらず学校の成績が振るわないことがあります。学校の授業に興味が持てず、授業をさぼったり宿題を出さなかったりするためです。また、過度激動により学校で問題児扱いされ、学校生活になじめないなどの問題もあります。
完璧主義と自己肯定感の低さ
ギフテッドの多くは完璧主義です。子供でも知能は大人並みで、自分の理想どおりに物事を運ぼうとしますが、身体は発達途上のためうまくいかないこともあります。完璧にできない自分を責め、「自分はダメな人間だ」と思ってしまうことがあります。
成長のばらつき
ギフテッドの子供は、特定の分野では抜群の才能を示すにも関わらず、ほかの分野ではほかの子供より発達が遅いということがよく見られます。得意分野と不得意分野がはっきりと分かれ、不得意なことはいつまでもできないこともあります。
ギフテッドは早期教育ではなく学習支援
ギフテッドの子供は、ギフテッドであるがゆえにさまざまな問題を抱えています。学校の通常学級では、ギフテッドの抱える個々の問題に対応しきれず、学校から浮きこぼれてしまったり、精神的に追いやられてしまったりすることがあります。それゆえ、ギフテッドには個々の状態に合わせた特別な支援が必要となるのです。
アメリカでは、教育の機会はすべての子供に平等に与えられるべきだとの理念に基づき、ギフテッドの学習支援に公的資金が使われています。
【まとめ】日本への課題
アメリカの「機会平等」主義に対し、日本は「能力平等」主義と言われ、生まれつき特別な才能を持つギフテッドのための公的支援はなかなか広まりません。しかし、ギフテッドは、個別サポートが得られなければさまざまな問題を抱える恐れがあります。また、環境未整備のため才能を伸ばすことができなければ、日本社会としても有能な人材育成の機会をみすみす逃すことになります。
近年、日本でもギフテッド教育を求める声が広まり、全国で初めて渋谷区が、2017年9月よりギフテッド教育プログラムを導入しています。まだ全国的な動きにつながる兆しはありませんが、これを機にギフテッド教育への理解が広まることを期待します。
参考リンク
論文『アメリカのギフテッド教育事情』ポーター倫子(ワシントン州立大学人間発達学科専任教員)|Child Research Net
ギフテッド|幼児ぽーたるさいと
ギフティッド教育|日本ギフティッド協会
渋谷区で動き出したギフテッド教育、協働する東大先端研と区長の思い|まいなびニュース