支給額から引かれる税金
続いては、税金関係です。2020年1月現在、給与から天引きされる税金には、所得税と住民税があります。
所得税
企業は、給与や報酬を継続的に支払う場合、所得税を源泉徴収しなければならないことになっています。所得税の源泉徴収は、その人が「甲・乙・丙」のうちどれに該当するかで金額が変わります。
甲欄に該当するのは一般的な給与所得者です。1つの会社にフルタイムで勤めていて、収入の大半をその会社から得ている人です。このような人は、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しています。
甲欄の従業員は、扶養家族などを勘案して源泉税額が決まりますので、扶養の人数が多ければ多いほど源泉徴収される税額が少なくなります。また、甲欄の従業員はその会社で年末調整をしてもらうことになります。
乙欄に該当するのは、2ヶ所以上から給与所得を得ており、かつ別の会社で年末調整をしてもらうか、自分で確定申告をする人です。この場合、会社は扶養控除をせず、国が決めた税額表に基づいて源泉徴収を行います。甲欄の人と同じ金額の給与の支払いを受けている場合、乙欄の人の方が源泉徴収される税額が多くなることが殆どです。
丙欄に該当するのは、日雇労働者などです。イベントなどで雇用される短期アルバイトもこれに含まれます。丙欄の人は、月額ではなく日額で給与が支払われますから、源泉徴収も日額表という別の表に基づいて行われます。
いずれの場合も源泉徴収される税額は支払額に基づいて大幅に変わります。詳しくは下記の参考リンクより、国税庁が発表している税額票を参照してください。
一例を挙げましょう。社会保険料の自己負担額を差し引いたあとの給与額が170,000円の人だと、甲欄の場合は3,700円、乙欄の場合は11,700円源泉徴収されます。
参考
給与所得の源泉徴収税額表(平成31年(2019年)分)|国税庁, p.2
住民税
「昔は住民税を自分で払っていたのに、会社から源泉徴収されるようになってしまった」と不満を持っている人もいるかもしれません。実は、住民税も源泉徴収する決まりになっていたのですが、国税と異なり制度が徹底されていませんでした。
近年、関東の都道府県などが中心となって重点的に源泉徴収を進めています。住民税の源泉徴収のことを「特別徴収」と呼ぶこともあります。
住民税額は、住んでいる自治体によって異なります。夕張市など、危機的財政状況にある自治体は高額になることがあります。そのほかの自治体では、おおよそ給与の10%ほどというところが多いようです。
参考
個人住民税均等割税額の加算について(平成29年4月1日改正) | 夕張市
手取り20万で予算を立てよう
社会保険料で給与のおよそ2割前後、税金で1割前後を天引きされることが分かりました。残った手取り金額が20万円程度になるとして、毎月の予算はどのように立てれば良いのでしょうか。
家賃はどのくらい?
一般的に、「家賃は収入の30%までにおさえると良い」と言われています。これを手取り20万円に置き換えると、妥当な家賃は6〜7万円程度ということになります。
就職したら東京で一人暮らしをする、という人も多いでしょう。都心23区の家賃相場から、どの辺りに住めそうか考えてみましょう。
ワンルーム | 1K/1DK | |
千代田区 | 6.6万円 | 8.7万円 |
中央区 | 8.2万円 | 9.5万円 |
港区 | 7.5万円 | 9.6万円 |
新宿区 | 7.5万円 | 8.9万円 |
文京区 | 7.7万円 | 8.8万円 |
台東区 | 7.8万円 | 8.7万円 |
墨田区 | 7.2万円 | 8.1万円 |
江東区 | 7.3万円 | 8.2万円 |
品川区 | 7.8万円 | 8.9万円 |
目黒区 | 7.7万円 | 8.9万円 |
大田区 | 6.7万円 | 7.6万円 |
世田谷区 | 7.0万円 | 8.0万円 |
渋谷区 | 7.8万円 | 9.5万円 |
中野区 | 7.5万円 | 8.2万円 |
杉並区 | 6.8万円 | 7.6万円 |
豊島区 | 6.9万円 | 8.0万円 |
北区 | 6.4万円 | 7.2万円 |
荒川区 | 6.8万円 | 7.5万円 |
板橋区 | 6.2万円 | 6.8万円 |
練馬区 | 6.1万円 | 6.7万円 |
足立区 | 5.8万円 | 6.3万円 |
葛飾区 | 5.7万円 | 6.2万円 |
江戸川区 | 5.6万円 | 6.2万円 |
(東京都の賃貸家賃相場・賃料相場を調べる | SUUMOより筆者作成)
ワンルームに絞るとしても、やや予算オーバーとなる地域が多いことが分かります。家賃は毎月必ず出ていく出費で、なくすことも難しいので、無理せず生活できる予算の中で選ぶようにしてください。
生活費はどのくらい出ていく?
毎食の予算を500円と決めても、1ヶ月では約45,000円かかります。仕事が忙しいと外食の機会も増えますので、食費は余裕をもって設定しておくことをおすすめします。
そのほかの出費については、政府統計の「家計調査」を参考にする人もいます。2018年の結果を見ると、以下のようになっています。
- 水道・光熱費:約10,000円
- 日用品・雑費:約20,000円
- 通信費:約15,000円
ただし、調査対象を見ると平均年齢は59.3歳、有業者は約5割、持ち家率も約5割となっています。持ち家のある単身高齢者世帯が多いのです。高齢者と若年者では出費の傾向が異なりますので、家計調査は現役世代が参考にするには全体的にやや金額が低めだと考えておきましょう。
参考
奨学金や教育ローンの返済は?
奨学金や教育ローンはどこから借りたか、いくら借りたかによって返済額が異なります。日本学生支援機構が提示している例を見てみましょう。
(例)毎月3万円の奨学金を4年間(48か月)貸与を受けた(総額144万円)場合
貸与総額144万円 ÷ 割賦金の基礎額11万円 = 13.09 → 156回(13年間)で返還
(引用元:返還期間(回数) |独立行政法人日本学生支援機構)
144万円を156回で返還するので、1回あたりの金額はおよそ9,230円となります。多い人は20,000円台の返済になることもあります。また、有利子のローンを借りている人は利率にも注意が必要です。
ボーナスがあるかどうかも確認して
ここまで、毎月の手取額が20万円の場合を想定して考えてきました。企業によってはボーナスが出ますので、それを毎月に平均するともう少し収入があるという人もいるでしょう。一方、ボーナスも含めて手取りが20万円の場合は、毎月の予算額をもう少し減らす必要があるかもしれません。
まとめ
月給20万円と手取り20万円の違いとは? 天引きとは? 生活費はどのくらいかかる? 就職したら気になる給与のあれこれについて解説しました。無理のない家計設計で生活できるようにシミュレーションするのは大切なことです。本記事を参考にして、お金の使い方をもう一度考え直してみてはいかがでしょうか。
参考