義務教育の目的
日本における義務教育の目的は、基礎学力を習得するだけでなく、生きる力や思考力などの要った内面的な部分を高めることなどが挙げられます。
また、小学校と中学校に義務教育の目的に関しては、共通している点と違う点があります。この章で詳しく触れていきましょう。
小学校
小学校の義務教育の目的は、学校教育法第29条に定められています。
第二十九条 小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。
(引用元:学校教育法|京都大学)
上記の内容でも分かるように、小学校で学習の基盤を築くことを目的としています。ほかにも児童が課題解決できるよう、思考力・判断力・表現力も育むようサポートをしています。
中学校
中学校における義務教育は、小学校で培った基礎能力を活かしつつ、生活面や学習面においても自分で考えて実行できるように促したものです。
また、中学校における義務教育の目的に関しても、小学校と同様、学校教育法第45条にも定められています。
第四十五条 中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする。
(引用元:学校教育法|京都大学)
中学校へ入学すると、個人差もありますが、反抗期や思春期に入る生徒も見られる難しい時期です。学校教育法でも「心身の発達」というワードが入っているのがポイントです。
義務教育の内容
日本の義務教育の内容は、小学校も中学校でも社会で自立して生きられる基礎を作るカリキュラムを展開しています。
小学校
小学校では、生活の基礎となる読み書き計算を徹底的に行っているのは、今も昔も変わりありません。加えて、児童の視野を広げられるよう、定期的に地域の方と触れることでコミュニケーション能力などをブラッシュアップします。
中学校
中学校は、教科担任制とシフトするということもあり、小学校よりも専門的知識を深める内容となっているのが特徴。特に近年のカリキュラムの難化傾向に伴い、英語と数学に力を入れている傾向です。ただ答えが正解しているから終わりではなく、問題を解くプロセスも重視。この流れから、思考力・表現力・読解力などが着実に習得できるよう、サポートをしています。
また、2020年度スタートの大学入試改革では記述問題が増えるということもあり、中学校が国公立や私立に関係なく、生徒たちに書かせる時間を増やしている傾向にあるようです。
近年の義務教育の変化
現行の義務教育は、戦後間もない1947年に施行され70年以上の歴史があります。とは言え、グローバル化、IT化など時代の流れや少子化などの社会情勢とともに内容にも変更が生じています。
この章では、近年の日本の義務教育の変化について紹介していきましょう。
道徳が必須
これまで小学校と中学校における道徳の授業は、各学校や担任に授業のやり方を委ねる形でした。道徳の時間を利用して、ホームルームするなど、道徳と無関係の時間に充てるというケースもありました。
しかしながら、昨今のいじめやSNSトラブルなどの社会問題が浮き彫りになったこともあり、授業内で「心」の教育にもより力を言われざる得ない状況となっています。小学校では2018年、中学校では2019年に特別の教科として「道徳」がスタートし、週1時間の道徳の時間を設けています。児童や生徒が、「心」の勉強をするとともに主体性を持ち、かつ対話し合えるよう道徳の授業を展開しています。
小学校に英語が本格導入
日本の公立小学校では、2020年度度より小学3年から英語が必修化されます。そして、小学5年からは英語が「教科」として運用され、通知表の評価の対象に。加えて、文部科学省指定の教科書も配付されます。英語が本格導入されることによって読み書きのリテラシーだけでなく、スピーキングやリスニングの力も着実にアップすることが見込まれます。ほかにも、中学校入学後の英語でも生徒の負担や不安が減ることも期待されています。
プログラミングが必須
近年、小中学生を対象としたプログラミング教室の開講が相次いでいます。その背景には、プログラミングが義務教育の課程で必須科目(小学校では2020年、中学校では2021年)に決定したことが挙げられています。
これからの時代、生活シーンにAIが導入されることもあり、プログラミングがこなせる人材のニーズが高くなっています。学んだことが吸収しやすい義務教育の時期にプログラミングの知識をつけておくと、将来の選択肢も広がるのは言うまでもありません。さらに時代が変化してもプログラミングの技術があれば、安定した収入を得られる見込みがあります。