色にはそれぞれイメージがある
色から連想されるのはどんな言葉?
これまで見てきたクリスマスカラーやコーディネートは、色の持つイメージを利用したものです。色のイメージには、それぞれ特定の決まった意味が付いているわけではありません。一般財団法人日本色彩研究所の色彩イメージに関する調査を見てみましょう。
初めの表は、デザイン系の大学生156に色から連想する言葉を自由記述してもらった結果、後に出てくる2つの表は心理学専攻の大学生26名に言葉から想起される色を選んでもらった結果です。
<各色に対する連想語>
※数字は回答人数
(参照元:色彩連想語-最近の調査データより-|一般財団法人日本色彩研究所)
<言葉から想起した色の選択率>
<コレスポンデス分析(※)結果の散布図>
※項目間の関係性を視覚的に分かりやすくするためのデータ解析手法
(参照元:最新データ紹介-言葉から想起する色|一般財団法人日本色彩研究所)
見る人の心に引き起こされる感覚や連想などによって、色と意味が関連していることが分かります。「クリスマス」という文脈から切り離すと、また違ったイメージで受け止められていると思いませんか?
色のイメージの国際比較
色のイメージはもちろん個人の心の中に浮かぶものではありますが、その認識や捉え方は、国や文化によって違いがあります。例えば同じ「赤」という色でも、欧米とアジア、中東とアフリカでは連想されるイメージが異なります。その一例をご紹介しましょう。
赤
【北米・西欧】 勇気、暑さ、欲望、わくわく感、愛、情熱、クリスマス、怒り、危険【アジア】 幸福、成功、喜び、祝い、エネルギー、暑さ、結婚、情熱、肥沃、好運、怒り、危険【東欧】 勇気、怒り、美しさ、好運、暑さ、愛、情熱、権力、共産主義【南米】 成功、情熱、危険、戦争、英雄の血【中東】 暑さ、危険、警告、邪悪 【アフリカ】 |
参考
「色」で考える海外向けWebデザイン|TURBINE INTERACTIVE
緑
【北米・西欧】 好運、成長、自然、お金、宗教、嫉妬【アジア】 均等、永遠、家族、生命、魔除け、同情、幸せ、洞察力、宗教、愛、成長、不倫【南米】 希望【中東】 希望、美徳、神様、好運、天国、宗教 【アフリカ】 |
参考
「色」で考える海外向けWebデザイン|TURBINE INTERACTIVE
青
【北米・西欧】 寒さ、自由、癒し、知識、理性、忠誠、男性、信頼、権威、憂鬱、悲しみ【アジア】 寒さ、生命、忠誠、財産、平和、理性、芸術、神様、長寿、哀悼【東欧】 忠誠、美徳、知恵 【南米】 【中東】 【アフリカ】 |
参考
「色」で考える海外向けWebデザイン|TURBINE INTERACTIVE
白
【北米・西欧】 神聖、天国、贅沢、結婚、純潔、休戦・協定【アジア】 子供、純潔、知恵、平和、尊敬、神聖、休戦・協定、哀悼 【東欧】 【南米】 【中東】 |
参考
「色」で考える海外向けWebデザイン|TURBINE INTERACTIVE
言語学者のソシュールは20世紀の初め、言葉における「意味されるもの(シニフィエ)」と「意味するもの(シニフィアン)」の結びつきは必然的ではなく恣意的であり、文化の作るその結びつきの体系が現実世界の認識をも決定するという、新しい言語論を打ち立てました。その考え方は当時の文化人類学にも影響を及ぼし、文化を意味と象徴の体系として読み解く視点を生み出しました。色の意味づけもまた、文化のひとつです。
例えば、日本では黒い服はお葬式の際の喪服です。しかしインドネシアのある島では、黒い服は年に一度村をあげて盛大に祝うお祭りの時に女祭司が着る服です。国による色のイメージの違いから、それぞれの文化が持つ意味の体系に思いを馳せてみるのも、楽しいのではないでしょうか。
参考
綾部恒雄編(1984年)『文化人類学15の理論』中公新書
波平恵美子編集(1993年)『文化人類学〔カレッジ版〕』医学書院
カラーマーケティングで商品の開発やデザインに使われる!
色の持つイメージは、現代社会では商業の分野で積極的に使われています。「カラーマーケティング」といって、企業のイメージ作りから商品開発、デザインやプロモーションまで、ビジネスのさまざまな場面で活用されているのです。
論文『広告によるマーケティングと消費者心理に関する研究-女性消費者をターゲットとする日産自動車の事例を通して-』で、ビジネス利用の一例が示されています。広告手法の歴史や広告マーケティングの理論モデルを解説しつつ、色を活用した成功例として、女性をターゲットに多彩でユニークなカラーバリエーションを採用したコンパクトカー「日産マーチ」を紹介しています。
参考
【入門】色彩のビジネス活用2 カラーマーケティング|DIC
宇佐美和歌子ら(2006年)『広告によるマーケティングと消費者心理に関する研究-女性消費者をターゲットとする日産自動車の事例を通して-』東京家政学院大学紀要 No.46
まとめ:クリスマスカラーを気軽に楽しもう
クリスマスカラーの意味に始まって、配色やコーディネートの基本、色とイメージの結びつきの文化的多様性、現代の商業的な活用展開まで、視点を広げながら紹介してきました。色は、わたしたちに共通の印象や感情を呼び起こすバックボーンを備えつつ、個々のセンスや工夫によって自由に楽しむこともできる素材です。今年のクリスマスは家族みんなで、クリスマスカラーを飾りつけやディスプレイに、気軽に自在にアレンジしてみてはいかがでしょうか。
参考
クリスマスカラーの由来って?色のもつ意味とオススメの配色|SHIZUOKA ONLINE
クリスマスのデザインにおすすめ!カラーとモチーフについて|印刷の現場から
4教派 祭色対照表|くりホン キリスト教教派の森
キリストを知る|OPUS DEI
Journey Scoop! 「赤い衣装のサンタクロース」は コカ・コーラ社のキャンペーンがルーツだった!?|日本コカ・コーラ株式会社
分類から探す 色彩|武蔵野美術大学造形ファイル
迷いを解決する!効率的な配色の考え方|色カラー
色彩調査資料 バックナンバー -機関誌COLOR掲載記事より-|一般財団法人日本色彩研究所
「色」で考える海外向けWebデザイン|TURBINE INTERACTIVE
【入門】色彩のビジネス活用2 カラーマーケティング|DIC
宇佐美和歌子ら(2006年)『広告によるマーケティングと消費者心理に関する研究-女性消費者をターゲットとする日産自動車の事例を通して-』東京家政学院大学紀要 No.46
綾部恒雄編(1984年)『文化人類学15の理論』中公新書
波平恵美子編集(1993年)『文化人類学〔カレッジ版〕』医学書院