山本周五郎賞受賞作を読もう!子供でも一気に読める大衆文学7選 - cocoiro career (ココイロ・キャリア) - Page 2

山本周五郎賞とは?

新潮社が創設した大衆文学作品賞

山本周五郎賞とは、新潮文芸振興会が主催し、新潮社が後援する文学賞です。「山周賞」「山本賞」と略されることもあります。昭和期に多くの大衆文学・時代小説を残した山本周五郎にちなみ、すぐれた物語性を有する大衆文学に贈られます。純文学を対象とする三島由紀夫賞とともに、1988年に設立されました。

山本周五郎賞は、受賞作品のジャンルが幅広いのが特徴です。歴史・時代小説、恋愛小説に加え、直木賞等では評価されにくいファンタジー小説、ホラー小説、ミステリー小説なども数多く受賞しています。2018年の山本周五郎賞は、SF小説の『ゲームの王国』(小川哲著)が受賞しました。SF小説は、通常SF作品のみに与えられる賞以外ではなかなか評価されにくいこともあり、山本周五郎賞の懐の深さに注目が集まりました。

直木賞受賞作家を先行評価

山本周五郎賞は、設立当初から直木賞に対抗する賞として注目されました。直木賞は山本周五郎賞と同じく大衆文学を対象としていますが、設立は1935年にまでさかのぼり、大衆文学のジャンルでは最も権威のある賞です。

実際、山本周五郎賞は、直木賞に何度もノミネートされながら最終選考で落とされている作家を積極的に評価してきました。顕著な例が、1992年に授賞した宮部みゆき氏の『火車』と1993年に授賞した久世光彦氏の『一九三四年冬―乱歩』です。この2作は当時、ちまたで非常に高い評価を得ていたにもかかわらず、直木賞の受賞は逃しました。それを、山本周五郎賞が賞を与えたことは、直木賞に対するアンチテーゼと受け止められました。

その後、山本周五郎賞を受賞した作家がその直後または数年後に、直木賞を受賞する例が相次ぎました。山本周五郎賞が直木賞作家を先行評価した形となり、文学賞としての地位を確固たるものにしました。

山本周五郎賞が先行評価した直木賞作家

直木賞 山本周五郎賞
宮部みゆき 1998年下半期 『理由』 1993年 『火車』
船戸与一 2000年上半期 『虹の谷の五月』 1992年 『砂のクロニクル』
重松清 2000年下半期 『ビタミンF』 1999年 『エイジ』
江國香織 2003年下半期 『号泣する準備は
できていた』
2002年 『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』
京極夏彦 2003年下半期 『後巷説百物語』 2003年 『覘き小平次』

山本周五郎賞 過去の受賞作品|新潮社直木賞受賞者一覧(120~139回)|日本文学振興会より筆者作成)

2004年には、熊谷達也氏が『邂逅の森』で山本周五郎賞と直木賞の同時受賞を果たしました。なお、すでに直木賞を受賞した作家は山本周五郎賞の候補から外されます。これは、山本周五郎がかつて直木賞の受賞を辞退したことがあることが理由だと言われています。

山本周五郎賞の選考と発表

選考委員は主要な文学賞を受賞した経歴のある著名作家5人で、任期は4年です。現在の選考委員は、石田衣良、荻原浩、角田光代、佐々木譲、唯川恵の5氏。毎年4月1日から翌年3月1日に刊行された小説の中から4~6の候補作を選びます。選考は年1回で5月に行われ、選評は『小説新潮』に掲載されます。