2018年ノーベル文学賞は?選考基準・日本人や最近の受賞作家は? - cocoiro career (ココイロ・キャリア) - Page 3

ノーベル文学賞の選考基準は?

上記の大江健三郎氏と同様、ノーベル財団は各受賞者についてコメントを発表しています。それでは、そこに至るまでの過程ではどのような選考基準があるのでしょうか? 実は秘密の多い選考基準について調べてみました。

選考過程は50年後まで秘密!

選考過程についての資料は50年間公開されません。50年経った後も誰でも見ることができるわけではなく、研究者などに限られています。資料閲覧を申請して、認められた人のみ閲覧することができるようになっています。

一度の閲覧で許される時間は、アカデミーからの指定により最高二時間半で、これらの資料をコピーしたり、撮影したりすることは禁止されている。当然のことながら、公開資料は全て当時のスウェーデン語で記されている。

(引用元:「川端康成とノーベル文学賞 スウェーデンアカデミー所蔵の選考資料をめぐって」『京都語文』第21号 | 佛教大学

上記のように、情報は非常に厳密に管理されているため、50年以上前の受賞作家についても、公になっていることはあまり多くはないようです。

アルフレッド・ノーベルの要求基準

不明な点が多くある一方で、部分的には選考基準として分かっていることもあります。アルフレッド・ノーベルの遺書に書かれた、ノーベル賞全てに課された基準です。それによると、 「人類の福祉に最大の貢献」をしていることが求められています。さらに、文学賞についてノーベルは「理想的な方向性」であることも求めています。

ノーベル文学賞の選考は、常にノーベルが提示したこの2つの基準をもとにして行われてきました。一方で、ノーベル委員会やスウェーデンアカデミーのメンバーは徐々に変わっていき、時代の変遷に合わせて新しい考え方も常に取り入れられているそうです。毎年の受賞作は常に基準の解釈を更新しながら選考されているため、今後の受賞者の予測が立てにくくなっているようです。

選考基準は時代によっても変化

ノーベル委員会の委員長であったシェル・エスプマルク氏によると、「理想的な方向性」という基準をどう解釈するかが常に選考の中で課題であったそうです。この、ある意味で曖昧な基準をどう定義するかは、時代によって変化していきます。ノーベル文学賞が始まった1901年から12年間は、「崇高にして深遠な理想主義」という解釈がされました。

第一次世界大戦を経た1910年代後半にはスカンジナビアの作家が多く選ばれ、1920年代には「理想的な方向性」とは 「深い人間的な思いやり」であると解釈されます。このように、ノーベル文学賞選考の現場では、その時代ごとに「”理想的な方向性”とは何であるのか」という議論が繰り返し行われています。

上述したように、選考過程についての資料は50年が経過しないと公開されません。つまり「理想的な方向性」をどのように解釈して近年のノーベル文学賞が選ばれているのかは、50年後にならないと分からないのです。

ノーベル賞受賞者発表の時期が近くなると、ここ数年は日本人作家の村上春樹氏がノーベル文学賞を受賞するのではないか? という話題が盛んになります。しかし、村上氏が選考の過程でどのように扱われているのかは、今から50年経ってみないと分からないということになります。

ノーベル文学賞の選考基準 | J-Stage