子育てで実践できるエンパワーメント
教育現場でも導入されているエンパワーメント。家庭の子育てでも実践できる取り組みはあるでしょうか。
導入時に気をつけるポイント
まず、どうしてエンパワーメントを導入したいと思ったのかを親が把握しておくことが重要です。 子育ち子育てエンパワメントに向けた発達コホート研究によると、導入時には以下のようなポイントに気をつけると良いとあります。
第1ステップ もたらしたい成果は?
第2ステップ 現状の問題点あるいは課題は?
第3ステップ 背景は?
第4ステップ 問題点や課題、背景要因に影響を与える要因は?
第5ステップ 影響を与える要因を変化させる支援(戦略)は?
第6ステップ 根拠は?
(引用元:エンパワメント科学:新たな実践知の展開に向けて|子育ち子育てエンパワメントに向けた発達コホート研究)
子供にエンパワーメントが必要だと思ったのはどういう場面だったでしょうか。習い事なのか、学習なのか。夢中になっている好きなものについてでしょうか。どんな風に成長してほしいと思ったでしょうか。具体的に書き出すなどして、上記の6つのステップについて検討してみましょう。
自分で考え、挑戦できる子供へ
小学校から行われている道徳教育は、子供のエンパワーメントに非常に関連の強い科目です。「正しさ」や「人間関係」などについて学ぶことで、自分で考え、判断する力を育てることが授業の主眼だからです。しかし、道徳の授業現場では常に「正解」が求められ、それ以外の考え方を排除するようなこともしばしば起こってしまうそうです。
ある小学校では、子供たちが周りの空気を読んで萎縮してしまうのではなく、もっと自分の考えを深めることができるような取り組みをしました。具体的には、SNSでのやりとりを題材に、「なぜ人は他人を嫌な気持ちにさせるような書き込みをしてしまうのか?」について考えたそうです。このとき、大切にしたことは3点。
- 「空気を読まず、自分が思ったことは自由に表現して良い」ということを丁寧に子供たちに伝えること
- 授業の題材になるSNSは、子供たちの提案を採用したこと
- 子供たちが意見を言うときは、結論だけでなく「なぜ」「どうして」そう思ったのかという過程の部分を重視したこと
この3点はエンパワーメントを導入する親の参考になります。まず子供に権限を与えた上で、題材も押しつけでなく、子供の関心があるものを選ばせること。上手にできるようになるという結果だけでなく、どうやってそれを達成するのかを一緒になって考えて取り組むこと。一方的に与える学習や体験より、ずっと時間や体力・気力が必要な取り組みです。その結果、子供たちは自分で考え、未知のものにも挑戦することができるようになります。
上記の道徳の授業では、SNSのコメントに対して「良い」「悪い」という単純な判断だけではなく、自分で問題を発見して考えることのできた子供はクラスの約半分ほどだったそうです。もっと子供の自発力を引き出すには、長い目で何回も取り組みを繰り返すことが必要そうです。
親にもエンパワーメントが必要
子供のエンパワーメントについて考えてきましたが、忘れてはならないのは、親にもエンパワーメントが必要だということです。子育ての悩みや課題に相談相手がいること、実際に頼れる支援施設などがあることはとても大切です。
エンパワーメントについて研究している専門家は、人間の集まりの中で構成員がそれぞれお互いに仲間をエンパワーメントする「コミュニティ・エンパワーメント」が必要だと提唱しています。行き詰まったり、悩みが出てきたときは、公的機関の専門家に相談したり、子育てサークルなどに参加したりすると、エンパワメントしてくれる相手に出会えるかもしれません。
まとめ:エンパワーメントで良い循環を作ろう
1人1人が持つ潜在能力を引き出し、開花させるエンパワーメントについてまとめました。自分で考えて行動できる子供に育てるには、ときに信じて任せることも必要です。
また、子供のような社会的弱者だけでなく、誰もがときには抑圧を感じ、自分の人生をうまく自分でコントロールできないという感覚を持つ可能性があります。エンパワーメントはそのような立場に置かれた人のための概念です。エンパワーメントの考え方を元にして、お互いに自立した良い循環を作っていきましょう。
参考
エンパワーメント|BIZHINT
エンパワーメント|介護保険介護福祉用語辞典
エンパワーメント MBA用語集|グロービズ経営大学院
情報モラルにおける保護主義からの脱却:エンパワーメントを目標とした道徳授業へ|弘前大学学術情報リポジトリ
コミュニティ・エンパワメントー当事者主体のシステムづくりー|筑波大学国際発達ケア:エンパワメント科学研究室
子育てにおける親の内的資源 -外的資源が限られた地域における親の内的資源の探索-|関西大学学術リポジトリ