PISA(OECD生徒の学習到達度調査)で分かる日本の教育問題

学力調査として話題に上がるPISA。日本の順位についてニュースで取り上げられることもありますが、いったいどのようなものなのでしょうか? 当記事ではPISAについて詳しくご紹介します。

PISA(OECD生徒の学習到達度調査)って何?

PISAは、OECD(経済協力機構)による学習到達度調査のことで、「Programme for International Student Assessment」の略称です。

PISAの概要

15歳の子供を対象とした学力調査で、科学的リテラシー、数学リテラシー、読解力の3つの分野が調べられます。

  • 科学的リテラシー:データと証拠を示していく科学的思考が使えるかどうか、科学やテクノロジーに関する知識があるかを測るもの
  • 読解力:社会に参加するため、書かれたテキストを理解し、熟考できるかどうかを測るもの
  • 数学的リテラシー:さまざまな文脈の中で数学を活用する数学的思考をして、建設的な判断・意思決定ができるかを測るもの

つまり、学校で習った知識を測るものではなく、習った知識を使う思考力を計測しようとする調査です。2000年以降、3年ごとの調査となっており、最新の調査は2018年に行われており、データがまとめられています。

PISAの権威性と注目度

PISAはOECDが中心となり、各国の機関と協力して実施されている調査になります。多くの国と地域で同じ形式の試験が行われ、信頼に足るデータが扱われた調査と言えるでしょう。OECD加盟国以外にも、中国の上海等が都市として参加しており、2015年の調査では、72の国と地域から、50万人以上の生徒が参加しました。幅広い地域の教育レベルを比較できることから、注目されている調査です。

また、PISAは義務教育を終えた時点の生徒が、学校で学んだ知識・能力を実生活でも使うことができるかという「新しい学力」を測る試験となります。そこで、実際に学校で学んだ知識を使って思考や読解する力のことを「PISA型学力」とも呼びます。一方で、似たような国際学力調査にIEAによるTIMSSがありますが、こちらは学校で習う算数・数学・理科の知識を測る調査です。(ちなみに、日本はどちらのランキングでも上位に入る珍しい国の1つです。)
つまり、PISAはただの学力調査にとどまらず、21世紀の新しい時代の学力観を提示していると言えるのです。これをきっかけに各国がさまざまな教育政策を行っていく現状があります。

PISAランキング大公開!日本の順位は?

では、なぜ日本でPISAが話題になっているのでしょうか? その秘密はPISAのランキングにありました。

2000年〜最新のランキング

2000年の初回調査以降の日本のランキングは以下でした。

数学的リテラシー 科学的リテラシー 読解力
2000年 1位 2位 8位
2003年 6位 2位 14位
2006年 10位 6位 15位
2009年 9位 5位 8位
2012年 7位 4位 4位
2015年 5位 2位 8位

(参照元:OECD 生徒の学習到達度調査Programme for International Student Assessment~ 2015年調査国際結果の要約~|文部科学省国立教育政策研究所

日本の順位は下がっている?

初回の調査となった2000年のランキングでは数学的リテラシーで1位となったものの、2003年以降に大幅に下がったこと、読解力で14位となったことがPISAショックと呼ばれ、当時大きな話題になりました。

また、2015年の調査は、CBTつまりコンピューターを使うテストになり、生徒がその形式に慣れていなかったこともありますが、読解力は低いレベルを推移しています。上位クラスにいるものの、特に読解力には苦戦しているのです。また、調査では生徒の学習意欲や学習環境についても測られています。

図・生徒の科学に対する態度

 

(参照元:OECD 生徒の学習到達度調査Programme for International Student Assessment~ 2015年調査国際結果の要約~平成28(2016)年12月|文部科学省国立教育政策研究所

こちらからも分かるように、日本の生徒たちの科学に対する学習意欲は、OECD平均より下回る結果になっています。楽しさを感じることや科学学習に対する自己効力感、科学に関連する活動は特に低くなっています。科学的リテラシーが比較的に高いにも関わらず、このような現状です。

PISAランクから考える日本の教育の限界

ランキング上位に入っていることを鑑みると、日本の教育が良質であることは明らかです。しかし、特に読解力で苦戦している面や学習意欲や学習習慣に関しては、大きな課題があると考えられています。

従来の日本型教育では戦えない?

