家庭教育支援法の問題点 子育てを「国家主導で行う」って本当?

テレビや新聞などで児童虐待や引きこもりに関するニュースが、たびたび報道されています。痛ましい報道を見聞きし、「何か対策はないのか……」と暗い気持ちになる人もいるでしょう。

かつて自民党が3回出そうとした「家庭教育支援法案」は、児童虐待や子供のいじめ、少子化などの問題について、「家庭教育を支援することで対処しよう」としたものです。一見、何の問題もなさそうな法案ですが、有識者の間では問題視する意見も多く出ていました。

当記事では、再び議員立法として成立を目指すとされる「家庭教育支援法」の問題点について解説します。

家庭教育支援法の問題点とは?

家庭教育への支援は、「保護者や子供にとって必要不可欠」と考える人も多いでしょう。しかしながら、「家庭教育支援法」については、有識者や女性団体が反対派として声を上げています。彼らが指摘する問題点についてまとめました。

家庭教育支援法の問題点とは?

家庭教育支援法の請願は第193回、195回、196回と3度国会に提出されていますが、いずれも審査未了となっています。まだ国会に上程されていないため、法案全文をネット上で確認することはできません。

ここでは、弁護士や大学教員らが呼びかけ人として参加しこの法案に阪大する「24条変えさせないキャンペーン」に掲載された素案「家庭教育支援法(仮称)」定稿(2016年10月20日)や、社会学者・木村涼子氏の記事などから問題点を探ります。

参考

“家庭教育支援法” の検索結果|衆議院

家庭教育支援法案(仮称)」未定稿(2016年10月20日)|24条変えさせないキャンペーン

国家が「すべての家庭教育」に介入する

現在、地域や国家の介入が可能なのは、児童虐待や貧困など「子供が生きていく上で何らかの問題を抱えている家庭」のみです。しかし、家庭教育支援法では、「すべての家庭」への家庭教育に介入が可能になります。これによって、保護者や家庭ごとの「自由な家庭教育方針」が薄れ、「国家主導の教育方針」が推進される恐れがあります。

「24条変えさせないキャンペーン」では、以下のように警鐘を鳴らしています。

まず、この法案ができると、国家や地⽅公共団体から学校、保育所、地域住⺠までが、 すべての家庭の⼦育てに介⼊することが可能になりかねません。保護者への「教育」も奨励されます。その内容を決めるのは国や地⽅公共団体であり、家族が⾃由に判断すべき⼦育ての内容を国や地⽅公共団体が⼀律に⽅向付けよ、と⾔うことになりかねません。そもそも家庭教育の⽬的やあり⽅は、国が法律で定めるべきものなのでしょうか。

(引用元:家庭教育⽀援法案_ポイント要約(PDF),P2|24条変えさせないキャンペーン

監視社会に?プライバシー侵害の恐れも

家庭教育支援法案の素案には、以下のような条文がありました。

(地域における家庭教育支援の充実)
第十三条 国及び地方公共団体は、地域住民及び教育、福祉、医療又は保健に関し専門的知識を有する者がそれぞれ適切に役割を分担しつつ相互に協力して行う家庭教育支援に関する活動に対する支援その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

(引用元:家庭教育支援法案(仮称)」未定稿(2016年10月20日)|24条変えさせないキャンペーン

法案にはこの条文以外にも、家庭教育には、保護者や家族だけでなく、国や地方公共団体、地域住民など、いろいろな人たちが連携して取り組むよう読み取れる文面が明記されています。多くの人が関わることにより、「家族のプライバシーが保たれるのか」「監視社会になるのでは?」と懸念されています。

国家が理想とする「家庭像」の押し付けか

家族の多様性の排除につながる危惧

家庭教育支援法案の素案では、子供の教育者を「父母その他の保護者」と定めています。一橋大学非常勤講師の平井和子氏は、「父母その他の保護者」は異性愛夫婦と祖父母が根底にあると指摘。いわゆる「標準的な家庭」から外れた同性パートナーや未婚家庭の子供のほか、施設で育つ子供を追い詰める危険性があるとしています。本来、認められるべき家族の多様性の排除につながるとも考えられるでしょう。

参考

特集① 「家庭教育支援法」―内容と問題点|第一学習社

個人の尊厳や自由が奪われる?

家庭教育支援法案の素案は2017年に一部修正されています。2016年の素案にあった第二条の「家庭教育の自主性を尊重」という文章が、2017年の修正案で削除となりました。このため、「個人の自主性が尊重されない」「個人の自由や尊厳より、国家の教育方針が優先されるのでは」と心配する声が出ています。

参考

家庭教育支援法・青少年健全育成基本法がもたらす「家族」と「教育」(前編)|imidas