日本の子供たちは自己肯定感が低い!その原因とは
自己肯定感を高めることで、人はより満足し幸せな人生を歩むことができるといいます。しかし、平成26年度に国立青少年教育振興機構が調査した「高校生の生活と意識に関する調査報告書」からは、日本の子供たちは諸外国に比べて自己肯定感が低いという結果が出ています。
文部科学省は、既存の調査結果から、どのような子供に自己肯定感が低い傾向があるのかを次のように分析しています。
- 学力が高くない。
- 物事に達成感がなく、意欲的に取り組めない。
- 社会の規範意識が低い。
- 自分は役に立たないと感じている。
- 社会や地域に対して否定的意識を持っている。
文部科学省は、日本の子供たちの自己肯定感に関するさまざまな既存調査を踏まえ、将来の日本を担う子供たちが充実した人生を歩める対策を検討するとしています。しかし、内閣府が平成30年に外部調査機関に依頼した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」では、日本の子供たちの自己肯定感が未だに低い現状が記されており、教育現場での自己肯定感を高める対策が十分でないことが分かります。
参考
我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成 30 年度)|内閣府政策統括官(共生社会政策担当) 調査実施機関:株式会社日本リサーチセンター、P18~20
高校生の生活と意識に関する調査報告書〔概要〕 —日本・米国・中国・韓国の比較—(平成27年8月28日)|国立青少年教育振興機構、P19
我が子の自己肯定感を性格的特徴からチェックしてみよう
では、実際にお子さんの自己肯定感は高いのでしょうか。一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会の考える自己肯定感の高い人・低い人の特徴を、以下の表にまとめました。項目をチェックして、お子さんの自己肯定感の高低を調べてみましょう。
【自己肯定感チェック表】
自己肯定感の高い人の特徴 | 自己肯定感の低い人の特徴 |
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(自己肯定感とは?|一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会より筆者作成)
我が子の自己肯定感を高めたい!親ができる5つの取り組み
我が子に幸せな人生を送ってほしいと願うのは、万国共通の親の思いではないでしょうか。そこで、親ができる我が子の自己肯定感を高める取り組みを、文部科学省文書を参考に5つご紹介しましょう。
取り組み1:自分が社会の一員であることを認識させる
子供の「個」を尊重しつつも、子供たちが自己と他者を区別し、自分が社会の一員であることを認識できるようにすること(一部抜粋)
(引用元:自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上|文部科学省、P16)
金子みすゞが残した『私と小鳥と鈴と』という詩に、「みんなちがって、みんないい」という節があります。自分と他者それぞれの個性を大切にしながら、自分という存在は他者がいてこそ成り立っているということを思い出させてくれます。
この「みんなちがって、みんないい」という考え方を持つことが、子供の自己肯定感を高めるのに役立つでしょう。
日本は、諸外国に比べると同調することを良しとする風潮があるといわれます。しかし、本来別々の個性を互いに認め合ってこそ、より良い新たな創造活動を行えることも、子供に理解できるようにすることが大切です。そうすることで、子供が「ありのままでいて良いのだ」と自分を受け入れることができるようになるのではないでしょうか。
取り組み2:偏見を持たずに子供の発達を見守る
社会には多様な価値観があることを大人自身がしっかりと認識した上で、子供の発達段階に応じて接すること(一部抜粋)
(引用元:自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上|文部科学省、P16)
子供の発達には個人差があります。頭で理解していても、実際にほかの子供との発達速度を比較して、焦ったり戸惑ったりしてしまう親御さんは多いのではないでしょうか。
子供は自分自身で自らの成長の遅れや、ほかの子よりもできないことが多いことを認識して負い目を感じている場合があります。そのため、親が子供の発達の遅れを口に出して責めたり、心配するのは良くありません。
「発達には個人差がある」「良い点を伸ばし、できる努力をしていこう」と親が見守ることで子供は自分らしさを受け入れ、リラックスして最大限の力を発揮できるようになります。
取り組み3:親自身が自己肯定感を持つ
自己肯定感が人との関わりを通じて形成されることを踏まえ、保護者や教師をはじめとした子供に関わる全ての大人が自身も自己肯定感を持って子供と接すること(一部抜粋)
(引用元:自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上|文部科学省、P16)
自己肯定感を高める外的要因として、他者からの評価が挙げられます。子供にとって最も身近な他者は「親」です。そのため、子供は親から尊重され評価されることで自己肯定感が高まり、さらに「他者を尊重する姿勢」を学びます。
そのため、お手本となるべき親自身が自己肯定感を高め、円滑で良好な親子関係を築くことが、子供の自己肯定感を高めるのに役立ちます。
取り組み4:愛情をもって積極的に関与する
大人が様々な場面で、子供の良いところを褒めたり認めてあげたりすること等が大切です。さらには、⑤良いところは積極的に褒め、叱るべきところでは叱るなど、大人が愛情を持って積極的に関与し続ける姿勢を示すことも重要です(一部抜粋)
(引用元:自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上|文部科学省、P16)
「親から理解されている、愛されている」と感じている子供は、自己肯定感が高いという分析結果が出ています。そのため、子供が「自分には生きる価値がある」と感じるためには、親が子供の身の回りで起きている事柄を放置せずに、積極的に関与することが大切です。
ただし、関与は過干渉になりすぎず、子供が助けを必要としたときに必要な分だけ行いましょう。自己肯定感を高めるには、自分で困難を乗り越える達成感を味わうことも大切なのです。
取り組み5:規則正しい生活習慣を身につけさせる
加えて、就床時刻と自己肯定感に一定の相関関係が見られる19(原文ママ)など、規則正しい生活習慣を身に付けることは、自己肯定感を育む上で重要です。また、生活習慣を身に付けるに当たっては、幼児期における遊びや体験活動が重要な役割を果たすことが指摘されており、こうしたことを踏まえた取組を進めていくことが必要です。
(引用元:自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上|文部科学省、P16)
近年、子供の生活習慣として問題になっているのが次の3点です。
- 習慣的な朝食欠食
- 生活サイクルの夜型化
- 慢性的な運動不足
子供の自己肯定感を高めるのに、規則正しい生活習慣は良い影響を与えると考えられています。そのため、「早寝早起き朝ごはん」をモットーにして生活サイクルと食事を整え、運動習慣を毎日の生活に取り入れる工夫をしましょう。