妊娠が分かると市町村からもらえる母子手帳。厚生労働省は2002年度から使用される母子健康手帳に「妊産婦の葉酸摂取に関する記載」を任意記載事項として追加することを決定しています。(任意記載事項とは各市町村の判断により、記載するかしないかを決めることができる項目のため、全国の市町村の母子手帳に記載されるわけではありません。)
厚生労働省が動き出した「葉酸」は、妊娠中もしくは妊活中の女性は通常の摂取量の倍近くを摂取するようにと推奨されている栄養素です。この記事では葉酸がどのような栄養素なのか、葉酸が足りないと出産にどのような影響があるのかをご紹介します。
もくじ
葉酸について詳しく知ろう
葉酸が妊娠中に必要だということは分かっていても、葉酸がどのような栄養素で、どんな効用があるのかを知らなければ効果的な摂取ができません。ここでは葉酸がどのようなものなのかを詳しくご紹介します。
葉酸とは
葉酸とは、水溶性のビタミンで、緑黄色野菜に多く含まれることから「葉酸」と名付けられました。葉酸は、赤血球の生産を助けるビタミンの1つです。代謝に関与していることが分かっており、DNAやRNAなどの核酸・たんぱく質の生合成を促進する働きがあります。たんぱく質や細胞を作るときに必要なDNAなどの「核酸」を合成するという重要な役割がある栄養素で、細胞の生産や再生を助けることから、体の発育に重要なビタミンであるといわれ、妊娠中の女性には欠かせない栄養素とされています。
葉酸の働き
葉酸の最も重要な働きは、ビタミンB12と協力して血液を作ることです。妊娠中の女性が十分な葉酸を摂るように指導されているのは、十分な葉酸を摂取することで胎児が神経管閉鎖障害という神経管の発育不全になるリスクを減らすことが分かっているからです。細胞分裂が活発な胎児が正常に発育するためには、母体の血液が欠かせません。
ほかにも成人の循環器疾患である「脳卒中」や「心筋梗塞」を防ぐことがあるという研究結果も報告されています。
どんな食品から摂取できるか
葉酸は本来食品から摂取できる栄養素です。
- ほうれん草
- ブロッコリー
- レバー
- 豆類
などに多く含まれ、ほうれん草やブロッコリー以外にも、緑黄色野菜には葉酸が多く含まれています。野菜を多く取り入れた献立であれば問題はないはずなのですが、不規則な食生活や過度のダイエットなどが原因で、葉酸が不足することが考えられます。
また、葉酸の持つ特徴として水・熱・光に弱いということが挙げられます。調理を行う段階で煮たり炒めたりすることにより、葉酸が失われてしまうことが多く、食品だけでは十分な摂取量に達していないのが現状です。
葉酸の1日の摂取基準
摂取してほしい葉酸の基準は、ガイドラインにまとめられています。
推定平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 | |
18歳~29歳 | 200μg | 240μg | 900μg |
30歳~49歳 | 200μg | 240μg | 1,000μg |
妊婦(付加量) | +200μg | +240μg | - |
授乳婦(付加量) | +80μg | +100μg | - |
参考
数値だけを見てもピンとこないかもしれませんが、妊娠中は特に通常の約2倍、1日440μg葉酸が必要になります。葉酸400μgを摂るには、ほうれん草なら約200g必要になり、これは1把分に相当します。葉酸は光・水・熱に弱く、不足しやすい栄養素なので、調理方法なども工夫し、意識して摂るように心がけないといけません。