日本の英語教育の現状と今後の動向を解説!指摘されている問題点は? ( 2 )

日本の英語教育の現状と問題点

続いて、日本の英語教育の現状と問題点について見ていきます。

日本の中高生の英語力

日本の英語教育の現状を知るために、まずは中学生・高校生の英語力について把握しておきましょう。国は中学生の間に英検3級、高校生の間に英検準2級相当の英語力を身につけることを目標に掲げていますが、到達度はどれほどなのでしょうか。

文部科学省が実施した平成30年度「英語教育実施状況調査」によると、中学3年生のうち、英検3級相当以上の英語力を持つと思われる生徒の割合は42.6%でした。これは、平成29年度から1.9%上昇しています。ここ5年間で見ると8%程度上がっており、年々上昇傾向にあるようです。ただし、国が目標としている50%には届いていません。

参考
平成30年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果|文部科学省

同調査によると、高校3年生のうち、英検準2級相当以上の英語力を持つと考えられる生徒の割合は40.2%でした。こちらも年々上昇傾向にあり、ここ5年間で10%近く割合が増えていますが、やはり国が目標とする50%には及んでいません。

参考
平成30年度 英語教育実施状況調査(高等学校)の結果|文部科学省

なお、上記の数字は、実際に英検の資格を取得している生徒の人数に、教員の裁量で同等の英語力があると認められた生徒の数を加えたものです。地域によって大きなばらつきがあるなど、英語力を評価する指標自体の信頼性に課題があることも付け加えておきます。

英語を教える教師の英語力は目標に達していない

中学生・高校生の英語力は年々上昇傾向にあるものの、目標には達していないことが分かりました。それでは、生徒に英語を教えている教師の英語力はどれほどのものなのでしょうか。

国は英語の授業を担当する教師に対して、CEFR B2相当の英語力を求めています。CEFRとは Common European Framework of Reference for Languages(ヨーロッパ言語共通参照枠)の略で、語学の熟練度を測る国際的な指標です。CEFR B2は、英検だと準1級に相当するレベルになります。

平成30年度「英語教育実施状況調査」によると、CEFR B2相当の英語力を有する英語担当教師の割合は中学校で36.2%、高校で68.2%でした。割合は年々上がってきてはいますが、中学・高校ともに、国の求めるレベルには達していません。特に中学校では英語担当教師の6割以上が基準に達しておらず、大きな課題と言えるでしょう。

参考
平成30年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果|文部科学省
平成30年度 英語教育実施状況調査(高等学校)の結果|文部科学省

小学校での教科化の流れに対応できない状況

平成30年度「英語教育実施状況調査」では、小学校の英語担当教員の英語力についても調査が行われています。

小学校で授業を担当している教員のうちCEFR B2以上を取得している割合は、わずか1%でした。英語の外部試験を受験している教員に限っても、CEFR B2以上は約3%です。また、英語免許状所有者数の割合は6%弱となっています。小学校における英語教育の質の確保という観点からしても、非常に厳しい現実を浮き彫りにする数字となりました。

参考
平成30年度 小学校等における英語教育実施状況調査 【集計結果】

小学校で英語を教える教員の多くはクラス担任です。既存の科目の指導に英語が加わることで、教員の負担が増えることになります。英語教育の変革のしわ寄せが現場の先生の肩に重くのしかかるようでは、質の高い授業を実現することなどできません。ただでさえ、教員の労働環境の過酷さが社会問題化しているのですから、英語の専科教師を増やすなど、環境面の整備が急務と言えるでしょう。

「使うこと」が想定されていない学習内容

日本では、中学・高校と6年間も英語を学んでいるにもかかわらず、英語を話せない人が多過ぎると長らく言われてきました。基礎的な文法事項などは身についていても、いざ話すとなるとスムーズに英語が口をついて出てこないという人は、実際に多いのではないでしょうか。

これは、英語学習のゴール設定がずれていることに原因があるのかもしれません。教科書に掲載されている例文の中には実用性のないものが多く見られますし、文法を学ぶ目的が試験に出題される文法問題を解くことになってしまっているとの指摘もあります。

新学習指導要領に基づく新しい英語教育では、従来に比べて英語を「使うこと」に重きを置いています。とはいえ、オールイングリッシュ化の推進など、より実践的な英語力を身につけるための施策が功を奏すかどうかは未知数です。授業の形式や枠組みが変わったとしても、教員の英語力と指導力を醸成していくことなしに質の高い英語教育を実現することはできません。教員の負担増の問題について先述しましたが、現状では、英語を教える教員が十分な自己研鑽の時間を持てないことも予想されます。授業の質を高めるには、教員の待遇改善やサポートも同時に行う必要があるでしょう。

一方で、会話偏重の問題点を指摘する声も

近年の英語教育改革では、英語を使ったコミュニケーション能力の養成を重視していますが、この方針は真新しいものではありません。今から30年前に改訂された学習指導要領では「外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成」が明記され、「オーラル・コミュニケーション」という科目が新設されました。

しかしこの間に、中学生・高校生の英語力が目に見える形で向上していると言い切ることはできません。ここ30年にわたって行われているコミュニケーション力重視の英語教育が、必ずしも成果を挙げているとは言い難い現状があります。

英語を使った会話というのは、あくまで語彙力や文法の基礎の上に成り立ちます。それらを養成するためには、英語を「読む力」もまた重要です。基礎的な文法学習や、一文一文をていねいに訳出しながら読む作業は、実用性の名の下に、日本の英語教育の悪しき一面として槍玉に挙げられがちです。しかし、これらを無意味なものとして切り捨ててしまった後に残るのは、中身の乏しい表層的な「英会話力」ではないでしょうか。

英語によるコミュニケーションの心理的な障壁を取り除くためにも、授業で実践する場面を増やすことに一定の効果はあるでしょうが、英語教育が会話ばかりに偏重して基礎的な文法力や語彙力が軽視されるようなことがあっては本末転倒です。