2003年のPISAショックを受けて、日本では昭和50年代以降のゆとり教育に対する反省が行われました。ゆとり教育への批判が、この調査結果を受けて加速したのです。そして、学力が下がったとし、以前の学力に戻そうとする動きが生まれたのです。

しかし、PISAは「新しい学力=思考力・読解力」を問う調査です。ただ詰め込み式に戻すだけでなく、より思考力や読解力を高める教育に取り組もうと教育行政は転換期を迎えています。

例えば、政府は、読解力向上のため、語彙力の向上・情報を読み取るプロセスに着目した指導のみならず、教育現場のICT化を加速させようとしています。

コンピューターを利用した試験に慣れていないが故の誤答もあり、学校でのICT利用が非常に少ないという現状も結果に影響していると考えられます。他国と比べるとICT利用率はかなり低く、95%以上の学校が国語の授業においてICTを利用した授業を実施していないと回答しています。そのため、ICTの導入は急がれています。

答えの暗記から、「正解のない問い」を考える力へ

PISAの問題はこのように情報を読み取り、習った知識を使うことが求められます。実際の問題は、以下を見てみてください。

OECD 生徒の学習到達度調査Programme for International Student Assessment~ PISA2015年調査問題例|文部科学省国立教育政策研究所

論述等、正解を見つけるだけでなく、考えることが求められています。特に日本の生徒は、自由記述問題に対しての無答率も高くなっています。普段から、国語のテスト等において、自分で発信するような回答より、選択式の問題が多く、趣味的なことに感想を述べることも多いことから、根拠を持って記述する形式に慣れていないという問題もあるでしょう。

PISAでは、4割ほどが自由記述式の問題になっています。答えをただ当てにいくのではなく、自分で考える力を求めているのです。

親として考えたいこれからの教育


PISAの調査で、日本が課題としているのが読解力と学習意欲の問題であることが分かりました。政府は新たな政策で対応しようとしていますが、個人としてもそのような力を高める教育を意識することが必要です。

世界の親たちは子供達にどんな教育をしている?

親としては、子供に対してどのようなことができるでしょうか?

今からできる新しい教育:国内編

日本の生徒は、自分の考えを主張することに苦戦する傾向があるようです。しかし、日本でも大学入試等で、小論文形式の試験も出てきました。感想文ではなく自分で論述ができるように、普段の授業から根拠を持って主張をする癖をつけていく必要があります。

自分の意見を言うことが難しいようであれば、その前に書いてまとめたり、語彙力を増やすためにさまざまな本を読むことも重要でしょう。また、科学に対する関心を高めるためにも、プログラミング講座や子供が関心を持ちそうな場に連れていくことも良いでしょう。

中学3年生の男子が最もなりたい職業に「プログラマー」が選ばれる時代になりました。「学者」という選択肢も上位に入っています。学校で学ぶことを将来の夢へとつなげていく手助けも、意欲的な学習を促す上で重要です。

今からできる新しい教育:海外編

日本より上位の国では、どのような教育を施しているのでしょうか? シンガポールやフィンランドでは、教員養成に時間がかけられ、より良質な教育を提供しているようですが、個人の選択肢としてはどのようなものがあるでしょうか。

その1つとして、IB(国際バカロレア教育)は非常に有効と言えます。日本では比較的新しいプログラムになりますが、アメリカ、オーストラリア、イギリス等の国では、IB取得者を大学進学の際に優遇したり、日本より上位のPISAランキングに入っているシンガポールでも、優秀なインターナショナル・スクールで実施されたり、注目されたプログラムです。自分でリサーチをして実際に論文を書くなど、思考力をはじめとするPISA型学力を意識したプログラムになっています。

 

まとめ: まだ間に合う。正しい情報を集めよう

PISAの調査は国の学力調査のため、教育政策に反映されることの多い調査です。つまり、PISA型の新しい学力観に日本も変化しようとしている現状があります。これからの時代は、ただ知識を詰め込むだけでなく実際に運用する力も重要になってくるでしょう。そのためにも、ランキングを見て一喜一憂するだけでなく、自分の子供にどのように思考力・読解力をつけさせるかが重要になってくるかもしれません。

参考
Top Page|PISA
OECD生徒の学習到達度調査|国立教育政策研究所
IEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)|国立教育調査委員会
日本の教育の問題~学習到達度調査(PISA)から見える課題|ノマドジャーナル
【後藤敏夫のグローバル教育ニュース】 IBのDPにみられるPISA型学習|ワールドクリエイティブエデュケーション
第一回「PISA型読解力」について考える|Kei.net
中高生が思い描く将来についての意識調査2017|ソニー生命保険
読解力対応策|文部科学省

この記事をかいた人

cocoiro編集部

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