2019年の税制改正による変更点
それでは、2019年の税制改正により何がどう変わったのかを確認しておきましょう。
所得1000万円以上は非課税対象外
これまでは、受贈者の所得に制限が設けられていませんでした。そのため、富裕層が子供や孫に資産を譲渡するために制度が利用されることもあり、世代を超えて貧富の格差を固定するという非難の声が上がりました。
そこで、2019年4月以降に贈与された資産は、贈与を受ける側(受贈者)の所得に制限が設けられ、前年の所得が1000万円以上の人は制度を利用できなくなりました。受贈者が働いていたり、本人名義の不動産から収入を得ていたりすると、所得制限にひっかかる可能性があります。
23歳以上の習い事は非課税対象外
教育資金贈与の非課税措置は、学校教育費だけでなく習い事などにも使えるのが大きな特徴ですが、2019年の税制改正で23歳以上の習い事は非課税の対象外となりました。これは、趣味の習い事やレジャー用の免許取得などに利用されないよう、成人した子供の習い事を対象外としたものです。
30歳以上も学生なら非課税対象に
一方、条件が緩和されたものもあります。税制改正前は、非課税対象となるのは一律30歳未満まででしたが、30歳以上でも学生であれば、40歳まで非課税対象となりました。これにより、修士課程や博士課程など上級学位を目指す子供や孫をサポートしやすくなりました。
贈与者が3年以内に死亡すると未使用分に課税
2019年4月以降に贈与された資産について、贈与者が3年以内に死亡すると、その時点で受贈者が使いきれていない分の資産に相続税がかかることになりました。ただし、贈与者が死亡した時点で受贈者が23歳未満であれば、未使用分に対しても相続税は課されません。つまり、贈与時点で受贈者が20歳未満であれば、この規定を心配する必要はありません。
教育資金贈与の非課税制度を利用するには
教育資金贈与の非課税措置が適用される資産贈与の方法として政府が定めているのは、以下の3つです。
- 信託銀行と教育資金贈与信託を契約する
- 銀行に教育資金贈与専用預金口座を開設する
- 証券会社と教育資金贈与専用有価証券取引契約を結ぶ
実際には、証券会社は教育資金贈与に関する商品を取り扱っていないので、信託銀行か銀行預金のどちらかになります。
信託銀行と教育資金贈与信託を契約する
教育資金贈与信託の前に、まず信託の仕組みを確認しておきましょう。信託協会による信託の定義は以下のとおりです。
信託は、あなたの「大切な財産」を、「信頼できる人」に託し、あなたの「大切な人」のために、管理・運用してもらう制度。「だれのために」、「どういう目的で」財産を管理・運用するかはあなたが決めることができます。
そして、財産を託された人は、あなたが決めた目的の実現に向けて財産を管理・運用します。
(引用元:信託の仕組み | 信託ってなに? | イチから学ぶ信託 | 信託協会)
信託は、財産を預ける「委託者」、財産を預かり管理・運用する「受託者」、その管理・運用により利益をこうむる「受益者」の三者からなります。教育資金贈与信託の場合は、資産を贈与する祖父母や親が委託者、信託銀行が受託者、資産を受け取る子供や孫が受益者となります。
銀行預金との違いは、銀行預金は利率が固定されているので元本割れするリスクがないのに対し、信託は運用から得られた収益が受益者に還元される代わりに、損失が出れば元本割れのリスクもあることです。また、銀行預金の運用は銀行に任されていますが、信託は「だれのために」「どういう目的で」資産を運用するのかは委託者が決めます。しかし実際には、ほとんどの教育資金贈与信託には元本保証がついており、利率も銀行預金とほぼ同程度と似たような形になっています。
教育資金贈与信託の契約の流れは、まず祖父母など贈与者が教育資金を信託銀行に預けるところから始まります。次に、受贈者は、学校などに支払った教育費の領収書を信託銀行に提出し、信託された教育資金からの払出請求を行います。受贈者が30歳に達した時点、または受贈者が23歳以上の場合は贈与者が死亡した時点で、契約終了となります。その時点で未使用の教育資金には贈与税または相続税が課されます。
信託銀行によっては、受贈者が先に立替払いをしなくても、信託銀行が直接教育機関などへの支払いを行ってくれるところもあります。また、領収書の提出に関しても、店頭に出向かずアプリでできるサービスもあります。信託銀行選びの際は、手数料の有無などと併せてサービス内容もよく確認しましょう。
参考
教育資金贈与信託〈愛称:孫への想い〉 | 三井住友信託銀行株式会社
みずほ信託銀行の教育資金贈与信託 学びの贈りもの|みずほ信託銀行
銀行に教育資金贈与専用預金口座を開設する
銀行で教育資金贈与専用の普通預金口座を開設する際も、契約の流れは信託と同様です。銀行が直接教育機関への支払いを行えるか、アプリの有無、手数料などを銀行選びの際に確認しましょう。
参考