ゆとり世代の子どもの特徴
ゆとり教育を受けたゆとり世代は、どのように育っているのでしょうか? 「これだからゆとりは」という言葉を耳にしたことがある人もいるでしょう。批判的な声も向けられるゆとり世代ですが、実際にはどのような特徴を持っているのでしょうか。
今回は2018年度に三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社に入社した新入社員1,409名を対象としたアンケートをもとに、ゆとり世代がどんな社会人に成長しているかを見ていきましょう。
なお、2018年度に4年制大学を卒業した新入社員の多くは1996年度生まれです。したがって、ゆとり第3世代を対象としたアンケート結果としてご紹介します。
周囲との関係性の良さを重視する
「ゆとり世代」と聞くと、会社の飲み会へ参加しない、付き合いが良くないなど少し冷ややかな態度をとるイメージを持つ人もいるかもしれません。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の2018年度の新入社員を対象としたアンケート項目の中には、「会社に望むこと」という項目があります。その回答結果は以下のようになりました。
(参照元:2018(平成30)年度新入社員意識調査アンケート結果|三菱UFCリサーチ&コンサルティング)
第3ゆとり世代である2018年度新入社員が会社に望むことの第1位は、「人間関係がよい」という項目であることが分かります。少し冷たい印象を持たれやすいゆとり世代ですが、温厚な人間関係を望む人もいるということになります。
ただし、「人間関係がよい」という状況の捉え方は人によって異なるでしょう。社内行事が頻繁に行われる活気のある職場がいいと思う人もいれば、私用の際に残業をせずに帰ることを温かく受け入れてもらえる環境がいいと考える人もいます。
また、人間関係の良さを求めるのはゆとり世代に限ったことではないでしょう。中には敵対心を燃やすことで仕事の効率が上がる人もいるかもしれません。しかし職場を選ぶ際の軸に、いい雰囲気の職場を挙げる人はどんな世代にもある程度の人数がいるのではないでしょうか。
「ゆとり世代」だからと言って特異な人間関係を求めているわけではない、ということがこの調査から考えられるでしょう。
プライベートの時間を大切にする
前掲の「会社に望むこと」についての調査結果によると、「残業がない・休日が増える」という項目が3番目に多くなっています。この項目について、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社では2004〜2018年度の15年間分のポイントの推移をまとめています。その結果は以下のようになっています。
(参照元:2018(平成30)年度新入社員意識調査アンケート結果|三菱UFCリサーチ&コンサルティング)
2018年度の結果だけを見ると、先ほどの「人間関係がよい」と比べると多くは望まれていない項目のように思われます。しかし2004年度の結果と比較すると、残業がなく休日が多くあってほしいと望む回答のポイントは倍以上に増えています。
ゆとり第3世代は、学生時代のころから日々の報道で「過労死」や「働き方改革」という言葉を耳にしています。これは1996年度生まれの人だけでなく、それ以降の世代の子供たちも同様です。したがって、現在学生である子供たちの中にも、就職先を選ぶ際には残業時間や休日数に着目した就職活動をする人が多くいるでしょう。
またゆとり教育の一環として、完全学校5日制が導入されました。ゆとり第3世代の子供の多くは、小学生のころから土日に学校の授業がないことが当たり前である環境で育っています。
土曜日にも授業があった世代と比較すると、学校にとらわれない「自分の時間」が多く確保されて育ってきています。したがって学校や会社から縛られることを嫌がり、プライベートの時間が確保されていることに慣れているのかもしれません。
自分の力の発揮よりも生活の安定を優先する
同調査の「会社に望むこと」の回答結果では、「自分の能力の発揮・向上ができる」という項目が「人間関係がよい」の次に多くなっています。
しかし、この項目についても三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社では2004〜2018年度の15年間分のポイントの推移をまとめて紹介しています。その結果は以下のようになっています。
(参照元:2018(平成30)年度新入社員意識調査アンケート結果|三菱UFCリサーチ&コンサルティング)
「会社に望むこと」の調査では、自分が会社に望む項目を1〜3位まで最大3つ選択して回答させています。「自分の能力の発揮・向上ができる」という項目は、選ばれたポイント数こそ2018年度は2位となっています。しかしその希望度は、2005年度のピークから約20ポイント低下していることが分かります。
その反面、残業が少なく休日の多い職場を望む回答が増えています。したがってゆとり第3世代は、自分の能力を活かした仕事で成長することよりも、私生活の時間が安定して確保できる環境を好む傾向があると言えるでしょう。