キー・コンピテンシーをはぐくむ3つの要素
では、キー・コンピテンシーのために、家庭でできることはどのようなことでしょうか。キー・コンピテンシーには次の3つのカテゴリーがあります。それぞれの要素からのアプローチをお伝えします。
- 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力(個人と社会との相互関係)
- 多様な社会グループにおける人間関係の形成能力(自己と他者との相互関係)
- 自立的に行動する能力(個人の自律性と主体性)
個人と社会の関係にアプローチする
ここで必要なのは、「社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力」として、「言語、シンボル、テクスト」「知識」「テクノロジー」を活用する能力があるとされています。将来職場で役割を果たすためなどのコミュニケーション力や、情報の本質を批判的に考え責任をもって活用する力、テクノロジーのイノベーションにつながる力などです。学校での学びと重なることも多いので、さらに考えを深めたり活用したりできるよう、「なぜ」どうする?」という声かけや、関係する体験や遊びをさせるなど学びを広げてあげましょう。
コミュニケーション力につながる質問力について、こちらの記事で紹介しています。
自己と他者との関係にアプローチする
ここで必要なのは、「多様な社会グループにおける人間関係の形成能力」として、「他人と円滑に人間関係を構築する」「協調する」「利害の対立を御し、解決する」こととされます。多様性を認め実現していくことは、グローバル化していく社会では、強く求められています。
関連するのは、共感力や感情のコントロール、グループで同じ目的をもって協力すること、人間社会では避けられない利害の問題などを解決していくことなど。大人にとっても日々直面する問題なので、子供と一緒に対処法や解決法を試したり、共感しあいながら体験を共有しあったりするのもいいでしょう。
子供の共感力を高める方法をこちらの記事で紹介しています。
個人の自立性と主体性にアプローチする
ここに必要なのは、「自立的に行動する能力」として、「大局的に行動する」「人生設計や個人の計画を作り実行する」「権利、利害、責任、限界、ニーズを表明する」能力があるとされます。ここで言われる自立とは、「孤独のことではなく、むしろ周囲の環境や社会的な動き、自らが果たし果たそうとしている役割を認識すること」とのことです。
子供の主体性を高めるために必要なことを、こちらの記事で紹介しています。
人生設計というのも、単純な計画ではなく「人生の意義を見失いがちな変化し続ける環境のなかで、自らの人生に一定のストーリーを作るとともに意味や目的を与える力」。これらのためには、普段から人類の歴史や社会の仕組みが分かるような本や映画などに触れたり、自分も社会の一部であることを知るような対話をしたりするのもおすすめです。
おわりに
OECDは、2018年に2030年を見据えた教育提言「エデュケーション2030」を出しましたが、変化の激しい時代なので、「キー・コンピテンシー」もさらに修正を加えられながら、活用されていきそうです。キー・コンピテンシーにつながる力の学びに共通して必要なのは、深く考えて行動するが必要であること。「深く考える」というと少し重くて難しそうですが、普段の暮らしの中でのちょっとした言葉かけであっても考えるきっかけになります。意識してみましょう。
参考
義務教育改革 コンピテンシーと「生きる力」|旺文社教育情報センター
キー・コンピテンシーとPISAリテラシー|恵和学園大学
キー・コンピテンシーを育む幼児教育のあり方|東洋大学
OECDにおける「キー・コンピテンシー」について|文部科学省