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ノーベル化学賞を受賞した日本人とその研究

 

2018年のノーベル物理学賞では残念ながら日本人研究者の受賞は叶いませんでしたが、ノーベル賞が始まってからこれまでに9人の日本人研究者がノーベル物理学賞を受賞しています。

1949年受賞・湯川秀樹氏

湯川秀樹氏は、日本で初めてノーベル物理学賞を受賞した研究者です。1935年に発表した論文「素粒子の相互作用について」において、現在の理科の授業では当たり前のように学習する、原子核内部における「中間子」の存在を論理的に予言しました。後の1947年に、イギリスの研究者セシル・パウエル博士らにより湯川氏が提唱していた中間子の存在が実験的に発見され、1949年にノーベル賞の受賞に至りました。

1965年受賞・朝永振一郎氏

朝永振一郎博士は、量子電気力学分野における研究の貢献が認められノーベル物理学賞を受賞しました。

量子力学とは、これ以上分割できないほどミクロな粒子を扱う理論で、電子もその一種です。当時、電子を計測しようとすると、実験で観測される値と量子力学の理論上で計算される値とに矛盾が生じてしまっていました。この矛盾を解いたのが、朝永氏が提唱した「くりこみ理論」です。現在にも続く、量子力学の基礎的な理論の一つであり、その後の量子力学の発展に欠かせない存在となりました。

1973年受賞・江崎玲於奈氏

江崎玲於奈氏は、「半導体におけるトンネル現象の実験的発見」によりノーベル物理学賞を受賞しました。

通常の電気回路では電圧を上げると流れる電流も増えていきますが、江崎氏は電圧を上げると流れる電流が減少する現象を発見しました。この発見を元に研究を進め、これが量子力学のトンネル現象によるものだと解明し、固体で初めてトンネル現象の観測に成功しました。

2002年受賞・小柴昌俊氏

小柴昌俊氏は、素粒子ニュートリノを世界で初めて観測したことにより、ノーベル物理学賞を受賞しました。

ニュートリノとは、物質を構成する最小の要素である素粒子の一種であり、電気を帯びていない素粒子のことを「ニュートリノ」と言います。私たちが理科の授業で習う陽子や中性子も、素粒子がいくつも集まって作られており、陽子や中性子よりも小さく、それらを構成するものだとイメージするとかりやすいでしょう。

ニュートリノは、すでに理論上では存在すること説明されていましたが、実際に発見には至っていませんでした。1983年、小柴博士は岐阜県に「カミオカンデ」という巨大な実験装置を開発・設置し、ニュートリノを検出するための実験を繰り返しました。

観測開始直後の1987年2月、大マゼラン星雲で超新星爆発が起き、多量のニュートリノが地球に降り注ぎました。小柴氏と同様に、この機会に観測をしていたイタリアとソ連(当時)の共同チームがニュートリノをとらえたと先に発表しましたが、観測データに誤りがあることが発覚し、正確な観測データによりニュートリノを発見した小柴氏のチームの功績が認められ、ノーベル物理学賞の受賞へとつながりました。

2008年受賞・小林誠氏、益川敏英氏

小林誠氏と益川敏英氏は、宇宙の成り立ちにかかわる「CP対称性の破れ」という現象が起きる理由を理論的に説明したことによりノーベル物理学賞を共同で受賞しました。

粒子がそれと反対の電荷をもつ反粒子と呼ばれるパートナーが存在し、物質を構成する陽子や中性子などにも同じようにパートナーが存在します。ビックバンが起きたころには、パートナーの関係にある粒子は同じだけ存在したと考えられますが、現在の宇宙では一方のみが多く存在し、パートナーであるもう一方はなかなか発見されません。このように不均衡な状態になるための条件の一つが、「CP対称性の破れ」であると言われています。

小林氏と益川氏は、この「CP対称性の破れ」を説明するためには、物質をつくる基本粒子「クォーク」が自然界に少なくとも6種類必要だと予言しました。そして、のちにこのことが証明され、ノーベル物理学賞の受賞に至りました。

2014年受賞・天野浩氏、中村修二氏、赤崎勇氏

天野浩氏と中村修二氏、赤崎勇氏は共同研究を行い、青色発光ダイオードの開発に成功したことでノーベル物理学賞を受賞しました。

LEDは電圧を加えると発光する半導体素子で、蛍光灯などと比べ省エネルギーの発光体として注目され、私たちの生活でも一般的に使用されるようになってきました。当時、赤色LED、緑色LED、黄緑色LEDが次々と開発される中、光の3原色と言われる「赤」「緑」「青」のうち「青」の開発は、適切な素材が見つからずに難航していました。赤崎氏と天野氏により青色発光ダイオードの素材となる「窒化ガリウムの結晶化」が成功し、中村氏は窒化ガリウムの結晶の量産化に成功しました。

この3名の研究者により、青色発光ダイオードの開発が成功し、全ての色の光をLEDで生み出すことができるようになったため、これまでよりも多くの工業製品でLEDが活用されるようになりました。

2015年受賞・梶田隆章氏

梶田隆章氏は、ニュートリノに質量をあることを示すニュートリノ振動を発見したことが評価され、ノーベル物理学賞を受賞しました。

ニュートリノについては、2002年にノーベル物理学賞を受賞し、梶田氏の恩師でもある小柴氏の研究で紹介しています。

梶田氏は、ニュートリノの観測した数と理論的に予測した数との矛盾に気づき、ニュートリノが途中で別種のニュートリノに変化するという現象(ニュートリノ振動)によるものだと予言しました。同時に、ニュートリノが質量を持っていることを裏付けるものでもありました。

膨大な観測データの収集と研究により、ニュートリノ振動、ニュートリノが質量を持っていることを証明することができ、ノーベル物理学賞を受賞しました。