現代の議論
小学校入学を早める論
終戦後70年以上変わっていない9年間の義務教育ですが、最近では期間を延長するべきなのではという議論もなされています。1つ目は海外で「プレスクール」などと呼ばれているような体制で、小学校入学前の1年間を義務教育に含めるものです。また、小学校の入学する年を1年間早めることも検討されています。
スコットランドでは1年早く学校に入ることができるが、親の判断に加えて、学校が認めることが必要。学校に早く入るかどうかを巡って、親、先生、学校間で大変な議論が交わされていた。そのようなことが日本で機能するとは思えない。1年早く入ることができるとなれば、日本だと希望が殺到すると思うが、スコットランドでは、敢然として自分の子はまだ早いと判断する親が半分ぐらいいた。
(引用元:5.義務教育の年限 | 文部科学省)
引用したのは中央教育審議会での委員の意見です。幼児の1歳差というのは非常に大きく、この期間を義務教育としてしまうかに関しては非常に慎重な意見が多いようです。
なぜ義務教育期間の前倒しが議論されているかというと、小学校1年生での環境の変化が大きく学級崩壊などが起きる「小1プロブレム」が課題とされているからです。もう少し早い段階から学校生活に慣れさせることが必要なのでは、という考え方が基になっています。
高校まで義務教育に含める論
もう1つは、高校までを義務教育に含めるという議論です。現在は高校への進学率が高く、授業料が実質無償となっているため、小学校入学を前倒しするよりは感覚的に理解しやすい議論です。
義務教育を9年からさらに延長するというのは、今の高校生の状況をみると学ぶ意欲が必ずしもない子どもたちを学校に拘束することになり、教育上よくない。
(引用元:5.義務教育の年限 | 文部科学省)
ただし、高校で学びたいという意欲がない子供もいることを鑑みて、慎重であるべきだという意見も出されています。
参考
海外では日本より年限が長い国も
日本では義務教育の延長に対して慎重な意見が多いですが、海外ではすでに日本よりも義務教育年限が長い国もあります。
先ほどご紹介したスコットランドを含むイギリスは5歳から義務教育としていますが、その中でもイングランドは2015年に義務教育期間を後ろ倒しし、5〜18歳が義務教育となりました。16〜18歳は職業訓練も義務教育に含まれており、早く社会に出て働きたいという子供の意向も反映された教育内容となっています。
また、台湾も2014年から義務教育期間を12年間に延長しています。日本でいう高校までが義務教育となります。このような国では、失業対策などキャリアに関する教育の充実が必要だという考え方が強く、そのため義務教育期間を後ろ倒しする傾向にあるようです。
参考
高等学校教育改革の動向と課題 | 国立教育政策研究所紀要 第145集
イギリス教育制度のシステムと特徴をわかりやすく(幼児から大学まで) | news from nowhere
義務教育年限延長する教育改革、2014年から実施へ | Taiwan Today
まとめ
当たり前のように考えてしまいがちな9年間の義務教育ですが、社会の変化に合わせて短くなったり、長くなったりする可能性は十分にあります。子供たちがこれからの未来を生きていくために、より力になる教育というのはどういうものなのか。親世代がしっかり考えていきたいものです。
参考
学校教育法(昭和二十二年三月二十九日法律第二十六号) | 文部科学省