暑い季節になると、子供が水遊びをする機会も増えることでしょう。保育現場や研究者からの報告を読んでいくと、子供は水遊びに大人には思いがけない楽しみを見いだしていること、水遊びが子供の成長に重要な意味を持っていることが分かります。そんな水遊びにさらなる楽しさを添えてくれるおもちゃを、手作りと市販品からご紹介。子供と一緒に工夫しながら、水遊びを楽しんでみましょう!
もくじ
【子供の目線】水遊び、子供はここが面白い
まずは、子供にとって水遊びはどんな魅力を持つものなのか、子供の気持ちに注目してみましょう。
水の感触や動きが不思議!
美術教育と子供の造形遊びの専門家、同志社女子大学教授の竹井史氏は、「水は子どもが初めて出合う、目で見て触れることのできる自然素材」と述べています。
水はいろいろな形態に変化し、様々なあそび方ができるし、暑い日に触れると心地がよい。時間がたつと蒸発するなど、子どもが自然の不思議さを感じやすく、清潔で手軽に使えるとても優れた素材なんですよ。
(引用元:発育にもいい影響が!? 赤ちゃんの水あそびのポイントは?|ベビータウン)
水の不思議を味わうことに没頭する
兵庫教育大学の橋川喜美代氏の論文『保育者の共感と子どもの集団への参加過程』は、保育を行う大人が子供に共感し子供の体験を追体験することで、見える世界や子供への関わり方が変化する過程を追跡しています。論文中の、水遊びの事例を取り上げてみましょう。
事例2「トイ遊び」(要約)
水道の周りで、タライに繋げたトイにペットボトルの蓋を流して遊ぶK児。K児は歓声を上げながら流れる蓋に沿って歩き、トイの途中で止まる蓋を取っては、より遠くまで流そうと、手で水を動かすなどの工夫をしながら、水道から流し始めることを繰り返す。 |
当初、子供の行う水遊びの面白さに気付けなかった保育者は、自分の働きかけへの反応がなかったことに無力感を抱きます。しかし子供の活動に自らも身を委ねて同じように遊びを見直した時、子供が繰り返しトイに蓋を流し、一緒に歩くのは、水の流れに強い関心を持ち、水の流れや速さ、距離などを体で感じて味わう営みであったと、気づくようになるのです。
参考
橋川喜美代(2016年)『保育者の共感と子どもの集団への参加過程-ラーニング・ストーリーが描き出す子どもの集団参加への状況分析』兵庫教育大学研究紀要 Vol.48, PP. 9-19
水から受けた感動を全身で表現する営み
障がいを持つ子供たちの特別支援学校、愛育学園の教育実践に尽力した津守真・房江夫妻は、愛育学園での水遊びの様子を捉えたビデオ『形が残らない造形活動』について、次のように語っています。
<真氏>
愛育で子どもたちがやっている水遊びは、全身を打ち込んでやっている水遊びです。小手先の問題ではなく自分が水と一体化して遊んでいます。
(引用元:津守真ら(2004年)『障碍をもつ幼児の保育(24) : この子と出会ったとき 水 : なぜこんなにも水遊びが好きなのか』幼児の教育 Vol.103, No.8, PP.53-57)
<房江氏>
言葉を使わずに水遊びの中で自己の確認をしたり、心の表現をしているのですね。『言葉をもたない詩人たち』ですね。
(引用元:津守真ら(2004年)『障碍をもつ幼児の保育(24) : この子と出会ったとき 水 : なぜこんなにも水遊びが好きなのか』幼児の教育 Vol.103, No.8, PP.53-57)
真氏は「大人には、形にならないことは分かりにくいし、その子にとっての意味をくみ取りにくい」とも述べます。大人は、子供の見方と感じ方を共有してから初めて、子供にとっての水遊びの意味を知ることができるのでしょう。