アンケート回答者の属性
司法書士のキャリアや働き方によって、年収が大きく変わる可能性が示唆されました。アンケートに回答した2,108名の司法書士は、どのような人たちなのでしょうか。どういった年齢やキャリア、事務所形態の人たちが多いのでしょうか。アンケート回答者の属性を見てみましょう。
<性別と年齢>
<業務歴>
<事務所形態>
(参照元:『平成28(2016)年度司法書士実態調査集計結果』司法書士白書2017年版,p52-53)
8割以上が男性、年齢は20歳代から50歳代が約半分を占めます。業務歴は10~19年が最も多く、開業から19年までの回答者が約6割。また8割近い回答者が、個人事務所を構えて働いていると分かります。
キャリアと年収の平均的なイメージを描いてみると?
以上のデータから、司法書士のキャリアと年収について、平均的なイメージを描いてみましょう。次のような司法書士像が浮かんできます。
・男性、40代。 ・司法書士試験に合格して十数年、現在は独立開業して業務に当たっている。 ・年収は400万円前後、業務内容によっては500万円を超える年も。 |
参考
『平成28(2016)年度司法書士実態調査集計結果』司法書士白書2017年版
司法書士の働き方は?
就職先には個人事務所と司法書士法人がある
かつて司法書士事務所の形態は、個人事務所しかありませんでした。司法書士法人の設立が可能になったのは、平成15年に司法書士法が改正されてからのことです。従来司法書士になる方法は、司法書士の個人事務所で所長の下、補助者として修業したのち独立開業する、というものしかありませんでしたが、法人に就職するという道もできました。現在のキャリアパスには選択肢が増えています。
独立開業する道も専門性を高める道もあり
現在も司法書士事務所の多くは個人事務所であり、そこでは幅広く多様な業務を取り扱いますが、特定の分野に特化しより専門性の高い業務を行う事務所もあります。特に法人化した事務所では、いくつかの専門部署に分かれていたり、特定分野の案件を大量受注し処理する大規模な事務所も存在します。
個人事務所ではオールマイティな能力が、専門特化した事務所では特定分野の専門能力が要求され、かつ培われると考えてよいでしょう。将来独立開業を目指すのか、組織でプロフェッショナルとなる道を進むのかによって、就職先や働き方も変わってきます。就職活動時に、自分はどういった方向を目指すのか、いずれ開業するのか勤務を続けるのか、考えておく必要があるでしょう。
業務内容と報酬
司法書士の業務は、司法書士法や司法書士法施行規則によって定められたものです。日本司法書士連合会は、司法書士の業務内容を次のように整理しています。
- 登記又は供託手続の代理
- (地方)法務局に提出する書類の作成
- (地方)法務局長に対する登記、供託の審査請求手続の代理
- 裁判所または検察庁に提出する書類の作成、(地方)法務局に対する筆界特定手続(※)書類の作成
- 上記1~4に関する相談
- 法務大臣の認定を受けた司法書士については、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等の代理及びこれらに関する相談
- 対象土地の価格が5600万円以下の筆界特定手続の代理及びこれに関する相談
- 家庭裁判所から選任される成年後見人、不在者財産管理人、破産管財人などの業務
(出典:司法書士の業務|日本司法書士会連合会)
※筆界とは土地の登記の際に定められたその土地を区画する線のこと。筆界が不明でトラブルが生じた時、筆界特定制度を利用すれば、裁判より迅速かつ簡易に解決することができる。
司法書士の収入は、業務を行った時に依頼者から受ける報酬からなります。司法書士の年収は、報酬額の設定や受注案件の種類、受注数などによって決まると言えるでしょう。報酬額は、各司法書士が算定方法や諸費用を明示した上で、依頼者との合意により決定することになっています。そのため、一律の決まった報酬額があるわけではありません。
司法書士連合会は、会員に対して報酬に関するアンケート調査を行っています。参考例として、いくつかの業務について報酬の平均額を以下に挙げてみます。
<司法書士の報酬平均額>
※報酬アンケート:平成30年1月実施、4,484名中1,193名の回答
①所有権移転登記(相続) | ②会社設立登記 | ③債務の整理 | ④遺言書作成
サポート |
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北海道地区 | 60,983円 | 98,172円 | 219,333円 | 49,141円 |
東北地区 | 60,667円 | 102,399円 | 213,049円 | 43,394円 |
関東地区 | 65,800円 | 99,611円 | 207,797円 | 60,232円 |
中部地区 | 63,470円 | 100,304円 | 207,108円 | 55,299円 |
近畿地区 | 78,326円 | 106,880円 | 240,827円 | 67,296円 |
中国地区 | 65,670円 | 102,486円 | 207,939円 | 46,962円 |
四国地区 | 65,578円 | 108,525円 | 225,105円 | 40,641円 |
九州地区 | 62,281円 | 103,635円 | 218,329円 | 49,069円 |
①土地と建物(固定資産評価額の合計1,000万円)、法定相続人3名のうち1名の単独相続。戸籍謄本等5通の交付請求、登記原因証明情報(遺産分割協議書、相続関係説明図)の作成、登記申請。
②発起人2名、資本金500万円の株式会社発起設立。登記に必要な書類(定款、議事録、その他証明書等)の作成、定款認証手続および登記申請。
③個人民事再生事件の申立書類の作成。各消費者金融会社への取引記録開示請求、各申立書作成。
④公正証書遺言作成嘱託のサポート。遺言公正証書の原案起案、公証人役場への同行、立会証人。
(日本司法書士連合会『報酬アンケート結果』(平成30年1月実施) より筆者作成)
参考
多様化する司法書士事務所とキャリアパス | メンターエージェント