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子供の進学を考えるとき、選択肢として挙がるのが「4年制大学」でしょう。かつては高学歴とされていた4大も、近年では大学進学率の増加により一般的になりつつあります。「入学は難しいが、卒業は簡単」「出席しなくても単位が取得できる」というイメージが強い日本の大学ですが、現状はどのようになっているのでしょうか。当記事では、日本の大学教育の現状と問題点をまとめました。
日本の大学教育の現状
日本の大学教育の現状について、政府が発表する資料や識者の意見を参考に読み解いていきます。
合格率93%の「大学全入時代」へ
2018年の学校調査によると、大学進学率は過去最高の57.9%となりました。親の世代に近い1999年度の進学率は38.2%ですから、どれだけ増加しているかお分かりいただけるかと思います。かつては3人に1人だった大学進学が、現在では2人に1人の進学が当たり前になっているのです。
大学の不合格率も比較してみましょう。1990年の受験では、志願者の44.5%が不合格となりましたが、以降は不合格率が急降下。2015年には不合格率は6.7%でした。合格率を算出すると、93.3%になります。このことから、大学受験をしたほとんどの子供が大学へ進学していることが分かるでしょう。
参考
受験地獄は過去の遺物、今や合格率93%の「大学全入時代」|Newsweek
平成30年度学校基本調査(確定値)の公表について|文部科学省
「2人に1人が4年制」時代の大学進学とは|ベネッセ教育情報サイト
私立大学の水準は世界と比較しても非常に高い
大学や高等教育政策などを研究している元ボストンカレッジ国際高等教育センター所長のPhilip G. Altbach氏は、講演で日本の大学について以下のように語っています。
- 私立大学の水準が非常に高い
- とても建設的に、私立大学の効率化に取り組み、他国とは違う学術システムを確立している
- 世界でも数少ない有能な研究所を所有する私立大学を保持している
Altbach氏は日本の私立大学のレベルについて、「おそらくアメリカを除いてはトップクラスといえる」と語り、他国が日本の私立大学から学べることは多くあるとしています。
参考
「日本の高等教育は世界のライバルに後れを取りつつある」世界的権威が語る|リクナビNEXTジャーナル
日本の学術的発信力は地に落ちている?
一方、思想家で神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏は、日本の大学について警鐘を鳴らしています。
2002年から日本の学術研究は質、量ともに国際競争力が低下しています。2015年の「人口あたり論文数」は世界37位。中国、台湾、韓国のはるか後塵を拝しています。現在の日本の学術的発信力はOECD諸国の中では最下位レベルです。
(引用元:大学教育は生き延びられるのか?|内田樹の研究室)
インタビューでこのように答え、日本の学術研究の国際力低下を訴えています。内田氏はさらに国際的な評価対象となる論文についても言及。インタビューで以下のように語っています。
論文数の減少が著しいのが、かつて国際競争力が高かった分野だというのも気になります。工学系は2004年以降論文数が減少。生命科学系、農学系、理学系も低下傾向です。社会科学系では論文数はそれほど減っていませんが、もともと国際競争力のない分野です。総体として、日本の大学の国際競争力は過去15年間下がり続けています。
(引用元:大学教育は生き延びられるのか?|内田樹の研究室)
内田氏によると、日本の「人口当たり論文数」や、公的支出の中に占める教育費の割合も先進国最低。システムが変わらない限り、日本は教育に対する公的支出が先進国最低のままだろう、と危惧しています。