ビジネスの現場などでも耳にする機会の増えてきた概念「エンパワーメント」。子育てにも関係のある概念のようです。具体的にはどのような意味があるのか、どのように実践できるのかを紹介します。
もくじ
エンパワーメントとは
英語の「パワー」という言葉と関係がありそうな「エンパワーメント」。この言葉には深い歴史的な背景があります。
公民権運動・男女同権運動などで有名になった考え方
エンパワーメント(empowerment)という英単語には、広義には「力を与える」という意味があります。そこから、社会的に「より力がない」「弱い」と考えられてきた人々を力づけ、本来持っている能力が開花するように働きかけることを指すようになってきました。
エンパワメントは,例えて言うなら,魚が獲れずに困っている村の人々に対して単に魚を与えるのではなく,自分たちで魚を獲ることが出来るように魚の釣り方を教えることである。
(引用元:個人をエンパワーするとは|プログラム評価ラボ 法政大学キャリアデザイン学部 安田研究室)
弱い立場にある人たちには、差別や抑圧という問題が立ちはだかります。アメリカでの公民権運動や、世界的に広がった女性運動などで使われた結果、エンパワーメントには、「それまでの抑圧された立場から自ら立ち上がり、自分のために能力を開花させ、それによって生活や環境を変革していく」という意味が込められるようになりました。
各分野でのエンパワーメントの意味
現在では、エンパワーメントの概念は社会運動だけでなく、さまざまな局面で使われています。各分野での意味を調べました。
介護・福祉分野:自分の人生の主人公に
介護・福祉の分野において身体的・精神的に弱い立場にあるのは、介護や福祉を受ける側です。年齢や疾患・障害などの理由により、「これはできない」「やっても無駄だ」という思考に陥ってしまうことも。この分野では、エンパワーメントには「サービス利用者や家族が自発的に物事を決めて、自分の生活を自分でコントロールすることができるように手助けする」という意味があります。
子育て・教育分野:子供の潜在能力を引き出す
教育の現場でもエンパワーメントという概念が使われます。この場合は、社会的な弱さや抑圧というのは、大人対子供の力関係になります。大人が一方的に子供にものごとを教え込むのではなく、子供の持つ潜在能力を引き出すという考え方です。大人には正解が見えているけれども、あえて教えずに子供が試行錯誤しながら答えを見つけていく過程を重視します。
ビジネス・企業:権限を委譲し、成果をあげる
ビジネスの現場でのエンパワーメントは、「権限委譲」という意味合いが強くなります。これは、従業員の自主性とビジネスの成果との関係性と深く関係があります。背景には、部下は一方的に上司が命令したことをこなすのではなく、ある程度の裁量を持って自分の仕事ができたほうが成果が出るという考えがあります。上司は部下に裁量を与え、目標を達成できるように支援するという役割を果たします。