2018年10月に発表されたノーベル物理学賞。惜しくも日本人の受賞は叶いませんでしたが、今年も全世界から注目が集まり、ニュースで目にした方も多いのではないでしょうか。
ノーベル物理学賞は、物理学の分野において最も重大な発見、あるいは改良を成し遂げた人に贈られる賞であり、物理学の分野においては最も名誉ある賞であると言えます。今回は、そのノーベル物理学賞について、2018年に受賞した研究者とこれまでの日本人受賞者をご紹介し、親子でノーベル賞を学べる書籍についてもご紹介していきます。
ノーベル賞とは?
ノーベル物理学賞について、詳しく学んでいく前に、まず、ノーベル賞がどのようなものかおさえておきましょう。
アルフレッド・ノーベルの遺言で創設された
ノーベル賞は、ダイナマイトの発明で知られ、「ダイナマイト王」とも呼ばれるスウェーデンの科学者「アルフレッド・ノーベル」の遺言により創設された世界的に権威ある賞です。アルフレッド・ノーベルが残した遺言の一節をご紹介しましょう。
「私のすべての換金可能な財は、次の方法で処理されなくてはならない。私の遺言執行者が安全な有価証券に投資し継続される基金を設立し、その毎年の利子について、前年に人類のために最大たる貢献をした人々に分配されるものとする。」
(引用元:爆発から生まれたノーベル賞 | 日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ)
ノーベル賞には、「化学」「物理学」「生理学・医学」「文学」「平和」「経済学」の6つの分野があり、ノーベル物理学賞は創設時からある賞の1つです。ノーベル物理学賞は、物理学の分野で最も重要な発見、あるいは改良を成し遂げた人に贈られます。
スウェーデン王立科学アカデミーにより選考される
ノーベル物理学を含むこれらの賞は、スウェーデンのストックホルムにある「ノーベル財団」という基金が運営しています。ノーベル財団は、ノーベル賞が安定的に運営されるようにするための運営資金や賞金の確保などの役割を担っています。
ノーベル賞の選考自体は賞により異なり、ノーベル物理学の選考は「スウェーデン王立科学アカデミー」により行われ、毎年10月から発表、12月に授賞式が行われます。
2018年ノーベル物理学賞の受賞者と受賞理由
ノーベル物理学賞を受賞した3名の研究者
2018年のノーベル物理学賞は、「レーザー光を用いた光ピンセット」を発明したアーサー・アシュキン博士と、「高強度超短光パルスの生成方法」について研究したジェラール・ムル博士とドナ・ストリックランド博士の3名の研究者が受賞しました。ドナ・ ストリックランド博士は、1963年のマリア・ゲッパート=メイヤー氏以来、史上3人目の女性受賞者となりました。
「レーザー光を用いた光ピンセット」の研究
アーサー・アシュキン博士が行った「レーザー光を用いた光ピンセット」の研究では、小さな点に集まる光の焦点に向かって生じる微小な力を使って、誘電体を動かす技術を発見しました。この研究により、細胞やタンパク質を壊さずに自由に扱うことができるようになりました。この光ピンセットの技術は、医療や生化学におけるさまざまな応用の可能性が開かれています。
「高強度超短光パルスの生成方法」の研究
ジェラール・ムル博士とドナ・ストリックランド博士が行った「高強度超短光パルスの生成方法」は、「チャープ・パルス増幅法(CPA)」と言われ、高強度の超短パルスレーザーを得ることができる技術です。これらの技術は、私たちの暮らしの中でも身近にあるレーシック手術において、角膜を切るなどの用途で使用されています。
今まで大規模な実験設備や装置を必要としていた高強度のパルス波を得る方法に対し、この研究により実験室程度の設備や環境においても高強度のパルス波を得ることができるようになりました。そのおかげで、医療をはじめとするさまざまな分野での応用が注目されています。