これからの学びと情報リテラシー
広義の「情報リテラシー」とは
情報を活用する際のキーワードとなる概念が「情報リテラシー」です。情報リテラシーと聞くと、コンピュータの使い方やネット上の情報の見極め方など、新しいテクノロジーに対応する力だと思うかもしれません。
しかし情報リテラシーとは、もっと幅広い概念を含む言葉です。情報を得るためのメディアには、印刷資料・視聴覚資料・電子資料・人的資源などがあります。それらさまざまなメディアを通じ、どのように情報を利用するかということです。この広義の情報リテラシーは、次のような広範な能力を含みます。
①情報の主体的な収集・判断・処理と、適切な表現・発信・伝達の能力
②各種メディアの特性の理解と、情報を適切に扱い評価する理論や方法の理解 ③社会における情報・情報技術の役割や影響の理解と、責任ある参画 |
資料の使い方の習得から情報を獲得するプロセスの重視へ
学校図書館教育は、利用方法の指導から情報リテラシーの育成へと役割を変えました。アメリカでは、次のような段階を経て現在に至っています。
①ソース・アプローチの時代(1960~70年代)
図書館や所蔵資料の使い方など、情報源(ソース)についての教育 ②パスファインダー・アプローチの時代(1980年代) 特定のテーマに関する資料の特徴や資料間の関係性を明らかにして、段階的に探索を進めるための教育 ③プロセス・アプローチの時代(1990年代以降) 課題設定からレポート執筆まで、周辺的な情報から特定された情報まで、情報を集めながら焦点を明確化し深めていくプロセスそのものの教育 |
カナダでは1980年代から、生徒ひとりひとりについて具体的目標を設け、それに基づいて学習を進める計画的な教育プログラムを進めました。その手引書として、2004年にアルバータ州で作成された探究モデルは、次のようなものです。
「計画」「検索」「利用」「創造」「共有」「評価」の6局面で構成され、その中央に「振り返り」が位置します。生徒は今自分がどの局面にいるのかを確認しながら、随時「振り返り」を経て、6局面を行ったり来たりします。必要な情報を探したり検討したり、一度アウトプットして他者に評価を得たりしつつ、自分の目標を達成するのです。
子供は図書館で思考し表現するトータル力を身につける
つまり、学校図書館は子供が自力で情報を集め分析し表現する力、いわば、社会に出てからも強く求められるインプットとアウトプットのための力を獲得する場所であるということです。そしてまた、情報を収集し整理分析して表現する一連の活動は、言語活動が基盤となっています。言語活動=「聞く」「話す」「読む」「書く」力を育むには、読書活動の充実が欠かせません。
学校図書館は、読書センターと情報センターの2つの機能を両輪に持ちます。言語活動の能力と情報リテラシー、子供たちが情報を読み解き考え表現する一連の活動に必要なトータルの力を身につける場として、機能しているのです。
参考
堀川照代(2012年)『学校図書館を活用した教育/学習の意義』明治大学図書館情報学研究会紀要 No.3
まとめ:これからの子供は自力で情報を使いこなす大人へ
大人でも、指示されたタスクをこなしたり与えられた資料を読んだりしているだけでは、限界があり不十分だと痛感するでしょう。自分で考え判断し決定する力は、今後もどんどん重要になっていきます。これからの子供たちは、自力で情報を集め、自分の考えを形づくり、外に向けて発信する大人になることが求められていますし、その可能性を手にしています。
学校図書館はその学びと成長に大きな役割を果たします。重要なのは、建物や設備といったハード面の整備にとどまらず、所蔵資料や情報リテラシー教育の質を支える、人的資源の充実です。図書館法の改正は、そこに踏み込み先に進める大きな一歩であったと言えるでしょう。
参考
成清鉄男(2003年)『小・中学校における学校図書館経営の現状と課題』教育経営学研究紀要 No.6, pp.83-86
菅原春雄(1985年)『司書教諭の諸問題について』文教大学研究紀要(女子短期大学部)Vol.29
堀川照代(2012年)『学校図書館を活用した教育/学習の意義』明治大学図書館情報学研究会紀要 No.3
松下佳代(2010年) 『PISAで教育の何が変わったか~日本の場合~』教育テスト研究センターCRETシンポジウム2010.12報告書
吉澤小百合ら(2017年)『小中学校司書教諭・学校司書の学習支援に関する職務への教員の要望:質問紙調査の分析から』日本図書館情報学会誌 Vol.63, No.3