学校図書館法改正で何が変わる?子供の学びと情報リテラシーを育む

多くの親にとって学校図書館とは、本好きな子が足しげく通い、図書委員が本の貸し出しをしてくれる場所、というイメージがあるのではないでしょうか。もしくは、試験前に静かに自習する場所、というイメージかもしれません。しかし学校図書館は現在、そういった従来的なイメージからドラスティックな変化を遂げつつあります。学校図書館法改正の歩み、2014年の改正で変わったことなどを追いながら、これからの学校図書館と子供の学びについて展望します。

2014年、学校図書館法が改正

学校図書館法とは?

2014(平成26)年に改正され、学校司書の存在がクローズアップされたことによって、初めて学校図書館法というものを耳にした人も多いかもしれません。学校図書館法は、1953(昭和28)年の制定。平成に入ってからも改正を重ね、法整備が進められました。

学校図書館法では、第一条でその目的を定めています。

第一条 この法律は、学校図書館が、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であることにかんがみ、その健全な発達を図り、もつて学校教育を充実することを目的とする。

(引用元:学校図書館法|e-Gov

法制定の当初から学校図書館は、小学校・中学校・高校の学校教育において、子供たちの学びを支え教養を育てる重要な存在として位置づけられていました。制定から65年あまり、その重要性に変わりはないものの、学校図書館の果たすべき役割は、社会や教育の変化とともに大きく変化しました。それを受けて、図書館教育を担う専門職の重要性も理解され、法整備が追いついてきたと言えます。

改正によって何が変わったの?

学校図書館法の制定当初から、学校図書館の中心的な役割を担う専門職として、司書教諭の配置が定められていました。しかし戦後間もなく、司書教諭も当時少ないことから、養成を急ぐとともに「当分の間置かないことができる」という附則も加えられました。

ところがこの附則は、44年間そのままにされました。1997(平成9)年の改正は、この附則に関わるものです。司書教諭の設置が義務化され、2003(平成15)年4月1日から、全学級数11学級以下の学校を除く全ての学校で司書教諭を配置することとなったのです。

2014(平成26)年の改正では、同じく学校図書館の専門職でありながら明確な位置付けがなされていなかった学校司書を法的に位置付け、配置の促進が定められました。

参考

成清鉄男(2003年)『小・中学校における学校図書館経営の現状と課題』教育経営学研究紀要 No.6, pp.83-86

菅原春雄(1985年)『司書教諭の諸問題について』文教大学研究紀要(女子短期大学部)Vol.29

学校図書館司書教諭の発令について|文部科学省

教育行政と学校図書館法の歴史

学校図書館法はこのように変化してきた

学校図書館法の改正は、人員配置と専門職の充実を求める動きの積み重ねだったと言って、過言ではありません。自由民主党や社会党、全国学校図書館協議会、日教組などが幾度となく改正案を発表し、国会審議にもかけられました。これらの試案は主に、司書教諭をはじめとする専門職配置の整備とその養成に関わる内容です。

これらの働きかけがあったにもかかわらず、司書教諭の法整備には44年、学校司書の法整備には実に61年の年月がかかったわけですが、その間には、法整備と支持し後押しする社会の変化が起こっています。国際的な社会変化、求められる学力と教育の変化が、学校図書館法の整備と足並みを揃えるように進んできたのです。

ポイント①:知識偏重への危惧とPISAショック

21世紀に向けて社会や産業構造は、グローバル化、脱工業化が進みました。教育や人材育成のあり方も大きく変化しました。

OECDは、2000年から3年ごとに、15歳の子供を対象としたPISAと呼ばれる国際的な学習到達度の調査を行っています。開始から2003年、2006年と、日本の子供たちのスコアは年々下がり、特に2003年の結果はPISAショックとして日本の社会に大きな衝撃を与えました。2006年には科学リテラシーを重点的に調査した結果として、日本の状況が次のように指摘されています。

①日本の子供たちは、知識を記憶し再現する能力に優れている

②しかし未知の問題について、手持ちの知識から類推して応用したり、問題自体を設定したりする必要がある場合は、成績が下がる

PISAショックはゆとり教育への反動も生みましたが、一方で知識偏重教育への危惧も高めました。変化に富み流動性が高く、多様な他者との交流や協働が必須となっていくこれからの社会では、初めて出会う未知の状況でも、自ら考え応用し対処する力が重要です。日本の教育行政は、転換期を迎えます。

参考

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)|国立教育政策研究所

【NEE2014】PISAショックからの立ち直りと「総合的な学習の時間 … – リセマム

ポイント②:自分で調べて考える「総合的な学習」の充実化

2008年に改訂された学習指導要領は、「変化の激しいこれからの社会を生きるための力」を掲げ、重視する学力として次の4項目を挙げました。「ゆとりか詰め込みか」ではない、バランスの取れた能力の育成です。

【基礎的・基本的な知識・技能の習得の重視】
・社会変化や科学技術の進展に伴い必要とされる知識・技能をしっかり教える
・つまずきやすい内容の確実な習得のために繰り返し学習を行う【思考力・判断力・表現力等の育成の重視】
・観察・実験やレポートの作成など、知識・技能を活用する学習活動を充実させる
・教科横断的・問題解決的・探究的な学習や活動を充実させる

小学校では2000年から段階的に「総合的な学習」が始まっていましたが、2008年の改訂では、横断的・総合的な学習に加えて、探究的な学習の時間としての充実を目指すこととなります。

自分で調べて考える探究的な学習は、まさに学校図書館が直接関わる教育内容です。また、こういった学びのプロセスは、図書館情報学が専門とする情報リテラシーの研究分野でもあります。このように、今日的な学びの中心課題に、学校図書館が深く関わることとなったのです。

参考

堀川照代(2012年)『学校図書館を活用した教育/学習の意義』明治大学図書館情報学研究会紀要 No.3

松下佳代(2010年) 『PISAで教育の何が変わったか~日本の場合~』教育テスト研究センターCRETシンポジウム2010.12報告書