支給額から引かれる社会保険料
社会保険料は、給与の額面や扶養のある・なしによって異なります。だいたいの計算方法を知っておきましょう。
雇用保険
失業すると、「失業保険」がもらえることを知っている人は多いでしょう。この失業保険をもらえるのは、雇用保険に加入している人です。学生であったり、週の労働時間が所定の時間を下回っていたりする人は加入できませんが、フルタイムで働く被雇用者は必ず加入しなければならないものです。
雇用保険は、非常に保険料率が低い保険です。一般的な事業の場合、給与の1,000分の9が保険料として定められています。このうち、会社と従業員の負担はそれぞれ6:3の割合となっています。
ちなみに、従業員負担が全くない保険として「労災保険」があります。過労死などに「労災認定」がされるニュースを見たことはあるでしょうか。これは仕事中、もしくは通勤中に起因する事故や病気などを「労働災害」と認定し、保証するための保険です。労災保険は、全額を会社が負担することになっています。労災保険と雇用保険を合わせて「労働保険」と呼ぶことがあります。
参考
労務担当者が知るべき「雇用保険」の基礎知識。加入条件、手続き方法は? | SmartHR Mag.
健康保険
病院を受診するときに持っていく健康保険証の健康保険です。健康保険料は「標準報酬月額」というものに基づいて算出されます。
「標準報酬月額」は、50等級に分かれています。例えば1等級は58,000円、50等級は1,390,000円です。この金額に保険料率を掛けて保険料が算出されます。保険料は都道府県ごと、もしくは加入している保険組合ごとに異なります。協会けんぽに加入している場合は、おおよそ標準報酬月額の10%前後が保険料になると考えておきましょう。
標準報酬月額は、各従業員への支払額に基づいて算出されます。給与の額面だけでなく、前項で解説した手当なども含みます。例えば給与が20万円あり、通勤手当や住宅手当などが5万円ある人は、25万円の支払いがあることになります。
また、オフィスに無料で利用できる社員食堂があったり、会社が負担するおやつタイムがあったりする場合は、それらも標準報酬月額に含まれます。実費にするといくらくらいになるかを算出し、「現物支給」として標準報酬月額に加えます。
標準報酬月額は、毎年4・5・6月の報酬月額を平均して算出します。そのため、3・4・5月に残業をたくさんしてしまうと4・5・6月の報酬月額が上がり、健康保険料が1年間高くなるという仕組みになっています。
時短勤務への切り替えなどで支払額が大幅に減った場合は、標準報酬月額が改定されます。ただし、この場合も3ヶ月の支払いが終わったあとに算出されますので、それまでの間はもとの高い保険料が天引きされます。
法律では、健康保険料は会社と従業員で折半することになっています。ただし、会社が全額支払うことも違法ではないので、一部の大企業などでは福利厚生の一環として全額負担していることがあります。
参考
平成31年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 | 全国健康保険協会
平成31年度保険料額表(平成31年4月分から) | 全国健康保険協会
厚生年金保険料を決める基準「標準報酬月額」って何?どうやって計算されているの? | ファイナンシャルフィールド
厚生年金
厚生年金も、社会保険と一緒に天引きされます。社会保険と同様、標準報酬月額に基づいて料率が決定されます。金額は標準報酬月額のおおよそ18%前後で、会社と従業員で折半して支払います。
介護保険
介護保険は40歳から加入する必要がある保険です。40歳以上の要介護認定された人は、介護保険でさまざまなサービスを受けることができます。
介護保険料も、社会保険の標準報酬月額をもとに算出されます。加入している保険組合や自治体によって料率が異なることがありますが、おおよそ標準報酬月額の2%前後の保険料を会社と折半します。
ここまでが、標準報酬月額に基づいて天引きされる社会保険料です。
- 標準報酬月額は額面給与と異なる
- 社会保険料は標準報酬月額のおおよそ30%くらい
- 従業員本人の負担額はその半分の15%くらい
手取り計算の際には、これらのことを覚えておきましょう。
参考
40歳、65歳になったとき(介護保険制度について)|東京電子機械工業健康保険組合